軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:麦畑に押し寄せるバッタ

見張り台に登った僕の目に映ったのは……麦の間を縫って進んでくる黒い何かと、空を飛んでやってくる黒い何かだった。

「動きが虫っぽい」

「……あれは、生前住んでいた洞窟にいたカマドウマの動きに似ている気がします」

「んんん~~、苦手なヤツぅ〜〜!」

マリーの識別に悶絶する僕。『蜘蛛時代は美味しかったですよ』って言われても僕にはハードルが高いかなぁ!

いや、カマドウマと思うからダメなんだ……要するにバッタ、アレはバッタ系……バッタならまだ大丈夫……

そうやって無理矢理意識を切り替えていると、見張り台の縁に数体のNPC天使が着地した。

「ふむ、目立つ巨木とそれを守る壁か。中々良いぞ」

「これまでは麦を好き放題食い荒らす害虫共をいちいち追いかけないといかんかったからなぁ!」

「扉以外へ目を向けさせ、それを叩く。悪くない案だ」

濃さがそれぞれ違う灰色の翼と光の輪を持った……ヤマアラシと、獅子と、カタツムリ。

すごい、動物のチョイスに統一感が無い。

獅子とかは威厳と神々しさがあるのに、カタツムリはなんかプルンとしてて……パズルゲームのキャラクター感がある。

「あの……鳥の天使っているんですか!?」

「む、おるぞ?」

「翼どうなるんです?」

「追加で付いているが?」

我慢できずに訊いたら答えてくれた。

そっかー、いるんだー。そして羽は追加されるんだー。

……いや、うん、そんな場合じゃなかったね。ごめんなさい。

天使達は息継ぎみたいにここでワンクッション置いてから、迎撃に向かって飛んで行った。

相棒も遠距離から射撃を始めている。

それを見ながら、僕はインベントリから予備の魂籠を取り出して見張り台の上に置いた。

「コダマ爺ちゃん、籠に移って」

指示通り、籠に移ってくれたコダマ爺ちゃんが僕を見上げて言う。

「ふむ。お嬢、拠点でない所で儂らを装備品ではない籠に入れて単独行動させるのなら、決して籠を壊させてはならんぞ」

「壊されたらどうなるの?」

「拠点の住処にしている籠に戻る。迎えに来なければ此処へは復帰せん」

「了解」

なるほどね、気をつけよう。

まぁ、僕も同じ場所にいるからなんとかなるとは思うけど。

「コダマ爺ちゃん、防壁の内側から細い木を何本か伸ばして、鳥籠みたいにここを覆える?」

「出来るが、隙間から抜けられるぞ」

「マリー、その隙間に蜘蛛の巣を張って」

「わかりました」

「ふむ、それならばよかろう」

空から抜けられなければ、外の皆はずっと戦いやすくなるはず。

「ぬん!!」

コダマ爺ちゃんの気合いの入った声と一緒に、ゴツゴツした細長い木が防壁の内側から伸び上がる。

先端は上部で内側にカーブして、マングローブみたいに頂点でひとつにまとまり、ちょっと葉がフサフサした。

「いきます……!」

次いでマリーが見張り台から飛び出していく。

背中から生えてる蜘蛛の腕で伸び上がった木に取り付き、スルスルと移動しながらすごい速さで糸を張っていった。

うう~ん、うちのこ優秀!

僕もしっかりお仕事しないとね!

黒い群れが接近。

空中を飛んでくる敵は……一斉に出来立ての蜘蛛の巣に衝突する!

大量の虫がびっしりと張り付いて蠢く凶悪な視界!

「キモいキモいキツイ!」

「くっ……マスター、食い破ろうとしてきます!」

「マジでぇー!?」

蜘蛛の巣で止まった敵は、天使達が次々と打ち倒していく。

数が多いから……処理が早いほど有利になれるね?

インベントリから取り出したのは、こんな時に便利なメガホンアイテム!

「【トリック・オア・トリート】!!」

久しぶり、防御低下デバフ。

この敵達には僕に押し付けてくるような手持ちのお土産は無かったみたい。

障害物の少ないここは、僕の声がよく届いた。

効果を知ってる同盟仲間の2名は、ここぞとばかりに畳み掛ける。

細かい星屑がシャワーみたいに降り注ぎ、キンッと音がすると同時に光の一閃が敵を薙ぎ払った。

おっと、忘れずにMP補給。

僕と相棒のMPが共有されてるからね、うっかり空っぽにしたら相棒が危ない。

ポーション飲んで、MP全快。

すると相棒から念話が届いた。

(相棒、MP大量消費していい?)

(いいよー)

ダメッて言うわけないじゃんすか。

僕より相棒の方がタワーディフェンス上手なんだから。

ゴリッと減るMP

相棒の前方、敵の向かって来る方角の地面に闇が広がった。

そこそこの広さの闇は……麦の間から短い闇の触手が無数に生えている。

(おおー、それ何ー?)

(足を遅くするのとドットダメージ)

(なるほど)

タワーディフェンスっぽい!

そうして闇の範囲で足が遅くなって、敵がギュウギュウ詰まった所にアルネブさんが範囲魔法をぶちかましてる。

安定したかな?

そう思って、僕は蜘蛛の巣に引っかかってる敵の1体に目をやった。

崩壊の種 Lv17

……あれ? バッタとかカマドウマじゃないんだ?

種なんだねぇ、どう見ても虫なのに。

なんて疑問に思った次の瞬間。

襲撃のボスが、バッタの群れの中から唐突に現れた。