軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ユ:御招待にあずかりまして

ログインしました。

キークエストも俺達の分は無事にクリア。

その後休日の残りはのんびりと過ごして終わり。

というわけで今日は土曜日。

いよいよ天使に誘われた異次元入植者限定のお茶会の日だ。

「手土産って知恵の林檎でいいかな?」

「なんか人気あるしいいんじゃない」

相棒はとりあえず話の種にと、籠にリンゴを盛ってはインベントリにしまってすぐに取り出せるように準備している。

……何人来るかわからないからって、10個入りの籠を5つは流石に多いと思うけどな。50個て。一人一個で50人。そんな人数いたら俺は気配を消して無になるぞ。

「フリマのショッ◯ー服装備して……後は特に無いよね?」

「無いはず」

「武器は持って行く?」

「もちろん。風切羽は共有インベントリに入れたよ」

「はーい」

いくらPvPが無いとはいえ、MPKは出来る。

転移先が即モンスターハウスかもしれないし、油断はしないでおこう。

まぁ、流石に無いとは思うけど。

相棒は箒杖にフッシーとコダマ爺さんを入れた。

ジャック達は留守番だ。

俺はネビュラを連れて行く。

「そろそろ時間だよ」

「オッケー」

いつものように、転移オーブでピリオノートへ。

街の転移広場に降り立って最初に目に入ったのは……身長が一般人の倍以上あるマッチョなショッ○ーだった。

デッカ!?

なんだあれ……4メートル近くあるぞ?

アバター作成の最大身長が人魚の尾ひれ状態で3メートルとかだったはず。

筋肉とゴツイ骨格の横幅もあるからめちゃくちゃデカく見える。

……てかショッ○ースタイルって事は、俺達と同じ招待客なのか?

通りすがる人がほぼほぼ二度見していくんだが、アレと同行するのか?

(スゴーイ! よくショッ◯ー服着れたよね!)

(そこ?)

ちなみに相棒は頭から抜けているようだが、装備品は基本的に人魚だろうがドワーフだろうがフェアリーだろうがサイズフリーだ。

ただしAI任せだと雑に引き伸ばされたりするから、綺麗に整えたければ元々が種族体格に合う物を選ぶか、オーダーメイドが必要。

だからほら、横にいるフェアリーだってちゃんとショッ○ー服着て……もしかしなくても、あのフェアリーも参加者だな?

広場にいるショッ○ーは俺達を除いて4人。

デカい男と。

フェアリーと。

あとフリマで見た気がするグラマラスな女性と。

あとは種族も性別もわからない普通サイズの人。

明らかに異質な巨体込みで匿名性抜群の黒装束が一ヵ所に固まってるから物凄く人目を引いている。

……まぁリアルだって揃いの衣装を着た集団なんかいれば『何かのイベントかな?』って視線は向くから仕方ないんだけどな。

(じゃあ行こっかー)

(…………うん)

二人揃って近づくと、声バレ防止なのか軽く会釈だけされたから、同じく無言で返しておく。声変わりシロップは使ってないんだな。

……つまり、当然のように会話が無い。

お揃いで集まっておいて一言も発しないでじっと待つだけって、周りから見ても謎の集団だ。

そしてその中の約一名。性別も種族も不明の一人は、何故か俺達をガン見してくる。

気まずい空気を打ち破ったのは、遠巻きに見ていた野次馬のどよめきだった。

新たに広場に降り立ったのは、同じくショッ○ー衣装の女性。

だが、背中の羽はともかく、頭の上に輝く光の輪は隠しようがない。

デカい男と同じく匿名しきれていない天使は、こっちを見つけてやってくると、やたら達筆な文字の書かれた板を見せてきた。

『招待状を確認します』

参加者は揃って招待状を取り出し、天使に見せる。

天使はひとつ頷くと、何やらシステム操作を始めて俺達一人一人を順に指さした。

──拠点招待が届いています。受諾しますか?

パーティを組まずに誰かを拠点へ招待する時の方法だな。拠点襲撃の救援要請なんかで使うらしい。

この方法は、自分の拠点しか招待できない。他人の拠点へ勝手に招待する事はできないわけだ。

承諾する。

これで転移オーブにこの天使の拠点が一時的に登録された。

『では、各自移動をお願いします』

最初にデカイ男が消えた。

順に転移していく参加者達。

俺達も移動する。

転移した先は……広大な小麦畑だった。

どこまで続いているのか、果てが見えない。

麦穂と青空が地平線を描いていて、建物はひとつも……

……いや、建物はあった。

遠く遠くの山を見ると、白く霞んで見えるように。

あまりにも巨大で、あまりにも遠い、荘厳な白亜の神殿の柱のような物が、空に半分溶けるようにして地平のずっと向こうに建っている。

遠近感がおかしくなりそうだ。

「よ、ようこそお越しくださいました。ど、ど、どうぞこちらへ」

景色に圧倒されていると、天使が前に見た通りの腰の低さになってぺこぺこしながら先頭に立つ。

麦の海を掻き分けながら(踏むのは構わないらしい)着いて行くと、唐突に丸く石畳が敷かれた広場があって、そこに大きな丸テーブルと椅子が置かれて茶会の席が整えられていた。

やたら巨大なテーブルと椅子があるのは、デカい男用なんだろう。同じくテーブルの上に小さいテーブルと椅子が置いてあるのはフェアリー用か。

……って事は、この椅子が二つ近付けて置いてあるのが俺達だな。助かる。

「あっ」

「は、はいいっ!?」

思い出したように相棒が声を出すと、天使が飛び跳ねる勢いで驚き狼狽えた。

相棒はインベントリから籠入りの知恵の林檎を取り出して天使に持って行く。

「これ、お土産です。知恵の林檎」

「あっ、あっ、スレで見たやつっ……ありがとうございますっ」

「あ、じゃあ俺もー」

スイッと近づいたのはフェアリーだった。男のフェアリーか。

フェアリーは参加者の人数を数えると、インベントリからゴロゴロと金色の洋ナシのような果物を取り出した。

「これ、マナの果実」

「あっ、あっ、ありがとうございますっ」

「食べると一定時間最大MPが倍になるから、これは持って帰った方がいいかもしれない。皆好きな時に食べなー」

「ヒェエ~……」

土産物の時点でヤバイ。

天使がキャパオーバーしそうだ。

見かねてヘルプに入ったグラマラスショッ○ーと天使によって、ドタバタしながらもどうにか茶会の席は整えられた。

高級感のある白磁の薄いティーセット。

お茶請けにはピリオノートのNPC高級菓子店の焼き菓子が。

知恵の林檎は綺麗に切られて、一人一個分が皿に盛られて配られている。

「え、えっと……本日はお集りいただきありがとうございましたっ! お、お茶会を始めたいと思いきゃふっ!」

開催の宣言を、天使は盛大に噛んだ。