軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

魔人をゲットだぜ

世の中すごい奴がいたもんだ。

こいつなんか企んでるんちゃうの? とギーゼロッテの後を付けてみれば、高級ホテルで男と密会しているではないか。

すわ不倫か!? 家政婦じゃないけど俺は見た! とかドキドキしていたら、相手の男がなんだか妙だ。

見えない。

俺の改良型『ミージャの水晶』でもそいつの魔法レベルや属性がまったくもって。

しかもその部屋の周囲には結界が張ってあり、これがまた見事なもので隙間がまったくない。壊せそうだがそれでは相手に気づかれてしまう。

仕方なく外から聴力全開で盗み聞きしていたものの、断片的な情報しか得られなかった。

どうやら国王の命を狙っていて、『革命』とやらを今日実行するのだとか。ついでにティア教授まで拉致されそう。

一大事ですやん?

さてどうすんべ、と部屋に残ったギーゼロッテには監視用の結界を置いて放置。

俺は男の動向を窺うことにした。

ただ、男がメイドさんと出かけてから『おや?』と首をひねる。

二人の会話は小さすぎて把握できなかった。そうこうするうちメイドさんは翼が生えて飛んでいく。すると結界も彼女と一緒に空の上。どうやら男よりメイドさんのが偉そうなので、メイドさんに狙いを絞って後を付けてみた。

詳細は省くが、なんやかやあって逃げられてしまった。

いちおう戦利品は手に入れたが、深追いしている間に革命とやらが始まったら大変なので仕方なく俺は王都に戻る。

でもってあっちこっち動き回って、シャルたちの邪魔をしないよう陰ながら手を回し今に至るというわけだ。

王都の上空。

俺は周囲にいくつもの板状結界を浮かべて状況を見守る。もちろんただ見ているだけでなく、必要に応じて仕込んでいた各種結界を発動していた。

「リザの氷の壁、ちょっと強度が足りなくない? 念のため補強しとくか」

とか。

「シャルは楽しそうだなあ。でもジョニーたちを呼ぶの間に合うかな? こっちも念のため魔物が出てくるのを結界でちょちょい、と……」

エルダー・グールって言うんですか? そいつらが這い出てくるのを透明結界で押さえながら時間を稼ぐ。

「フレイは……さすがに瞬殺か。ふむふむ、 学院(あっち) の助っ人に行くのね。その姿で? 街中を疾走するの? まあ今さらだけど、目撃者は少ないほうがいいよな」

買い物だのお仕事帰りだののみなさんの目を誤魔化すための結界を飛ばしまくる。

「ライアスけっこうやるじゃん。お姉ちゃんもイリスも。でもさすがに数が多いよなあ」

学院のほうは妙な邪魔が入ったりで魔法術式が完全に発動。破壊もままならず、一番の危険地帯となった。

言い訳をしておくと、ライアスとマリアンヌ姉ちゃんを狙った謎部隊がいたので、そいつらを遠くから一掃する作業で一手遅れてしまったのだ。俺の体はひとつ。仕方ないね。

ただまあ、このままだと誰かが噛みつかれてしまいかねない。

だからといって、 黒い戦士(おれ) がさっそうと現れて彼らを助けるのは憚られる。せっかくシャルたちががんばっているのに水を差したくなかった。

気づかれないようこっそりと。

ライアスの死角から近寄るエルダー・グールを透明結界で転ばせる。マリアンヌお姉ちゃんが支援魔法を唱える時間を稼ぐべく、正面から襲いかかってくる魔物さんを粘性結界で動きを鈍らせた。気づいたイリスがそいつを蹴り飛ばす。

