軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:勝利記念の花火

夏のイベントのメイン襲撃は、特に大きな被害は出さずに勝利を収めた。

港の基礎や防壁は多少削れたらしいが、それだけだ。NPCにも怪我人は出ていない。

例のタコ人魚プレイヤーが使徒の結晶を早期発見出来た事で、それを発見するNPCっていう存在もいなかったからな。

俺達が戦闘後に港へ戻ると、ジャック達三兄弟は『もっふる動物園』の精鋭コケッコ達と楽しそうに戯れているところだった。

精鋭コケッコ達は、革鎧みたいな防具と凶悪な鉄の爪を揃いで装備して兵士のようになっていた。随分迫力が増したな……俺達を見るとどこか誇らしげに綺麗に揃った敬礼を見せてくれた。

コケッコ達は森からの襲撃に対して、デューと協力して門を守り抜いたらしい。

久しぶりに会った『もっふる動物園』のクランマスター夫婦は、実に良いニワトリだと改めて俺達に礼を言ってくれた。

「オレ達も大活躍だったヨ!」

ジャック達は楽しそうに防衛戦の出来事を語る。

その様子に、相棒だけでなく周りのプレイヤー達もほっこりとした空気になっていた。……身長はデカいけど無邪気だから、言動がどうみても『楽しかった事を一生懸命語る子供』だもんな。

まぁ実際、ジャック達は活躍していた。

後日色んなプレイヤーが動画投稿サイトに襲撃戦の様子を上げていて、その中に三兄弟に密着したような動画があった。

コケッコと門を守るデュー。

門の上から、蜘蛛の糸をトラップとして撒いて援護するマリー。

そして身軽にひらりひらりと舞い跳びながらアニマル達のフォローをしつつ、ナタで斬りつけ、【草魔法】のデバフを撒くジャック。

連絡役に飛ばしたベロニカも、高空から敵の様子を偵察して伝える状況報告をしていた。

「ヤバいうちのこカッコカワイイ」

「うん」

動画にはそっと高評価を入れておいた。

対使徒戦については、相棒の使ったネモの足場やバンの召喚、それとカステラソムリエさんが使った世界樹の召喚がスレで話題になったが、本人からの報告が無い以上話題が広がりようもなく。話題は徐々に、使徒フランゴとの冬の決着についてに移って行った。

夏は海での戦いだったんだから、冬は雪中か氷に囲まれた場所での戦いなんじゃないか?

っていう考察と、対策案の議論だな。

決着って言うからには、規模も相当な物になるだろう。

それに備えて、建築メインのプレイヤーは、今からピリオと港の防壁強化を計画している。

戦闘メインのプレイヤーは相変わらずレベル上げに余念がない。

開拓勢も、冬に向けての備蓄の他に、防御に比重を向けようと考えているようだ。

……まぁとはいえ、まだ秋にもなっていないんだよな。

今日の俺達は、拠点の皆を連れて花火を見に来ている。

元々予定されていた夏の夜空に打ち上げる港の建設記念の花火だが、使徒の襲撃を退けたということで戦勝記念も兼ねる事になったと報じられた。

暗い夜の港。

俺達は人混みを避けて、港の外れの人気の少ない浜辺に陣取っていた。

入り江の海上から打ち上げる花火は、アリーナから眺めるのがお勧めで全プレイヤーが入れるようにトライアスロンの時のような別室処理がされるらしい。

……まぁ、それでも人が多そうだから、避けてこっちに来ているわけだが。

軽食と飲み物を広げて、思い思いの姿勢でくつろいでいると……最初の花火が船から打ち上げられた。

ピィ……ンッ

と、不思議な音を立てて空へ高く昇る小さな光。

そして一拍おいてから……パァンッと、リアルの花火とは違う、とても軽い音を立てて、空に火の花が咲いた。

花を使っているだけあって、空に広がった姿は、より本物の花に近い形をしている。

花が咲くのを早回ししているように、色のついた火の花弁が、夜空にワッと咲いては儚くハラハラと散っていく。ファンタジー色の強い、綺麗な花火だ。

タンポポのような素朴で花弁の多い花を最初に使っているんだろう。小さめの花火がいくつもいくつも打ち上がって観客を盛り上げる。

(あ、今の目玉無かった?)

(気のせいじゃなかったか……)

うん……不気味系の花はここに入れるしかないよな。

次に打ち上がるのは、藤の花のような垂れ下がる花の花火。

リアルの花火だと柳っぽい物が近い、しばらく夜空にキラキラと残る様子に歓声が上がる。

「綺麗だネー!」

「花火とは良いものデスナ」

「ステキです……あんな刺繍ができたらいいのに……」

素直に喜ぶオバケ三兄弟。

「いやぁ風流風流!」

「ヒトの子は面白い魔法の使い方をするものじゃなぁ」

「うむ、美しく良い景色ぞ」

年配組は興味深げに、あるいは面白そうに風情を堪能して。

「コウ?」

「こんナ?」

「こうカな?」

「アハハ!」

ネモはキャラキャラと花火の真似をして遊んでいる。

「火を花の形にして威力はあがんのかぁ?」

「その造形と技術を駆使した美しさを楽しむのが花火よ。わかってないわねぇ」

花火がピンとこないバンは、ベロニカに呆れられていた。

「綺麗だねぇ」

「うん」

「夏のイベントは、あとは最終日の進水式で終わりかな?」

「だね」

灯台も出来上がり、メンメンの名前がついた船もいよいよ完成する。

最終日にその船が海に浮かべられて、夏のイベントは終了だ。

「……あ!」

「おお……」

長い花火もいよいよラスト。

大きな大きな大輪の花が、虹色の火で咲き誇る。

これがきっと、パピルスさんに交換してもらった花火向けの……

そう思った、次の瞬間。

パパパパーンと、締めに打ち上げられた複数の花火に……デカデカと浮かんだ……ニヤニヤ笑い!

「やったぜ! ニヤニヤフラワーが締めだー!」

「嘘だろ……!?」

なんでだ運営!?

フェスティバルレインボーフラワーが締めでよかっただろうが!?