軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

遺跡探索パーティー、決定

久しぶりに我が安らぎの地へ戻り、みんなに事情を説明したところ。

「私が行かずして誰がハルト様に並び立てようか」とフレイは行く気満々。

「わたしもお供したい。この間は暴れ足りなかったから」とリザは意外にも武闘派なセリフ。

「わたくしも! 行きたいです!」とシャルは両手を挙げてぴょんぴょんする。可愛い。

「では自分も立候補しましょう。ふふ、腕が鳴りますね。こうポキポキと。自分スケルトンなので!」

「おれも、行く」

「いやジョニーとギガンはダメっしょ」

「なにゆえ!?」

「しゅん……」

見た目魔族すぎるからね。ジョニーは全身鎧でも着せとけばいいけど、ギガンはサイズからして人の規格を外れてますので。

「シャルもダメだぞ? 何日も家を離れるのは父さんたちが許さないだろうし」

しょんぼりするシャルもまた可愛い。

「あと、地下のダンジョンだからフレイやリザは元の姿で戦うのは難しいかもだな」

フレイはまだしも、巨大ドラゴンだと地下で埋まってしまいそう。

「人型であろうとそこらの魔物に後れは取りません」

「わたしも平気」

ふむ。まあフレイの戦闘力は折り紙付きだし、リザの魔法力があれば大抵はどうにかなりそうだ。

やっぱりこの二人は外せないよな。

「俺も行くのか?」

隣でぼんやりしていた俺のそっくりさんが尋ねてくる。俺のコピー、ハルトCだ。

「当然だ。お前はハルト・ゼンフィスとしてそこそこの活躍を見せなければならない」

「まあ、 本体(おまえ) が守ってくれるなら安心か。頼むぜ俺!」

俺に頼りきるつもりだな。趣旨わかってるよな? 心配だ。

「人数的には四人で妥当なとこか。あとは通信魔法使ってティア教授にいろいろアドバイスをもらえれば完璧だ」

人選を終えたところで、外部の誰かをパーティーメンバーにする場合は事前に学院長に紹介しろとこっそり言われていたのでフレイとリザを連れ、俺はシヴァになって学院長室へ赴いたわけだが。

「残念ですが、魔族は認められません」

あーれー?

フレイもリザも耳や角や尻尾を隠しているんですけど?

「両名ともにゼンフィス卿の使用人として働いているとの情報は得ています。厳密にはハーフであるとか」

あー、そうね。調べればすぐわかっちゃうか。てか調べられてたのか。

「その特徴を隠している方法は不明ですけれど、人の社会で余計な波風を立てない配慮であると理解しています。ですが――」

学院長はきれいなおメメを半眼にして告げる。

「この場で隠し通そうなどと考えていたのではありませんよね?」

ぞわり。

この人は、不正や嘘を絶対許さないウーマンである。

お前どうすんだよ!? てな感じで俺を見る俺(のコピー)。

俺はシヴァモードで冷静に返す。

「ご推察のとおり余計な騒ぎを起こさないために隠している。俺がな。今日はアレだ、たまたま忘れていた」

「そうですか。ならばこれ以上は何も言いません。話を戻しましょう」

間髪容れずにハルトCが叫ぶ。

「魔族差別だ! 人と魔の争いはとっくに終わってるのにそんなだから、世界は平和にならないんですよ!」

いいぞ。ここは世にはびこる偏見を正す感じで主語を大きくし、煙に巻くのだ。

「耳の痛い話ですね」

おおっ、学院長がしゅんとうな垂れたぞ。

「しかし人の意識は一朝一夕で変えられるものではありません。貴方がた若い世代でじっくり解きほぐしてくださることを期待します」

にっこり微笑むと、すぐさま真顔になった。

「現状では『魔族の助けがあったなら無効である』との難癖を受ける可能性があります。たとえ先生がたや私が納得したとしても、ここは王立学院ですから貴族院の影響もあるのですよ」

ほうほう。となると、ですよ?

みんなの注目が シヴァ(おれ) に集まる。

ハルトCが言った。

「この正体不明の黒い男はどうなんでしょうか?」

「難癖は……付けられるでしょうね。正体を明かし、誰もが納得できる人物であれば問題はないのですけれど……」

じっと見つめられても正体は明かせません。

「逆に問うが、仮にゴルド・ゼンフィスや閃光姫をパーティーに入れても同様に難癖が付けられるのではないのか?」

「どうしてですか? 彼らは一度失敗しているのですよ?」

しれっと言い放つこの女、わりと怖いね。

「以上を踏まえて人選をやり直してください」

もはや何も言い返せず、フレイたちをいったん帰して俺は――。

「助けてティアえも~ん!」

シヴァモードを解除してティア教授に泣きついた。

「なるほどねえ。学院長に呼び出されてからワタシにはなんの音沙汰もなく独断で突き進んでそのザマってわけかあ」

ティア教授は俺をずびしっと指差して、

「ザマァ!」

ぐぬぬぅ、マジムカつく。

「ま、イジメるのは後回しだ。シヴァ君が使えないのは痛いけど想定の範囲内でもある。これはいよいよあの女に目を付けられた証左だね」

「あの女?」

「学院長さ。アレは生粋の教育者でね。誇張なく 病的に(・・・) 『人を育てる』ことに固執している。特に大好物なのが『実力はあるがやんちゃな子』だ」

そういうのを自分の手で更生させて世に送り出すのを至上の喜びとする迷惑な人らしい。

「厄介なのは彼女自身がそれに無自覚なことだ。だから無理難題を押しつけても『この子なら絶対にやり遂げる』と信じて疑っていない。で、できなかったら『私がきちんと育てなければ』と執念を燃やす。最悪だろう?」

