軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

初っ端からやらかしちゃいました?

オリンピウス遺跡は王都から南東に馬車をかっ飛ばして一時間弱の場所にあった。

森を抜けて丘陵地帯の谷間を奥へ行った先。

断崖絶壁を背に朽ちた遺跡が現れた。風雨に削られた大きな柱がそこかしこに点在し、中には倒れているのもある。ギリシャとかにありそうな感じ。

崖のすぐ近くには宮殿みたいな建物が鎮座して、そこはぱっと見では小ぎれいだった。

あそこの地下に迷宮じみたダンジョンがあるのだ。

遺跡には送り迎えしてくれるそうだが、一度現地に赴いたならもう用はない。夕方迎えに来ると言われたのを丁重に断った。

馬車を見送り、さっそく『どこまでもドア』を設置したく思うのだが。

「なんでお前がおるねん?」

「えっ?」

何を今さら?てな表情をするのはイリスフィリア。そう、イリスだ。いつもの黒いパンツルックに加えて両手に頑強そうな籠手を嵌めている。殴りマジですねわかります。

ここでほわほわほわわんと回想を入れるまでもない。

イリスはどこからか俺が遺跡探索の試験を受けると聞き、俺を通さず学院長に直で掛け合って参加することになったそうな。

シャルロッテを学院長に引き合わせに行ったら『イリスフィリアさんもパーティーに加えてください』と一方的に通達され、文句を返す間もなくシャルが小躍りして喜んだのでうやむやのまま今に至る。

「やはりボクは邪魔だろうか?」

うん、ものすごく邪魔です。

「そんなことはありません。イリスさんがいてくれれば心強いです」

でもシャルはなぜかすごく嬉しそう。ちなみに魔法少女コスで気合は十分。

こいつには大いに活躍してもらわなければならないのだが、イリスが側にいると非常にやりにくい。

「とりま移動手段を作っておくか」

俺が目で合図すると、シャルが魔法のステッキっぽいのを振り回した。

べつにシャルが魔法を使うわけではなく、俺がこっそり結界魔法で石柱に扉を作った。

「今、シャルロッテは魔法を使ったように見えなかったのだけど……」

「そうか? 見事なまでの美しい魔力の奔流を俺は感じたが」

「そう、なのか……?」

こんなんでごまかし続けられるのか不安だ。

まあでも、戦力的には足手まといになる奴じゃない。フレイたちに比べれば見劣りするけど、つい最近とある事情で現在魔法レベルが【23】にまで跳ね上がっているからね。学院でもライアスを超えてトップクラスに躍り出たのだ。

それはもう学院中を引っくり返すほどの大騒ぎになったのだがそれはそれ。

学院長にしてみればイリスの実力を測るうえでもこの遺跡探索への同行はもってこいというわけなのだろう。

実は俺的にもちょい興味がある。

こいつを実験台にしていろいろ試せそうな予感がしているのだ。

『やっほー。聞こえているかな? もう送迎係は帰ったよね?』

どこからともなく声がする。ぴこんと虚空に画面が現れてロリっ子ちびメガネさんを映し出した。

「ティアリエッタ教授、ご助言をよろしくお願いします」

『任せておきたまえ。これまでの探索記録はすべて頭に入っているからね。遺跡内の魔物の分布はなぜか発見当時から変わらない。うまく避けていけば最深部まではあっと言う間――』

得意げになだらかな胸を張るティア教授の言葉の途中で。

ゴゴゴゴッ、と。

地面が震動した。地震か? でもなんというか、地下深くを巨大な何かが進んでいるような――。

もこっと地面が盛り上がる。

直後にそこが弾け飛んだ。地下で爆発でも起こったかのように土や床石が飛び散り、

――キュシャーッ!

なんかでかいのが出てきたぞ?

芋虫を長くしたようなフォルムに、先端はヤツメウナギみたいな円形の口になっている。歯が無数に蠢いて涎が地面に落ちるとしゅわしゅわ溶けてるキモッ!

にょろりと地上に出ている部分だけで二十メートルを超す。真上から見下ろされるのは気分良くないな。

「兄上さま! 巨大な魔物です!」

「ああ、見たまんまだな」

種類は何かよくわからん。辺境では見たことない種類だ。

でかいし、キモイ。

見た目的にはむちゃくちゃ強そうなんだけど。

「シャルが出るまでもないよ」

こいつには大活躍してもらわなくてはならないのだが、俺はあえて妹を制して一歩前に出た。

遺跡探索の本番は建物の中――さらに言えば地下迷宮の奥深くだ。

そこには閃光姫たちでも苦戦するほどの、とても強い魔物がうようよしているらしい。

しかし地上部分に現れる魔物なんて高が知れている。

あんな見てくれと大きさをしているが、ゴブリン程度の強さに違いないのだ。

シャルを活躍させるのもそうだけど、俺もそこそこの戦果を叩きだしておかなければならない。

地上に出てくる程度の魔物なら倒しても大した手柄にはならないだろう。

俺はホルスターから魔法銃を抜く。

あの手の魔物は特徴的な部分が弱点に違いない。だから無数の歯がうにょうにょしている口に狙いを定めた。

出力はゴブリンを倒す程度でいいかな。ゴブリンと戦ったことないけど。

でも、でかいな。

弱いなら軽い威力でも貫通するはずだが、ゴブリンの鼻に針を刺しても倒せるわけないし、頭を吹っ飛ばすくらいはしておくか。

引き金を引いた。

同時に二メートル大の球形結界を作り、あたかもエネルギー弾を撃ち放ったかのような演出で巨大魔物の口へ飛ばす。

直進だと芸がないのでいくつか魔法陣を虚空に浮かべ、そこをうねうね通過して目標にぶち当たった感じにしてみた。

おおっ、我ながら超カッコいい!

ドッカーンと大口もろとも魔物の先っぽが吹き飛ぶ。

紫色の体液を噴き出しながら長い体がずずぅんと倒れた。マジでキモイ。体全部を消し去るくらいでもよかったかな。

「やっぱ見掛け倒しだったなあ。よし、そんじゃあ先に進――ん?」

振り返ると、イリスもシャルもあんぐりと口を開けて放心していた。どしたの?

「い、今のは『ヒュージ・ロックイーター』だった。しかもかなりの大型種だ。それを、一撃で……」

それって有名な魔物なのか?

『知らないみたいだから解説しておくと、本来は最深部にいるべき強力な魔物だ。通常の大きさでも単騎でまともに戦うには魔法レベルが最低40はいるだろうね。閃光姫でも聖武具のひとつ『光刃の聖剣』がなければ苦戦する相手だよ』

「えっ、なんでそんなのが地上に出てきたんですか?」

『さあ? たまたま迷ったのかもしれないけど……なんであれ、一撃で倒したキミの実力はもはやワタシには測れないよ』

んん? それってつまり――。

「さすがは兄上さま! すごいです!」

ああ、俺はまた初っ端からやらかしてしまったようだ――。