軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:海の噛みつき大決戦

MPがあれば取れる手段はある。僕はそう言った。

MPなら出せる手段はある。カステラソムリエさんはそう言った。

そんな綺麗に手段が噛み合うなら、そりゃやるしかないでしょうよ!

「【サモンセイクリッドツリー:マナの一枝】!」

カステラソムリエさんの召喚魔法。

魔法の言葉を唱えると、複雑で綺麗な模様の魔法陣がグワッと対象の僕を中心に広がった。

魔法陣に描かれたいくつかの円が、くるくる回りながら円盤状の魔法陣から球を描くように起き上がる。

そして模様の一部が、そのまま植物の成長を早回しするみたいに芽吹いて育って生い茂った。

そして白い樹皮の大きな木が、僕の背後に姿を見せる。

光の線が表面に走る、仄かに光を纏った綺麗な木。

人より大きな木の葉も、白みがかった淡い緑色で、葉脈がキラキラと光っていた。

「うわぁお! すっごぉーい!? 森フェアリーの召喚魔法で、なんかすごそうな木が召喚されましたー!!」

妖精ちゃんの実況を聞きながら、僕は杖を結晶に向ける。

綺麗な木で僕に付与されたのは、すごい大量のMPだった。

僕の今の最大MPが88。職業的に上がる分に加えてちょくちょくポイント振り分けてるから、それなりに多い方のはず。

でも付与されたMPは……なんと1000。

シンプルに戦闘勢の高レベルプレイヤーの10倍くらいの威力出せるのでは??

特殊職業用の特殊召喚みたいだから破格の性能!

これならきっと。

ネモの足場分のMPは残して、この木で追加されたMPだけを、全部まるっと召喚に使う。

「【サモンネクロマンス:バン】!!」

出番だよバン!

ここで出さなきゃいつ使うの!

展開する魔法陣。

弾け、飛び出す、海水の奔流。

その中を泳ぎ出るように、白い海藻が身体に巻き付いた巨大なサメが。

敵だった時に匹敵するサイズで現れた!

「ヒィヤッハァー!! 待ってたぜこの時をよぉおお!!」

テンションマックスなバンが、大口を開けて、巨大な結晶に齧りついた!

──バリ ン !! ……ゴギギギギッ!!

何か硬くて薄いモノが割れる音。

そのままバンの歯が結晶に食い込んで、表面をガリガリと削り込む鈍い音が響き渡る。

「貴様ッ!!」

巨大化した、でもバンよりは小さな使徒が、怒り狂ってバンへ突進した。

サメの鼻っ面に叩き込まれる体当たり。

さすがに使徒の攻撃は痛かったのか、バンは堪らず結晶を放して……でも負けじとフランゴに反撃した。

バッシャンドッシャンと派手に海を荒らしながら、2体の巨軀が激突しあう。

「怪獣映画かよ……」

呆れたようなカステラソムリエさんの感想。

……そちらの召喚の結果ですが?? なんでキミがドン引きしているのだね??

「えええええー!? アレって前の襲撃で出てきたサメじゃないのー!? サ、サメとフランゴが激しく殴り合う! 余波で周りの魚がある程度散ってる? 皆、今がチャンスだよ! 結晶に攻撃叩き込んでー!!」

驚きながらも状況を実況していた妖精ちゃんの叫びにプレイヤー達が我に返った。

周りの魚達が、相棒の闇魔法で弱ってた所にダブル怪獣の大暴れを受けて散り散りになっている。

海が大きくうねるけど、バンが主に起こしてる波だからか振り落とされる程じゃない。

魔法使い達はボートの縁に掴まりながらも、一斉に結晶へ向けて魔法を放つ。

僕もMPポーションを補充して、結晶周りの足場を整え直した。

足場の上の近接組が、ガッツンガッツンと結晶に武器を叩き込む。

そして、あのエンペラースイカを斬ったお爺ちゃんが、お嬢様の支援魔法を受けながらスッと刀を静かに構えた。

近くであんなに大きなのが戦ってるのに、微動だにせず集中しているのがわかる。

そして

「フッ!!」

相変わらず力強い踏み込みと、ここまで聞こえてくる鋭い息。

振り抜いた刀は、傷付いた結晶の脆くなった部分を的確に捉えて……

バギッ と、結晶が、半ばから折れて崩壊した!

「なっ──!?」

「ヘヘッ、お役目完了ってなぁ!」

驚愕して振り返る使徒。

召喚時間切れでバンは消えて帰還する。

そこへ、よく通る声が響いた。

「ギャング海王号、ジャンプ噛みつき!」

指示を受けたのは綺麗なシャチ。

海から不意打ちで飛び出した黒と白の海獣が、ダメージを受けていた使徒の首をひとつ噛み千切った。

「ここでバイトリーダーの到着だー!! 初手でシャチ従魔が首を獲ったー!!」

サーフィンのように魚に乗ってやって来たのは、トライアスロンで最後に優勝争いをしていた内の一人。

片手で何かを指示したのか、周りの魚っぽい従魔達が一斉に海中の敵を倒しに隊列を組んで突進していく。

結晶も壊した。

使徒に重傷も与えた。

もう形勢はひっくり返らない。

「おのれっ……一度ならず二度までもヒト風情に後れを取るとは……っ!」

使徒の身体が……除々に小さくなって、元のヒトっぽい形態に戻った。

首を獲られた所なのか、血こそ出ていないけど大きく抉れている首の根元を抑えている。

「……冬だ。冬に貴様らと決着をつける。それまで精々肥え太っているがいい」

なるほど、冬イベントがフランゴ君との最終戦なのかな?

言い捨てて、使徒フランゴは消え去った。

「使徒『咀嚼のフランゴ』の撤退を確認!! 海上の敵本陣、大勝利もらいましたぁあああー!!」

妖精ちゃんの勝利宣言に、海中の人魚も顔を出して沸き立った。

とはいえ、出現したモンスターが全部消えたりはしていないから、ここからは事後処理。

今回は、逃げ帰らずに最後までお手伝いしようかな。

ジャック達も、迎えにいかないといけないからね。