軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:高台の上は花盛り

グレッグさんが言うには、草系の高台に一番近いのはモロキュウ村らしいから、まずはそこへ転移する。

……確か、『蝶の山』もモロキュウ村が最寄りだったな。

2つも狩場が近ければそりゃ立ち寄るプレイヤーもそこそこいるだろう。

草系の高台はダンジョンじゃないから、念の為変装してからやって来た。

モロキュウ村からやや西寄りの南方向。

ありがたい事に土を固めた簡単な道があるから、それを進む。

「 エフォ(EFO) の花火って、火薬じゃないんだな」

「……もしかしたら、このゲームって火薬出ないんじゃない?」

「ほう?」

「だって火薬が出たらどうしたって近代兵器に片足突っ込むじゃん。その辺は魔法使ってファンタジー仕様にしてねって事じゃないかな?」

「なるほど」

まぁ魔法の自由度が高いゲームだから、火薬が無くてもどうにでもなるか。

ゲーム内で1時間ほど歩いて、草系の高台に到着する。

道なりに、一カ所出入口のようになっている坂を登った。

するとそこには……

「うーわー……」

「すげぇな」

生い茂った森の入り口に、ワッサワッサと伸びて垂れ下がる蔦。その蔦にミッシリと並んだ、凶悪なギザ歯の並んだ口がついた実。

ピラニアヒョウタン Lv10

「すーごいガチガチガチガチ歯の音聞こえる」

「なんだこれ……うるせぇな、何匹いるんだ」

「 エフォ(EFO) ってモンスターの密集のバランス割と雑だよね」

「まとめて狩れれば楽ではある」

じゃあ、まとめて狩って行くか。

ボウガンに矢を装填して、構える。

エフォ(EFO) の武器攻撃系のスキルは、スキルレベルが30を超えると、MPを消費して無属性の衝撃波を放てるようになる。

これは魔法ほどの自由度は無い。

打撃系の武器からは打撃の衝撃波しか出せないし、飛ぶ斬撃なんかは斬撃系の武器からしか出せない。そして射程距離は精々中距離まで。

それでも、近接武器の戦い方に相当な柔軟性が加わるから、この違いはデカい。

ただ魔法に無属性は無いから、実質コレが無属性魔法だ。

俺の【弓術】スキルもようやく30になった。

一発の射撃で複数本の矢を雨のように降らせる類の攻撃がやっと出来る。

パァンッと一発。

散弾銃のように展開する衝撃波で、ピラニアヒョウタンはズタズタになって千切れ落ちた。

「おおー! カッコイイー!」

「やっと雑魚散らしが楽になる」

上から吊り下がる敵を倒すと、今度は地面に咲いているモンスターが鎌首をもたげた。

ポイズンウィップソーン Lv12

トゲだらけの茨が、鞭のように長い蔦をしならせてこっちを打ち据えようと振りかぶる。

こいつだな、毒持ちのメインは。

「【サモンネクロマンス:霊蝶の群長】」

相棒の魔法の声。

虹色に煌めくガラスの蝶が、森へ向かって吹き荒れた。

活発に襲いかかっていた植物と、潜伏して隙を窺っていた植物が、一斉に精神デバフを発症してわけのわからない動きを始める。

俺はそれを片っ端から撃ち落としていった。

衝撃波が使えるようになると魔法無しでも矢が当たりやすくて助かるな。

弓はそもそも射程が長いから、そこに衝撃波が付けば魔法に劣らない範囲殲滅が可能になる。

β勢も『弓は30からが本番』って感想は出してたんだが……結局ここに到達するまでが面倒で他に乗り換えるプレイヤーも多いらしい。

モンスターを薙ぎ払って周辺がただの森になると、大量のドロップアイテムが残っていた。

「あ、花もあるよ」

「どれ?」

【牙口の花】…品質★

鋭い牙の並ぶ、生き物を捕食する花。

まだガブガブと動いている。

「……コレ花火にして大丈夫か?」

「何でもいいって言ってたし、どんな花火になるのか興味ある」

そっかー……まぁ相棒が楽しそうだし、いいか。

そもそもドロップ以外にも、色んな花が咲いてるしな……

【監視フラワー】…品質★

森に立ち入ろうとする存在を監視している花。

植物に害をなす存在を森中に伝えているらしい。

「……コレ本当に花火にして大丈夫か?」

「何でもいいって言ってたし、イケるイケる」

イケるかぁ……?

「あ、ほら、こっちの花とか可愛いし綺麗だよ」

「どれ?」

【零れ百花】…品質★★★★

上品な甘い香りのする白い花が咲いた房。

貴族女性が好む香りで、高級な香水の原料になる。

「……これはこれで花火向きじゃなくないか?」

「まぁお値段高そうだよね」

【火魔法】を使わずに倒せば、素材集めの場所としては良い所っぽいな。花火に向いてるかどうかは別として。

「とりあえずこの子は絶対に持ち帰って渡してみたい」

「ん?」

ニヤニヤフラワー Lv6

「……なんだそのニヤニヤ笑ってる背の低いヒマワリみたいな花」

「ニヤニヤ笑ってる背の低いヒマワリみたいな花だよ」

「……持ち帰るって、どうやって?」

「鉢に植え替えて?」

「いや、モンスターだろそれ」

「だって襲ってこないし」

……ああ、ノンアクティブなのか。

いや、それにしたって。こんなん鉢で渡されても花火職人困らないか??

困惑する俺を他所に、相棒はせっせとニヤニヤフラワーを掘り起こし始めた。

……そして何事もなく植木鉢に植え替えが完了してしまった。

「よし!」

「よし、じゃないが?」

マジでそのまま持って行くつもりらしい相棒は、とりあえず狩りの間は邪魔になるからと入り口辺りに鉢を置いておいた。

「もう2,3個欲しいな」

「好きにしなー」

実に楽しそうな相棒を見て、俺は深く考えるのをやめた。