軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

増える円卓

引きこもりハウスは湖畔に建つ。その近くには屋根付きの広い休憩所があり、中央には大きな丸いテーブルが置かれていた。

円卓を囲むは、シャルロッテの他に既存メンバーが三名。そこに新たなる〝騎士〟が加わった。

「と、いうわけでして、ティアリエッタ・ルセイヤンネル教授を我がキャメロットの新たなる騎士として正式にお招きしました!」

「やあやあ、どうも。名前は長いからティアで構わないよ。よろしくー」

小躯が立ち上がると、拍手とともに既存メンバーが口を開いた。

「もろもろ不安はあるが、シャルロッテの推薦なら認めざるを得まい」とフレイ。

「シャルロッテ様が認めたなら仕方がない」とリザ。

「まったくの初対面なのでコメントは控えておきましょう」とはジョニー。

「まったく歓迎されてない!?」

がびーんとなるティアリエッタの耳に、「よろしく」と休憩所の外から野太い声が。

見れば、巨大な石人が体育座りをしていた。ギガンである。頭の上ではメルこと元魔人のお子様メルキュメーネスがきゃっきゃと跳ねていた。

「聞いてはいたけど、ホントに召喚獣がしゃべっているのだね。いや、声に関してはハルト君の魔法によるものだろうけど、そもそも召喚獣が、言語コミュニケーションが取れるほど高い知能を有していたとは驚きだ。専門は違うけどすごく興味深い!」

「はっはっは、お噂どおり好奇心旺盛な方ですね。今にも我らを解剖しそうに目を輝かせておいでだ。かんべんしてください」

前のめりになるティアリエッタに、のけぞって歯をカチカチ鳴らすジョニー。たまらないとばかりに話題を変えにかかる。

「新たなる騎士は貴女だけではありませんからね。さあシャルロッテ様、続けてどうぞ」

「そうでした。では、ご挨拶の準備はよろしいですか?」

微笑みを向ける先、ティアリエッタの横に座るのは絶賛混乱中のイリスフィリアだった。

研究棟で調べ物をしていたら、シャルロッテに何の説明もなく連れ出されたのだ。

(この流れはマズい……)

彼女は元魔王。

転生の秘術を使って人に生まれ変わったものの、それは秘密にしている。

魔族に対する嫌悪の感情を人の側から払拭しようと決意した。人はもちろん、かつての同胞にも理由を教えず、独り奮闘している彼女だった。

しかし目の前にいるのは旧知の魔族フレイ。自己紹介で名を告げれば、勘の良くない彼女でも気づかれる危険はあった。

(すでに略称では知られているのだから、多少無理にでもそれで押し通せば……)

などと考えていたものの。

「フレイやリザは知っていますよね。兄上さまのご学友、イリスフィリアさんです!」

「「「!?」」」

当のイリスフィリアのみならず、その名に心当たりがありまくりなフレイとリザも驚いた。

(魔王と同じ名だと!? そういえばこの女、魔力が人ならざる気配を……)

(魔王と、同じ名前? たしかにこの人、魔力が人と違う感じがする……)

じーっと見つめられて居たたまれない中、イリスフィリアは立ち上がる。

「えぇっと……、その……」

高位魔族の二人には、きっと魔力の質が人とは違うと勘づかれている。

イリスフィリアは覚悟を決めて、洗いざらいぶちまけようとしたものの。

「フレイにリザ、どうかしたのですか?」

シャルロッテがきょとんとして尋ねると、フレイは険しい表情を緩めた。

「いや、失礼したな。古い馴染みと同じ名だったので驚いてしまった」

「古い馴染み……魔族さんのお友だちですか?」

「うむ。偶然とはあるものだな。しかしまあ、あやつはすでに死んでいる。そして……ふふふ」

なるほどなあ、とリザも納得顔でうなずく。

「あ、意味深な笑い。なんですか? また魔族シークレットですか? 教えてください!」

「うん、ワタシも興味あるね。まさかその死んだ魔族が生まれ変わったのがイリス君、とでも言うのかい?」

びくっとイリスフィリアの肩が跳ねる。

「でも、魔族さんが人に生まれ変わったりするものでしょうか?」

「まあ、なくはないだろうけど、可能性は低いね。転生の秘術なんて高度な魔法を使えるのなんて、魔族の中でも魔王くらいなものだろうし」

またもびくっとするイリスフィリア。

「ほう? さすがはハルト様が認めた研究者だな。いいところをついてくる」

冷や汗が止まらない。

フレイは腕を組み、しばし考えてのち、カッと目を見開いた。

「新参の前だが、いい頃合いかもしれん。実はな、イリスフィリアとはかつての魔王の名であり、その魔王が死して転生したのが――」

一同がゴクリと喉を鳴らす(ジョニーは歯を鳴らす)中、フレイが高らかに告げた。

「ハルト様なのだ!」

「なんですって!?」

「なんだってー!?」

人サイドのシャルロッテとティアリエッタが驚き叫ぶ。

(…………は?)

一方のイリスフィリアは疑問符が頭の中で踊りまくっていた。

「兄上さまが! 魔王さまの生まれ変わり!? 正体を隠して敵対勢力に身を投じ、正義を執行して世を正さんとするその姿勢、さすがは兄上さまですね!」

「うむ。かつて魔王は魔族の楽園を作らんとしていた。しかしハルト様はそれを昇華し、人と魔が手を取り合って暮らす世界を目指しておられる。そのために、人の側から人の意識を変えようとしているのだ」

力説するフレイ。目を輝かせて小躍りするシャルロッテ。リザとジョニーは大きくうなずき、ギガンとメルは寝ている。

(間違ってはいない……いないのだけど……)

根本的な部分で大きく踏み外している、とイリスフィリアは肩を落とした。

(でも、そうか。ハルトもボクと同じ考えを持っていたのか)

嬉しくなって顔を綻ばせてはいるが、当然ハルトにその気はない。フレイの妄想である。

(あのハルト君が? そんな殊勝なことを?)

唯一、ティアリエッタだけが現実を見ていたが、面白いので何も言わないでおいた。

そして新事実(?)が示されたことで、シャルロッテの妄想も止まらない。

「これもう覇王ルートに突入しちゃってますね。こうしてはいられません。今日は新メンバーの紹介だけにするつもりでしたけど、早急に次なる一手をわたくしたちも打ちませんと」

シャルロッテは小さなこぶしを振り上げる。

「まずは学院を牛耳る裏生徒会に接触し、その全貌をつかみましょう。そして彼らを操る闇の巨大組織に迫るのです!」

おおーっ! と魔族組が意気軒昂に応じるも。

「えっ、いきなりなんの話?」

ティアリエッタとイリスフィリアは困惑するのだった――。