軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:心中お察しします。

蜂の巣ダンジョンは、崖の裂け目をくぐった所から既にダンジョンの範囲だった。

遠目に見える、巨大な枯れ木。

あの中が空洞で、蜂の巣がみっしり詰まってるんだって。

あの枯れ木をぐるっと囲むように崖の壁が防壁みたいになっている。視力検査のCの字のマークみたいな形だね。

ゲームによくある天然の要塞。

確かに、お城みたい。

「結構大きなダンジョン?」

「らしいよ。まだ全踏破は1パーティしか出てないって」

「あれ? 意外」

「奥まで行かなくても充分おいしいんだってさ」

主に経験値と蜂蜜が。

これを強引に最奥まで突き進もうとすると、消耗が激しくなって赤字になるらしい。金銭的にもデスペナ的にも。

ボスは予想を外さず女王蜂と近衛兵だったし。

ドロップも甲殻に羽に卵とロイヤルゼリーと、これまた予想を外さない。

ロイヤルゼリーは需要があるけど、そこまで危険を冒す程の価値になるかというと微妙らしい。今後値上がりしない限りは序盤の蜂蜜だけで充分という雰囲気になっているんだって。

「あの枯れ木に外から放火されたりしないんだ?」

「ちゃんと防御なり水撒いて消火するなりするんだって」

「おおー、賢い」

そんなに賢く理性的なら、確かに言葉が通じればお話する余地はあるかもしれない。

とりあえず相棒はネビュラを呼んだ。

「ふむ、蜂か……」

「あれ? ネビュラ苦手?」

「小さく数が多いのは得意な相手ではないな」

あー、確かに肉食獣って首を噛み殺せる相手に強いイメージあるかも。

「さて、じゃあどうしようか?」

ボウガンに矢を装填して、準備を終えた相棒が訊いてくる。

僕はそれに……イベント景品のメガホンを取り出す事で応えた。

「戦闘の意思無しって呼びかけは、まず意思を届ける事からだと思います」

「そっかー」

駄目だったらUターンして一回外に出ればいいよ。ダンジョンの入口なんだから。

「えーっと……ここのモンスターって何て蜂だっけ?」

「ミリオンハニービー」

百万匹ハッチーかー

僕はメガホンを構えて、大きく息を吸った。

「ミリオンハニービーさーん! こーんにーちはー! こちらは『絆の梟幻獣』さんのお使いでーす! どなたかお話お願いしまーす!」

拡張された大声に驚いたのか、鳥が何羽かバサッと周りの木から飛び出してどこかに行った。

……そしてしばらくして。

人より少し小さいくらいのサイズの蜜蜂が一匹、ブンブン羽音を響かせながらやってきた。

「はいはいはーい、お待たせいたしまーしたー。どちらさまでーすかー? ……アレェエエエエエ!? ヒトだぁあああ!? なんでぇええええええ!?」

「どうも、『絆の梟幻獣』さんのお使いで来ました。人の子です」

「ウゥゥワァァアアアアアアア!! ヒトがオレ達とおんなじ言葉喋ってるぅううううう!? なんでぇぇええええええ!?」

せやろな。

でもそう受け取られてるって事は、フクロウさんの翻訳効果はきちんと効いてるって事だね。

蜜蜂ちゃんは違和感に悶えながら大慌てでブンブンと謎の八の字ダンスを踊って……一目散に枯れ木の方に帰って行った。

「……あんなに大慌てでも八の字ダンスはキッチリ踊っていったね」

「本能なんじゃない? ……で、どうする?」

「もうちょっと待ってみようよ。偉い人に確認しに行ったのかもしれないし」

「ん、わかった」

そのまま入口から動かずに、のんびりと時間が経つのを待っていると……今度は、見るからに厳つくゴツゴツとしている蜂を数引き連れた蜜蜂がやってきた。

「……先程は大変失礼いたしました。よもや使者として遣わされたのがちょいちょい我らの城から略奪を繰り返すヒト族などとは思いもよらず……ハハッ、幻獣殿も何を考えておられるのやら」

「デスヨネー」

蜂の巣ダンジョンなんて蜜蜂視点ではそうなるよね。

しみじみと同意すると、蜜蜂さんは「ふむ」と首を傾げた。

「なるほど、立場を理解してはおられるらしい。言葉も通じておりますし……では、御用件を伺いましょう」

実際に言葉が通じているから、絆の幻獣のお使いっていうのは信じてもらえたっぽい。

僕らは蜜蜂さんにニードルバードさんの求婚に関する事情を話した。

……すると、蜜蜂さんはブンブンと八の字ダンスを踊りながら呆れた様子で言った。

「なんともまぁ……それ、よりにもよって人の子を使者にする必要ありました? 絆の幻獣殿ならば相手が何であろうとも言葉は通じるようにできるでしょうに、当のニードルバードが来れば良いではありませんか」

溜息を吐きながらも続く八の字ダンス。

一体どんな意味があったのかはわからないけど、踊り終わった蜜蜂さんがスンと落ち着いて僕らに向き直った。

「女王陛下がお呼びです。ご案内いたしましょう、どうぞこちらへ」

途端、厳つい蜂に取り囲まれる僕等。

思わず両手を上げたら、そのままホレホレと追い立てられて枯れ木の中へご案内。