軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:価値観ひとそれぞれ

草系モンスターのハウスになっている高台は、今の僕らにはそこそこ弱いレベル帯なおかげでのんびりと狩りが出来た。

まぁ僕は強靭ステが低いから、たまーに装備の底上げを貫通してデバフを貰うけど、充分ポーションでなんとかなるレベル。

ここで手に入る花は、錬金術士とかが素材に使う物が多いみたい。

でも敵がミッシリと詰まってモンスターハウス状態になってるから、狩場としての人気はいまいち。

初期の頃に風属性を鍛えたい魔法使いが主に使う所なんだって。

そうじゃない人がこうやって余裕で狩れる頃には、経験値的においしくないしね。

「よし、ニヤニヤフラワー4つ目」

「そんなにいる?」

問題は、鉢植えとはいえ生きてるモンスターだからインベントリに入らないんだよね。

即席で背負子みたいなの作って背負って行くにしても……4つで限界かなぁ……僕が2つ、相棒が2つで……あ、ネビュラにも背負って貰えたらもう少しいけるかな?

そんな事を考えながら、また入り口辺りに鉢植えを置いておこうと一人で戻ると……見覚えのある人と知らない人がいた。

「あれ? パピルスさん?」

「おや、これはどうも。奇遇ですね」

二人組の片方は行商人パピルスさん。

相変わらずファンタジーみのあるスーツっていう戦闘に向かなさそうな見た目をしている。……でも、オープンダンジョンなんて呼ばれる所に来てるって事は、ちゃんと戦闘仕様なんだろうなぁ。商売人はスーツが戦闘服だって言うし、高いスーツはオーダーメイドっていう謎認識もあるから、きっとパピルスさんのスーツもオーダーメイドなんだと思う。

そしてもう一人は……映画とかで見るアメリカの大学の卒業生みたいな格好をした男性だった。ちゃんとあの四角くて平たい帽子も被ってる。

そのアメリカ大学卒業生モドキさんは……なんでか僕のニヤニヤフラワーの鉢植えをガン見していた。

「……えっと、鉢植えに何かありました?」

「あー、すみません。連れがちょっと気になってしまったみたいで……論丼、ほら持ち主来ましたよ」

アメリカ大学卒業生モドキさんがグルッとこっちを見た。

そしてすごくビックリした顔になった。

「……何っ、森女!?」

「どうも森女です」

本当に鉢植えしか見えてなかったねこの人。

集中すると周りが見えなくなるタイプかな? わかるよ、僕も時々そうなる。その集中先がニヤニヤフラワーっていうのがひどい光景だけど。

「……はじめまして、『論丼ブリッジ』という。職業は『錬金の学術士』だ」

「これは御丁寧にどうも。森女です」

ごめんね、こっちの情報は増えないよ。

「今日は森男さんは?」

「奥で狩ってます。ちょっとこれを置きに来ただけなんで」

そう言ってニヤニヤフラワーの鉢植えを見せると、論丼ブリッジさんがカッと目を見開いた。

「ニヤニヤフラワーの雄株だと!?」

え、これ雄株なんだ?

他のが黄色で、これだけ赤いなーとしか思ってなかった。

「鉢植えでその手があったかと感心していたが……そうか、繁殖もさせれば手間が省けるな……もしや、ニヤニヤフラワーの新しいレシピを見つけていたりするのか!? もしそうならぜひ買わせてほしい」

??????

