軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:お試しトマト結晶

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本日は火曜日。戦隊フリーマーケットはまた土日の開催だから、僕らにとってはフリマ直前に休日が挟まる感じかな。

だからのんびり準備ができるね。

「というわけで、早速結晶作りを試したいと思います!」

「はい」

「ニャア〜」

昨日は帰ってきてクロちゃん紹介してブラッシングしたら時間切れになっちゃったからね。

今日が結晶作りの本番です。

従魔みたいに指示はきいてくれるんだろうけど、一応会話できた方が便利かなーと思って、トマトは先に食べておいたよ。

相棒と一緒に、クロちゃんと話をする。

「クロちゃん、まずはどんな物を結晶に出来るのか教えてください!」

「ニャア〜、それは御主人のレベル次第なのニャア〜」

「なぬっ?」

そもそも『幻獣』とは、『精霊』とほぼほぼ構造は同じモノ。

だから『幻獣』のレベルは、精霊と同じように、契約主である主人と同じ数値になるのだとか。

「『結晶化』は、対象をギュギュッと丸めてギュッと握り締めたら、なんかカチコチの透けてる綺麗な感じになるモノニャア〜」

「うんうん、なんとなくわかる」

「そのギュッと握り締める力が足りるかどうかは、御主人次第なのニャア〜」

「なるほど」

うん、とてもわかりやすい。

「じゃあどんなのが簡単で、どんなのが難しいの?」

「自我の無いモノが一番簡単ニャア〜。次が自分で動かないモノ。自我が無いし動かなくても、入ってる力がつよつよだとちょっと大変なのニャア〜」

ふむふむ、自意識があると抵抗するって事なのかな。

そりゃ石化させられそうになったら『やめろやめろ』って暴れるよね。

ではそれを踏まえまして。

「この『満ち夢ちトマト』はどう?」

「ニャア〜……植物の実は簡単な方ニャンだけど、変わった力が入ってるニャア〜……御主人のレベルなら、まぁいけるかニャア〜」

「おー、よかった」

じゃあ問題なく結晶化作業にかかれるね!

「結晶化する時は、最低10個をギュギュッと1個に丸めるのがルールニャア〜」

「最低?」

「って事は、もっと入れる事も出来る?」

「ニャア〜、ドッサリ入れると効果もギュッと強力になる場合があるニャア〜。モノによるから自分で確かめてニャア〜」

なるほど。

確定じゃないから稀少素材を使おうと思うと頭を抱える事になるやつだね、知ってる。

「じゃあ、試しにトマト10個で1個作ってみて」

「ニャア〜」

クロちゃんに満ち夢ちトマトを10個渡すと、ニャアニャア鳴きながら積まれたトマトをペシンと叩いた。

すると、トマトは10個がまとまり1個になって、なんかトマトと同じ赤と緑色がマーブル模様になっているムニムニッとしたスライムみたいな状態になった。

そのままペシンペシンと猫パンチを繰り返すと、マーブル模様のスライムはだんだん小さくなっていき……最終的にはクロちゃんがお手々でムギュッと押さえつけてしまった。

そしてそっと手を避けると……そこには、赤と緑の2色が混在している綺麗な結晶が!

「おおー! 結晶になったー!」

「へぇ」

「ニャア〜」

【満ち夢ちトマトの結晶】…品質★★

夢が詰まった実を結晶化した物。

装備すると、一時的に幻獣と会話が出来るスキルを使用出来る。

「完璧!」

「うん、いいんじゃない」

「ニャア〜」

僕らもトマト食べる余裕が無い時があるかもしれないから、自分達用にひとつずつアクセサリーを作っておくことにしよう。

クロちゃんに収穫済トマトの結晶化をお願いして、ご褒美のオヤツの準備をしつつ、僕らはフリマの事を考える。

「……売り物は、装備の種類とか好みがあるだろうから、結晶のまま売った方がいいかな?」

「そうだね」

買った人が自分の好みで仕立てた方がお気に入りになるよね。

アクセサリー職人さんも楽しいかもしれないし。

「でもそうなると……次はきっと『結晶の幻獣』がみんな欲しくなるだろうな」

「そりゃそうだわ」

装備の幅が広がるもん。

面白いのが増えそうだから僕だってその方が嬉しい。

刻印の時みたいなもんよ。

「トマトアクセサリーがある程度広まったら幻獣持ちの人も増えるだろうけどねぇ。どうせなら、ベテランっぽい人に先におひとつ渡しておこうか」

「誰?」

「猫ちゃん教えるって約束したグレッグさん」

「ああ」

昨日は真っ直ぐ拠点に帰っちゃったし。

猫ちゃん情報を持って行くならちょうどいいと思う。

* * *

「……って感じで、これがその元トマトです」

「お、おう……」

グレッグさんに連絡を入れて、グレッグさんのクランの拠点でこっそり教える事になって、変装してお出かけ。

ここは『モロキュウ村』にある家のひとつ。

クランメンバーが会議とかに使っている部屋なんだって。

そこで僕ら夫婦はグレッグさんに情報提供を行っていた。

「猫って幻獣の事かよ……」

「モンスターだなんてひと言も言ってませんよ」

「モンスターじゃないとも言わなかったろうが」

まぁね!

それは確信犯だから何も言い返せないぜ!

トマト結晶を手の上でコロコロ転がすグレッグさんは、顎を撫でながらシステムウィンドウをうんざりした顔で眺めている。

現在進行系で僕らが何の話をしてるのかクランメンバーがクランチャットで好き放題予想してるんだって。

楽しそうで何よりです。

「……まぁ、くれるっつうならありがたくもらっておこう。欲しかったのは確かだしな。フリーマーケット後の騒ぎもまぁ、うちはそこそこ名前の通ったクランだから、お前さん達よりはこっちに来るだろ」

「だが」とグレッグさんは言葉を続ける。

「お前さんが前に書いてた本あるだろ? あんな感じで猫幻獣の事を書いておいた方がトラブルは減っていいと思うぞ」

「ああ、確かに」

『猫が働かねぇんだけど!?』みたいな苦情が上がるのはイヤだしねぇ。

「グレッグさんの所も猫ちゃん勧誘に行きます?」

「いや、うちはたぶん砂漠の方だな」

「砂漠?」

「砂漠にいる『大地の精霊』の所に『結晶の蠍幻獣』が見つかってる。精霊曰く『生真面目野郎』らしいから、職人にはそっちの方が合いそうだ」

「なるほど」

それは確かに蠍幻獣の方がいいかもしれない。

……でも、蠍は見た目が人を選ぶだろうから、職人さんは究極の選択を迫られそうだね……一番良いのは他の形態の結晶の幻獣が見つかることなんだろうけど。

まぁそんな感じで、僕らの情報共有はつつがなく終了。

じゃあまた〜と僕らが部屋から出た直後。グレッグさんは、扉の前で待っていたクラン仲間が部屋の中に押し寄せて揉みくちゃにされていた。

僕らそんな騒ぎは余所事として、にこやかな熊爪パンチさんのお見送りを受けて、村を後にしたのだった。