軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

キ:お針子人形を作ろう

『冒険者へのリベンジを果たすため、あの蛇さんが帰ってきた!』

「やかましいわ」

「ついに帰ってきたかぁ~」

僕と相棒はピリオ地下でのお話を終えて、自分たちの拠点に帰ってきていた。

相棒の指名クエスト『精霊との対話』はクリア済。僕の指名クエストの時もそうだったけど、魔術師団長さんからのクエストの報酬はリリーで支払われている。

報酬を貰ったら、じゃあ発生したキークエストの情報集めでもしようかって事で、拠点で休憩しつつ。ゲーム内で一晩経ったら上がってた公式サイトの動画を見たりしていた。

「……これってさぁ、僕がお花上げたから蛇さんがボスになって難易度上がったりしてないかな?」

「逆に下がってると思うけど?」

「え、そう?」

「順当に考えれば、本来戦う相手は蛇精霊だと思う」

あー……

「確かに?」

「精霊なんて何してくるかわからないから。初見の相手じゃなくなるだけでだいぶ違う」

そっかー

それならいいな。

「ありがと、好き」

「うん」

心を軽くしてもらったところで、さてどうしようかと相談する。

「すぐ行ってみる?」

「いやぁ……絶対混んでるっしょ」

「だよねー」

世間では平日昼間だって、少なくてもログインしてる人はいるもんね。

そのログインしてる人が全員新要素に飛びついてたら……まぁそれなりの混み具合にはなる。

僕らは新要素は少し様子見をするタイプなのだ。

他プレイヤーの生贄突撃がどうなるかを確認してから行きます。

「じゃあ……やりたいことあるから、ちょっと作業しようかな」

「なにするの?」

「僕らがいない時のジャックの回復を、どうにかしてあげたいなって」

「ああ、確かに」

ジャックは服が本体みたいな状態で、回復魔法やポーションで回復ができない。【裁縫】スキルで服を修復しないといけない構造。

さっきジャックが死に戻ってきた時にビックリして、僕らがいない時にどうしてたのかって訊いたら……わざわざ毎回死に戻ってたんだって!

思いつかなかった僕も悪いんだけどね。

デューは鎧だから、製作者のジャックが【鍛冶】スキルで直してあげられる。

だからジャックをどうにかしてあげる方法も用意してあげたいと思ったのだ。

「どうやって?」

「えっとね……裁縫のできる子を呼んでみようかなって」

「ほう」

* * *

相棒は自分の矢とか僕がイベントで飲んじゃったニンジンジュースとかの補充をしに自分の作業場へ。

僕は僕で、新入りを呼ぶ準備のために自分の作業場へ。

さて本日御用意したのは、毎度おなじみ 微睡(まどろみ) の木。

僕は作りたい物だけ作ってても、一応生産職なので。なんだかんだ【木工】スキルのレベルが10まで上がってる。

だからかなりテンプレートの数と種類も増えていて、その中に気になる物があるのだ。

それがこの『球体関節人形』

ロマンだよね。厨二心がくすぐられます。

【死霊魔法】でオバケに体を与えられるわけで、その体の候補に人形がある事を僕はちゃんと覚えていたのだ。いつかやりたいなーってね。

まぁ【死霊魔法】の一環として出てくるように、人形とホラーはよくある組み合わせで、ホラーが苦手な僕はビスクドールも日本人形も苦手な方なんだけど……それは結局、顔が好みじゃないってだけの話。

SNSなんかでちょいちょい見かける合成樹脂の球体関節人形? 購入じゃなくて『お迎え』するやつ。ああいう雰囲気なら怖くなかったからね。

自分好みの顔で、自分で丹精込めて作ったお人形なら、それは可愛いに決まってる。

そして人形ってことは、お洋服や小物で職業を演出したりするじゃあないですか。

だからお針子っぽい装備の人形を作れば、【裁縫】が好きな子が来てくれないかな? って考えたわけよ。

と、いうわけで作業開始。

まずはテンプレを元に、大きさを決める。

あんまり小さいと作業が大変かな。でもお人形なら膝の上に抱いたりもしたいから……そうだなー、身長1メートル……いや、もうちょい小さく、80センチくらい?