「……すいません、何の話です?」

「ん? ニヤニヤフラワーなのだから、当然精神デバフ解除薬の調合に使う話だろう?」

「あ、これって薬になるんですか」

あ、論丼ブリッジさんが『意味がわからない』って顔になった。

「……差し支えなければ、このニヤニヤフラワーをどうするつもりだったのか教えてくれないか?」

「花火の材料としてNPCに納品するつもりでした」

あ、論丼ブリッジさんが宇宙を背負った猫の顔になっちゃった。

「……………………何故!?」

「え、面白そうだったから?」

どうしよう、正直に話してるだけなのに論丼ブリッジさんが宇宙猫の顔から元に戻らない。

隣のパピルスさんは必死に笑いを堪えてプルプル震えてるし。

「……パピルス、俺まだ夏風邪の熱あるか? 頭が理解するのを拒絶している」

「熱があったらVR機器の警告入るでしょう。無いって事は平熱ですよ」

そんな、人を高熱の時に見る悪夢みたいな扱いしないでくださいよ。

「…………いや、いい。わかった。森夫婦は俺にはよくわからない理屈で動いているということがわかった」

あ、しれっと相棒も理解不能枠に入れられちゃった。

「よければ、この鉢植えを買い取らせてもらえないだろうか? 全部でなくとも、雄株と雌株をセットで買わせて貰えるとありがたいのだが……」

「ダメならキッパリ断って頂いて構いませんよ」

よくわからないけど商談が始まった。

薬作る人には結構大事な花だったんだねぇ、ニヤニヤフラワーって。

えー、どうしようかなー

悪夢扱いされたから、今の僕はちょっとひねくれモードだぞ?

「……面白い物と交換ならいいですよ」

「……面白い物?」

「これを花火にしたら面白そうだなーと思ってたんで、これが欲しいなら代わりの面白い物をください」

あ、論丼ブリッジさんがフリーズして、色んな顔して悩みながらインベントリ漁り始めた。

「……パピルス、俺が持ってる物で面白い物って何かあるか?」

「貴方のインベントリって錬金術の材料ばっかりじゃないですか。先日の猫の店の情報とかの方が良いんじゃないです?」

「あ、それこの前行きました」

「おっと、既に訪問済みでしたか」

「くっ、さすが早いな……!」

悩みすぎた論丼ブリッジさんは、青い猫型ロボットがパニックしてる時みたいにインベントリの中身をガラガラガラガラと雪崩みたいに広げ始めた。

面白い反応するなぁこの人。割とこの人が面白いからタダであげてもいいんだけどねぇ。

「……どうだ! 何か琴線に触れる物はあるか!?」

「そんな必死になるほどです? ニヤニヤフラワーって?」

「雄株がレア中のレアなんだ!」

「うーん、相変わらず論丼は取引下手ですねぇ」

そうだね、それ言っちゃったら足元見られるよ論丼さん。それは僕でもわかる。

まぁ、せっかくだから広がった物品を色々見せてもらう。

何か面白い物あるかなー?

……あっ!?

僕の目に止まったのは、親指サイズの小さい手足付きのダイコンにつぶらな瞳がついたような可愛い物体だった。

「なにこれ可愛い!」

「ん? それは発芽したばかりのマンドラゴラだ。」

ああ、マンドラゴラかぁ!

そうだね、ファンタジーの薬の材料としては定番だよね。

小さいマンドラゴラちゃんは、水気が足りないのかしょんぼりとしていて庇護欲をそそる。

「この子と交換してください!」

「えっ、なん……それは間引いた苗だから、価値はまったく釣り合わんぞ!?」

「可愛いからこの子がいいです」

あ、論丼ブリッジさんが助けを求めるような目でパピルスさんを見始めちゃった。

パピルスさんはとうとう耐えきれずに腹を抱えて笑いながら言う。

「フフッ……本人が希望しているんですから……グッ……交換すればいいじゃないですか……ブフフフッ」

そうそう、僕にとっての可愛い物はプライスレスなのだよ。

そんなわけで、無事に商談が成立。

鉢植えが2つだからって、マンドラ苗ちゃんも2体くれた。

別の鉢を出して、大事に土とマンドラちゃんを植えて水をやる。

論丼ブリッジさんも、どうやって持ち帰るかパピルスさんと相談を始めた。

そんな事をしていたら、相棒も戻って来た。

「……中々戻って来ないと思ったら」

「ごめんよ、ニヤニヤフラワーの鉢植えが欲しいって言うから。物々交換してた」

「へぇ……さっきの香水になる高そうな花じゃなくて?」

相棒は、パピルスさんがいるから、高級品を欲しがられたのかと思ってそう言ったんだと思う。

そしてその認識は間違ってなかった。

「まさか【零れ百花】も入手したんですか!?」

「ア、ハイ」

「どうか売っていただけませんか!? お金でも面白い物でも出せますので!」

「……どういう選択肢?」

「僕の要求の名残かな」

僕らの狩りは、物欲センサーさんがとってもお仕事していたらしい。ピンポイントで2人の欲しいものを引き当てていたみたいだねぇ。

「……花火にしようと思ってたんで、花火にしたらすごそうな花とかありません?」

「ございます!」

「そっか、その手があったかー」

「ひとつくらいは普通に綺麗な花持っていった方がいいだろ」

「確かに!」

さすが相棒だね。