軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:占い屋営業中

俺は相棒の後ろで防壁に背中を預けてリュートを弾いているわけだが……詰所の兵士が一人、シンプルな木の器を片手にニコニコしながらやってきた。

近くまで来ると、俺の前にその木の器を置く。

……中には数枚の硬貨。

持ってきてくれた兵士は笑顔でそこにチャリンと硬貨を1枚追加して、手を振りながら去っていった。

……おひねりが来るとは思わなかった。

何事もないと暇なんだろうな。詰所って。

* * *

何人か目にやってきたのは、虎獣人……というか、二足歩行の虎だった。

頭だけ獣とかじゃない。体の骨格まで虎寄りだ。

獣人はケモ要素をどこまで強くするかをキャラメイク時点で調整できるわけだが……それを最大まで強くするとこうなる。

体の動かし方がかなり変わるからあまり人気は無いらしいが……一部のケモナーには絶大な高評価を得ているらしい。

「占いお願いします」

おお……声に喉が若干グルグル鳴ってる雰囲気の音が重なっている。

大柄で筋肉質な体格だから迫力があるな。初期装備の簡素シリーズなのがもったいない。

「……【フォーチュンクリエイト】」

霊蝶が掴むペンがサラサラと紙の上を動いている。

(『ニンジンのパイ皿。革手袋の包み焼きはウサギのとっておき』、だって)

(なんだそれ)

2つ目にしてかなり意味のわからないモノが出たな。

虎の獣人もキョトンとしたが、ハッと何かに気付いた顔をして渡された紙をしまい込んでいた。

虎は会釈して森へ去っていく。

(なんか暗号みたいだったね)

(確かに)

占いはリンゴよりもその後が気になるな。

* * *

何人か初心者っぽい相手に占いをしたりリンゴを売ったりしていると、門の前に大きな幌馬車がやって来た。

そこそこの人数が周りに集まって何かを待っているらしい。

……パーティ単位で護衛の依頼でも受けてるんだろうか。

その中の女性が三人。こっちをチラチラと気にして、リーダーっぽい一人に許可を取ったのかやって来た。

戦士っぽいのが一人、魔法使いっぽいのが一人、もう一人は……何だろう、大きなリュックを背負っているから商人系とかかもしれない。

「占いだってー」

「リアルでもあるようなやつ?」

「スキルらしいから、ゲーム的なヒントが出るんじゃない?」

面白そうだから、と商人っぽい女性がリリーを支払う。

「【フォーチュンクリエイト】」

「「「……おおー!」」」

霊蝶がペンを動かすと感嘆の声が響いた。

「なんて出た!?」

「……『赤い花々、青い花々。ひと粒落ちてるアメジスト』」

「んー? ……もしかして、昨日受けたクエストのこと?」

「待って待って、つまり第三の選択肢があるんじゃん!?」

「まだ時間あるよね? 後で考え直そー」

どうやら選択肢のあるクエストを引いているらしい。

第三の選択肢か……このゲーム、そういうのいくらでも選べるからな。選べるって事に気付いているかどうかは大きい。

気付けたならなによりだ。

「次アタシー」

紙を受け取った商人系の次は、戦士系の女性がリリーを支払う。

再び出てきた霊蝶が、紙の上にスラスラと文字を書く。

「……『風は空を飛び、水は空を泳ぎ、火は空へ舞い、大地は空へと手を伸ばす』」

「ん?」

「これ……カナちゃんが悩んでたやつじゃない?」

三人が言うには、動画で大型の敵と戦うのを見た戦士系の女性は、『空中戦が出来るようにならないとこの先厳しいのでは』と考えて、今まで使っていなかった魔法に手を出すつもりでいたらしい。

ただ、空を飛ぶなら風かと考えたものの、目に見えない風をイメージするのが難しく、スランプに陥っていたとか。

「そっかー……何の属性でも高い所に行こうと思えば行けるんだ」

「他の属性も使ってみなよ」

「しっくり来るのがあるかもよ?」

スキルの助言とは少し違う感じだが、こういうアドバイスも入るんだな。

……そうして盛り上がっているのが気になったのか。待機状態だったパーティから何人かこっちにやってきた。

占いは女性陣がやっているから、知恵の林檎ガチャを買っていく。

相棒は占いで塞がっているから、俺が演奏の手を止めて林檎の代金を受け取った。

「じゃあ最後は私の番ね」

三人目、魔法使い系の女性が前に出る。

蝶の操るガラスのペンを、彼女は熱心に見つめているようだった。

「……『蛇の庭。絡みつく緑は操り人形の糸』?」

「うーん?」

「これはちょっとわかんないかも……」

渡された紙を手に女性三人が悩んでいると、リンゴを齧っていた一人が言った。

「……蛇って、これから行く大森林の精霊じゃなかった?」

「あ、そういえば」

「じゃあもしかして、途中で襲ってくるモンスターの事かも?」

護衛クエストなら、そういう事もあるかもな。

そして馬車のパーティはここで時間切れ。

呼び戻す声に応じて、皆が馬車に戻っていく。

……が。一人、魔法使い系の女性が慌てた様子で相棒に声をかけた。

「あ、あのっ……このガラスペンって手作りですか? それともどこかで買えますか?」

相棒は、手早く店の名前を紙に書いて手渡した。

「あ、ありがとうございます! ……やった、これから行く所だ」

「シュー! 早くー!」

「はーい!」

バタバタ、ガラガラと、幌馬車は慌ただしく出発していった。