次に体のバランスを整える。

ゲーム始める時に自分のアバターを作ったみたいにして調整ができるのは良いね。

僕はロリ体型よりもスラッとした人形の方が好きだから、細身で足を長めに。

イメージは『駆け出しのお針子』

成人が早いファンタジー世界で大人の仲間入りをしたばっかりの、家のお手伝いで得意な裁縫で食べていこうとしている女の子。そういう雰囲気にしよう。

じゃあ次はメインの頭部を……

しまった。

髪の毛どうしよう。

あー、見切り発車したから何も考えてなかった!

都合よく長い毛の素材なんてインベントリに無いよねぇー……うちの羊ちゃんは羊毛どころか直で毛糸だから、球体関節人形の髪の毛には僕的にちょっとイメージが違う。ぬいぐるみ系なら有りだったんだけど。

あと目のパーツも無いや。

ちょっと見切り発車が過ぎたね。

これは街に買い物行かないとダメだわ。

(相棒、ちょっと目玉と髪の毛買いに行ってくるね)

(わかっ……なんて?)

(目玉と髪の毛買いに行ってくる)

(なんで??)

(使うからー)

(何に!?)

コントみたいなやりとりを念話でしながらピリオへ転移。露店広場へGO!

リアルが夜になったから、露店の出店量もいつもの感じ。

良い感じの素材を探してお店を見てまわる。

……今日の露店は、蛇系に有効な武器が多いね? 囮用のカエル型デコイとか売ってる店もあった。

たぶんキークエスト用かな?

そういえば、ジャックとデューにアクセサリー用意した方がいいよね。

マントとか似合いそう。今度シイタケさんに相談してみようか。

そんな感じに見ていると、ひとつの素材が目に留まった。

【クリスタルスパイダーの縦糸】…品質★★★★

クリスタルスパイダーから採取した、べたついていない糸。

水晶が含まれた糸はとても丈夫かつ滑らかで美しい。

凄い綺麗な糸!

ついつい見惚れてるのに気付いた店員のお兄さんが自慢気に頷きながら説明してくれた。

「いいでしょコレ。蜘蛛は苦手な人多いですけど、綺麗な糸ってなれば話は別ですからね! ……はい、いつもの量ですね。まいどあり!」

蜘蛛の糸はかなり在庫が積まれていて、僕に説明している横でそれなりの量が売れていった。

そうだね、僕も蜘蛛は本当にダメなタイプだけど……こんなに綺麗な糸なら考えちゃうよ。シルクだって蚕が吐いた糸だしね。

「すごいいっぱい量あるんですね」

「うちの開拓地の近くに群生してるんですよー、良い所引きました!」

「おおー、それはラッキー」

「装備にしてももちろん良いんですけど。これで作った布とかレースがNPCに人気高いんで、贈り物とかお祝いにお勧めです」

なるほど確かに高級品っぽい。

ドレスとかすごく良い物できそうだし、テーブルクロスにすれば一流レストランの雰囲気が出ること間違いなし。

なんて考えてる横で、またひと山職人っぽい人に売れていく。

……もしかして、蜘蛛の糸を使ったら蜘蛛のオバケが来るかな?

それは、有りかもしれない。

蜘蛛は機織りが得意って童話やファンタジーの定番だから。このゲームは機織りも【裁縫】スキルに分類されるし、ちょうどいいのでは?

僕は蜘蛛の足の多さと動きが苦手なだけだから。見た目がお人形なら別に問題ないし。

「じゃあこれを、布ひと巻き織れる分ください」

「まいどあり!」

そこそこお高いリリーを払ってお買い上げ。

人形の髪には絶対過剰な量だけどね、逆にちょっとだけ買ったらそれはそれで何に使うの? ってなるし。それに綺麗だし、それこそ呼んだ子が使うかもしれないし。

満足して蜘蛛糸屋さんを後にする。

後は目。

ちょうどよく、流行ってるのか人だかりが出来てる、お人形の店があった。店員さんと一緒に、動いて喋ってるお人形がいる。

パーツだけの販売もしてるみたいで、目だけ買っていく人も結構いるから、これで身バレする事はなさそうかな。

近づいて、色を吟味。

どの色もまんべんなく売れてるみたいだから、好きに選べるね。

そうだなぁ~

髪は蜘蛛の糸を森の葉っぱで染めるつもりだから、青緑色になる。

じゃあ目は……うん、濃い緑色をお買い上げ。あんまり派手にする気はないのだ。

よし、これで必要なパーツは揃ったぞー!

ついでにお洋服に使えそうなネイビーカラーの布も適当な店で購入。

あとは……帰ってジャックに小さな鋏を作ってもらわないとね。