軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:女王蜂との謁見

俺たちがなんとなくホールドアップしながら入った蜂の巣ダンジョンは、ゲームによくある大型の蜜蜂の巣だった。

枯れ木の裏側に積み重なった、堅牢な蜜蝋のハニカム構造。

きちんと蓋がされていても、甘く香って来る蜂蜜の香り。

そこかしこの六角形の中から、デカい蜜蜂がこっちをちらちらと覗いてくる。

……正直、落ち着かない。

が、キーナは違ったらしい。

(良いねぇ、蜂のお城)

(……マジで?)

(相棒は好きじゃない感じ?)

(匂いが甘ったるすぎて、ちょっとキツイ)

(あー)

空気全体が甘くて重たい。

狼精霊のネビュラも少し顔をしかめている。

甘いもの好きな相棒だけが嬉しそうだ。

巨大な枯れ木を上へ上へと登って、俺達は、見るからにひと回りデカい蜂がズラリと並ぶ広間に通された。

その中でも、一際大きな蜂……頭の上に王冠っぽい形があるのはゲームならではだな。わかりやすい女王蜂が俺達をしげしげと眺めて口を開いた。

「ようこそ人の子よ。歓迎はせぬが、今回に限り話くらいはしても良かろう。先程の報告では『マロイアマイレンゲ』の蜜が少のうて小鳥が困るという話であったな?」

俺達が頷くと、女王蜂はホホホと笑い声を上げた。

「それを人の子に伝えさせるとは、幻獣殿も意地の悪い」

「……やっぱり、ヒトが蜜を持って行くのが原因だったりしますか?」

「まぁ半分はそうじゃな」

とはいえ……と女王蜂は言葉を続ける。

「我らの蜜が他種族にとって美味なのはわかりきった事よ。そなたらがおらぬ時代は熊だの鳥だの南の蟻の兵だの来ておったしな」

「あれに比べれば人の子は卵や子供を根こそぎ食ったりはしませんからな」

「うむ、ある程度の蜜を与えておけば周囲の厄介者を片付けてくれるあたり、まだ御しやすいわ。ほれ、門前に住み着いておる、半分熊のとか……」

「ああ! あの熊人は良いですな。兵が撤退すれば深追いしませんし、通り道に蜜を配置しておけばさっさと帰りますし。最近は兵が鍛錬に使っております!」

……ヌーさん、飼われてる?

思ったよりもドライというか、あっさりした蜂達の反応を意外に思っていると、それを見透かしたように女王蜂は「フン」と鼻?で笑った。

「食うか食われるかなど世の常。相手が誰であろうと関係ないわ。人の子には一度大敗しておるのでな、その成長の早さと力量は理解しておる」

「蟻共のように、挙兵してさらなる損害を被るなど愚の骨頂。我らミリオンハニービーは、蓄財してこそ繁栄しますので」

なるほど、割り切った方が生存率は上がるって事か。

感情が上位にならないあたり、やっぱり野生の生き物ではあるんだな。

「それでも多く蜜を集めていたのはな……今年は数年に一度の王子王女の独立があって、それに必要だったのだ」

「……あっ! 新しいコロニー?」

「左様、少しは我らの事を知っておるようだな。入り婿となる王子はともかく、王女は家臣団をつけて送り出す必要があるので、どうしてもその年の育成は蜜が大量に必要になるのだ」

そうか、分蜂か。

群れを分ける蜂の巣立ち。

そのために蜂は群れの数を増やさないといけなかったはずだ。

「……あの鳥共も数年に一度の事なのだから、いい加減察して覚えても良いと思うのだがな」

「察しませんし覚えませんなぁ! 兵は毎年毎年花の傍でピーチクパーチク言われているような気がいたします!」

まぁ、鳥には関係ないだろうからな。……でもそんなこと言うなら、鳥の求愛だって蜂には関係ない話だ。結局はお互い様か。

「幻獣殿には『事情を訊いてこい』と言われただけで、『なんとかしろ』とは言われておらぬのだろう? ならば帰ってそのままを伝えるがよい。時間が解決する事だ、とな」

「わかりました、ありがとうございます」

「うむ……そうか、そなたらに頼むという手があったか」

うん?

