軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:いつもと少し違った襲撃

バッタに似た、体の一部が所々歪んでいる敵がカサカサと一箇所に集まって小さな山を作り……その山が弾けた中から、一回り大きな魔物が現れた。

ぱっと見の印象は歪んだ黒いナナフシだ。

アンバランスに細長い手足をカクカクと動かす様子は、中々に不気味だ。

崩壊の大種 Lv20

……発芽したのかと思ったがそんなことなかったな。シンプルにデカいだけか。

それでも、何か核のようなモノではあるのかもしれない。

捻れた胴体の中には、使徒の体に着いていた結晶のような物と同色のゲル的なナニかが蠢いている。

……とりあえずそこでも撃ってみるか?

──と、その巨大ナナフシが突然跳躍した。

咄嗟に距離を取った所へ、敵の巨体が突っ込んできた。

細長い手足をジタバタとデタラメに動かしながら、枝の間の蜘蛛の巣に跳びついて……抉じ開けようとしてるのか?

その手足の先端が触れている部分が……本当にゆっくりとだがボロボロと崩れ落ち始めていた。

「イ、イヤァアーーーーー!? 念願の私の拠点がーーーー!!」

悲しい天使は叫び声を上げて巨大ナナフシに突進。

「ヤメテクダサァーーーイ!!」

突進して……何故か剣を持っているのに、素手でラリアット!

──ゴキィィッ!!

……どんだけ【筋力】にステ振ってるんだ。

一応ボス扱いと思われるモンスターの体が、蜘蛛の巣から一瞬浮いた。

そこへ間髪入れずに滑り込むラウラさん。

ナナフシの足先は蜘蛛の巣から離れていないから、壁ドンされているような状態に自分からなりに行った状態だ。

そして、剣の切っ先がナナフシの胴に僅かに食い込んだ。

「【カノンレイ】!!」

ゼロ距離で放たれる光線。

くっそ眩しい。ゲームだから味方の閃光で目はやられないのが幸いか。

蜘蛛の巣から引き千切られるように、抵抗の末に吹き飛ばされる巨大ナナフシ。

強制的に距離を取らせたラウラさんは、灰色の翼を広げて剣を掲げる。

「【主翼宣言】!」

ヘイトを引くスキル。

周辺の敵が一斉にラウラさんへと向かう。

「【スターダストレイン】」

そこへ降り注ぐ星屑の雨。

天から撃たれたマシンガンのように、敵をポリゴンへと消し飛ばしていく。

その討ち漏らしを、俺は片っ端からボウガンで撃ち抜いていった。

……そして、消えていく敵を見て気付く。

こいつら、ドロップが無い。

片手でボウガンを撃ちながら、片手でシステムウィンドウを操作する。

ステータス、経験値量を確認。

……敵のレベルにしては、多めな気がした。

「……ラウラさん、ここの襲撃っていつもこんな敵ですか?」

「ち、ちがいますー! い、いつもは小鳥の群れとか蝶の群れとか、そういうのが多かったです!」

「そうね、こんな歪な敵ではなかった気がするわ」

なるほど。

今回からなのか、今回だけなのかはわからないが……

「この敵、たぶん使徒の結晶から出てきた敵と同じ系統っぽいです」

「えっ……あ、ああ! そ、そういえばドロップがありません!」

「……何かしら、神域に使徒関係ってイヤな感じね」

とはいえ、ここに使徒が来ているわけではなさそうだ。

そんなメインストーリーにガッツリ関わる展開なら、もっと何かのヒントだのイベントやクエストだのが出ているだろう。

それなら……使徒関係の敵が通常の襲撃にも出るようになったと考える方が自然な気がする。

……『咀嚼のフランゴ』は『冬に決着をつける』と言い残して消えた。

あの使徒は良くも悪くも単純そうに見えるから、そう言ったからにはたぶん本当に冬まで動かないと思う。『馬鹿め引っかかったな!』とか出来ないタイプだろう、たぶん。

そうなると……ここにちょっかいかけているのは別の使徒の可能性が高い。

(相棒、上から見渡して、使徒っぽいのとかいる?)

(え? ……………………いないと思うけど?)

見通しのいいマップだから、人型の使徒がいれば見落とす事は無いだろう。

ってことは……これは他の使徒登場の布石ってところか。

再度跳躍を試みようとするナナフシをジャックが跳びかかって引き止めた。

そこへデューが盾を構えて立ち塞がる。

ナナフシのヘイトはデューへ、そのままNPC天使達も加勢して、ボスの包囲網を作る。

……今の内に、蜘蛛の巣に貼り付いてるバッタでも片付けるか。

【土魔法】を使い続けて【石魔法】に到達したのと同じように。射撃の補助として使い続けた【風魔法】は、【雷魔法】に到達していた。

ファンタジーだから、電気の伝わりやすさなんてのはそこまで深く気にしなくていい。

ただ、敵が蜘蛛の巣で繋がっていて、だから蜘蛛の糸を伝わって雷が届くイメージを俺が持てれば充分だ。

「【サンダークリエイト】」

派手に光る必要は無い。

ただ体の中の致命的な部分を焼き切ってしまえばそれでいい。

糸に絡まっていたバッタ達は、ビクリと大きく痙攣すると、脱力してポリゴンとなり消えていく。

……っと、結構MP持っていかれたな。

相棒が拠点の防御を管理しつつポーション飲んでるMPタンクになってくれてるから助かった。

上位魔法としての威力とMP量のゴリ押しで、俺の育っていない【雷魔法】でもほとんど始末できた。

「こ、これでっ……最後ですっ!!」

前線に視線を戻せば、ラウラさんがナナフシに剣でトドメを刺した所だった。

のたうち回って消滅していくナナフシ。

「ウオオーッ!」と雄叫びを上げて囃し立てる天使達。

……よし、後は消化試合だ。

色々気になる事もあるが、特に敵側から話しかけられたりもしなかった以上、今後の匂わせだけで終わりなんだろう。

拠点と防壁を損傷されないように注意しながら、残りのバッタを片付ける。

……なお、即席で作った石の防壁に、出入口をつけ忘れていた事に気付いたのは、全部終わって解散して、自拠点に帰ってからだった。