なんとなくだが、経験者が語っているように感じた。

「それ、最初に言ってくださいよ」

「言ったじゃないか。『真面目で勤勉な生徒を演じきれ』とね。それで問題は回避されたはずだったのさ」

「下手は打ってないと思う」キリッ。

「いやあ、キミからにじみ出る『ダメな子』オーラは消し去れなかったんじゃないかなあ?」

対人コミュニケーション能力が著しく低い俺には難易度が高かったのか……。初めから負け戦じゃないか。

「そうは言っても実力が高く評価されているのも事実だ。断言するけど、キミならこの難題をこなすのは可能だ。いや、容易だ。キミはどうにも自己評価が低いけど、もはや魔法レベルがどうとかは考えないほうがいい」

「まあ、探し物くらいならやりようはありますよ」

「しれっと言い放てるのが恐ろしいところではあるのだけど……まあいいか。キミの懸念は『ハルト・ゼンフィスがシヴァと同等の力を持っていて、ともすれば同一人物であると疑われること』だろう?」

「話が早くて助かります」

「だったら最初にワタシのところへ来ればよかったのに……」

ぷくっと頬を膨らませるロリっこメガネ教授。

俺は過去に囚われない男。そういうことにしといてほしい。

「対策はある。というかひとつしかない」

むむむっと俺が期待に満ち満ちた瞳で見つめると、ティア教授はちょっと頬を赤らめた。

「要するに『閃光姫よりすごい実力者』がキミのパートナーになることだ」

「そんな人っています?」

「実際にはいない」

なんだよそれ! と言いかけたが、ん? それってもしかして……。

「気づいたようだね。そう、とてつもない 潜在能力(ポテンシャル) を秘め、『ああ、この子ならこれくらいやっても不思議はないな』と思わせられる人物。すなわち――」

俺は先んじて続く名を告げる。

「シャルロッテかあ……」

ティア教授はシャルの最大魔法レベルを知っている。ヴァイス・オウルとしてティア教授と話をしているときに誘導尋問に引っかかったシャルがぽろっとしゃべっちゃったのだ。

「でもあいつの最大魔法レベルはまだ秘密なんですけど」

「いつかは公にすべきものだよ。むしろ今のうちに発表してこの学院に通わせればいいじゃないか。そのほうがキミもご両親も安心できるだろう?」

まあ、たしかに。本人もめちゃくちゃ喜ぶと思う。

いや、でもなあ……妹を危険な目に遭わせるのは兄としては絶対に避けたい。

「とまあこんな感じで、環境は整えておいた。あとはキミの説得次第だよ、 シャルロッテ君(・・・・・・・) 」

「は?」

ティア教授がにんまりすると、すぐよこに板状結界が現れて。

『はい、ありがとうございます、ティアリエッタ教授!』

我が妹が映し出されたではないか。

「どういうこと!?」

「ハルト君がここへやってくる間にリザ君が彼女に状況を伝えてね。『兄上さまを助けたいので協力してほしい』といろいろ話してくれたのさ。ワタシも彼女の想いに感銘を受け、シヴァの正体を知っていると打ち明けた」

そうしてシャル・ティア教授同盟は即座に結ばれたそうな。

「ダメダメ。いろいろ面倒なことになるんだから」

『いいえ。兄上さまが古代魔法の研究に打ち込めるためなら、わたくしはどのような苦難も厭いません』

俺、引きこもりたいだけなんだけどね。

「いや、そこはぶっちゃけたほうがいいよ?」

ティア教授の謎発言を受け、シャルは画面の中でもじもじすると。

『もちろん今の言葉も本心ではあるのですけれど、わたくし、兄上さまと同じ学び舎に通いたいなあ、って。えへへ……』

なにこの可愛い生き物。

『その可能性がわずかにでもあるのなら! わたくしなんでもやっちゃいます。具体的にはすでに母上さまの許可も取り付けました!』

行動早っ!

『アレとかコレとかいろいろ秘密にして心苦しかったのですけれど、母上さまは『この機を逃さないように』とよくわからないことを真顔で言われました』

俺も言ってる意味がよくわからん。

しかし母さんが陥落したなら父さんが反対できるとも思えない。

本気になった母さんは閃光姫よりも強いのだ。戦闘力ではなく精神力的な意味で。

なし崩し感ありありだが、やるからにはシャルを全力で守りつつ、こいつの実力を世間に知らしめてやろう。

ぶっちゃけ本人は無自覚だが、シャルはとてもすごいのだ。

かつて父さんに言われたことを思い出す。

シャルはいずれ国を動かす〝器〟――女王にふさわしいとかなんとか(うろ覚え)。

つまりシャルはクズ王や腹黒王妃を押し退け、この国の女王になる少女なのだ。

その公式デビュー戦には打ってつけか。

「じゃあ、そうするか」

『はい!』

こうなったら俺の引きこもりライフの実現に加え、シャルの王道を整備してやろうじゃないか。

これぞ一石二鳥である――。