女王蜂が、何かを思いついたように呟いた。

「それはそれとして、少しこちらの話を聞いてもらえぬか?」

まさかの蜂からの依頼?

女王の指示で、デカイ蜂の一匹が奥から小さめの蜂を一匹連れて来た。

……周りが大きいからかなり小さく見えるな。

それでも最初の蜂と同じくらいはあるんだが。

「巣立っていった王子王女は皆逞しく大きく育ったのだがな……この姫だけは見ての通り、あまり大きくなれなかったのだ」

こころなしか、小さめの蜂がしょんぼりしている。

「それでも戦に強ければと思ったが……性格も穏やかときた。これでは独立したところで、早晩全滅して終わりよ。それも世の常ではあるが……ここまで育ててそれは、いささかもったいない」

そこでだ、と女王蜂は俺達を見た。

「人の子は、様々な生き物を家臣として迎える事があるようだな? この姫、同じようにどこぞで受け入れてはもらえまいか」

「え……いいんです?」

「何がだ?」

「え、だって……しょっちゅう襲ってくる人の子相手に、お子さん託していいんですか?」

「種の存続以上に優先すべきことなどあるまい」

ドライどころじゃないな……根本的に感覚が違う。

それはそれ。

これはこれ。

この王女蜂がどこかで女王になって子孫を増やせるなら、蜜を略奪される事なんか些細な事なんだろう。

「話の通じる人の子が来る事など、この機会を逃せば次はいつになるかわからぬ。報酬として蜜なら山ほどくれてやれるが……どうだ?」

──クエスト『蜂の姫君の後見探し』を受諾しますか?

クエスト扱いか。

俺と相棒は顔を見合わせた。

(……前のコケッコちゃんみたいに、里親探せばいいかな?)

(いいんじゃない? ……相棒、蜂好きだから、うちで飼うって言うかと思った)

(いやだって……あそこ連れて帰ってもお婿さん来ないよきっと。野生の花の蜜も食べて大丈夫かわかんないし)

(ソーデスネ)

次元の違う場所は環境がちょっとな……

花が多い環境の農村とかなら大歓迎してもらえるかもしれないから、そういう所を募集してみるか。

ってわけで、受諾、と。

「じゃあ……出来るだけ頑張ってみますね」

「おお! ありがたい! ほれ姫よ、支度をしてまいれ。兵は報酬の準備を!」

一度奥に引っ込んだ蜂のお姫様は、リアルのスズメバチの巣みたいな物を抱えて戻ってきた。

「……コレなんですか?」

「家臣団が入っておる引っ越し用の巣よ。女王となられるお方はこのスキルを習得して一人前なのだ」

「へぇー!」

【収納】スキルみたいなものか?

……まぁ、人間くらいの大きさの蜂が大量に群れて飛んでたら目立ってしょうがないというか、もう事件だな。家を探す前に他の生き物に襲われる。

女王様に「では姫を頼んだぞ」と見送られ、俺達は来た時と同じ面々に案内されながら、今度は枯れ木の中を下りた。

「……ってっきり『蜂蜜を取りにくるな』って言われると思ってました」

「『食事を摂るな』と他種族に言ったところで聞くわけなかろうに、そんな無駄な事はせん。……まぁ、あれほど頻繁に来るのならば、門前に花畑のひとつでも作れとは思うがな!」

「だったら来る人に花の種でも渡せば良いと思いますよ? 察して作ってくれるかもしれないです」

「……なるほど? やってみるか」

確かに、誰かがちょっと気になったりしたら、種を撒くくらいはしてくれるかもしれない。

下層で用意されていた、インベントリから溢れそうな量の蜂蜜を押し付けてくるのを固辞しながら思う。

……もしかして、あの『絆の梟幻獣』はコレが目的だったんじゃないか?

* * *

600 熊野ヌーさん

なんか、最近ハチの巣ダンジョン行ったら

蜂から花の種投げつけられるんだけど・・・?

601 ストライクダンディ

>600

「材料費くらい払え」

602 わんわんおまわりさん

>600

「食い逃げすんな」

603 スティーブ

>600

「ちょっとは還元しろ」

604 ギョッピー

605 熊野ヌーさん

やっぱりー?

しょーがないな・・・ゴチになってるし花畑くらい作るかー