なるほどねえ。

本気出して必死な状態の彼らはこんな感じなんだ。

邪魔したくない思いとは別に、学院でトップクラスの連中の強さを正確に観察する好機だと俺は考えていた。

眺めていて、思う。

「学生のレベルってこんなもんか」

ぶっちゃけあの三人が相手なら、正面からどころか奇襲されても俺でも楽に対応できると感じる。

どうせなら警備兵の本気も見たかったな。

リザやフレイとどのくらい力量差があるのか知りたい。

「おっと。コピーが到着か。魔法銃の弾を補充しとくかね」

うまくティア教授を誘導したおかげでライアスたちと合流させられた。あっちこっち分散すると見逃しちゃいそうで嫌だったんだよね。

「フレイも来たか。リザとシャルたちはもう心配ないし、あとは――」

俺は振り返って告げる。

「お前だけだな」

「……」

そこには、わなわな震えて俺を睨みつける男が一人。

バル・アゴスとかいう貴族のイケメンだ。でもってこいつも魔法レベル他、実力が測れない。

真正面からは危険すぎる。

ので、文字通りこの辺りで高みの見物をしていたこいつを、俺は背後からこっそり近づいて襲いかかった。

ザ・不意打ちである。

特に結界とか張ってなかったので気づかれず、首と腰と両の手首足首に輪っか型の拘束用結界を付けてとっ捕まえたわけだ。

もう一人の女より楽ちんだったな。

てかこいつ、実は弱いんじゃね?

「なんか言ってよ。捕まえてからずっとだんまりだよね?」

黙秘権ってやつですか? そんなのこの世界にあるか知らんけど。

俺はどうしようかなっと考えながら、手にした モノ(・・) で自分を扇ぐ。

「……メルキュメーネスは、どうした?」

おっ? ようやくしゃべった。

「誰? ああ、これの持ち主か」

俺は扇ぐのを止める。手にしているのはコウモリのみたいな黒い翼だ。例の女から引きちぎった。

けっきょく逃げられてしまったのだが正直に答える意味はない。

「これがここにあるんだ。察しろよ」

アゴスはギリと奥歯を噛む。

「魔神より生まれしメルキュメーネスを……。やはり貴様、〝魔人〟なのか」

なんじゃそりゃ? 初めて聞くワードですけど?

「どこの〝魔神〟から生まれし者だ? それとも私のように人から魔人に進化したのか?」

いやだから、何言ってんの? この人。

「ふっ、だんまりか。しかし我が 主(しゅ) 魔神ルシファイラ復活の邪魔をする勢力などそうはいない。想像はつく」

ふむふむ。勝手にくっちゃべってくれた話をまとめると。

魔神とかいう神様的な何かがいて、こいつらはそれを復活させようとしている。で、魔人は魔神から生まれるか、人がそうなるかのどちらからしい。ようわからんな。

「く、くくくっ。だが残念だったな。貴様はうまく邪魔したと考えているのだろうが、革命はすでに成された。初手でジルク・オルテアス国王を殺害した時点でな。のちの騒ぎは余興のようなものだ。ゆえに貴様が何をしたところで――」

「ん? 国王は生きてるけど?」

「――ぇ?」

「だから、国王は生きてるよ。お前らとギーゼロッテが密会してたのをがんばって盗み聞きしてたからな。王宮でなんか会談してるときに殺すつもりだったんだろ?」

なので俺は女魔人とのすったもんだのあと、最初にその会談の場に向かった。

すると明らかに人ではない奴が紛れていた。魔物とも魔族とも雰囲気が違っていたので、とりあえずそいつ以外の参加者にはこっそり防御用の結界を張っておいたのだ。

で、その何かは突然自爆した。

でも俺の結界で守られた人たちはみんな無事だ。今も王宮内の別室に移動してあたふたしていらっしゃる。

俺の結界だけじゃ足りなかったかもしれないが、王様や貴族の重鎮さんたちなら自ら防御系の魔法や礼装で身を固めているだろう。

なので無傷余裕でした。

みなさんがお元気な姿を映像で見せると、

「ば、バカな! あのホムンクルスに施した爆裂魔法は魔法防御を突破する術式も施してあった。王家が持つ最高クラスの防御礼装でも破壊し得る強力なものだ。それを、なぜ!」

そうなの? 逆にただの結界には無意味だったんじゃない?

「てかホムンクルスって何? あの人か何かようわからん奴か?」

「精巧に人を模したアレを判別できるだと? 貴様いったい……」

てことは俺のコピーアンドロイドみたいなもんかな? たしかに雰囲気はよく似ていた。俺のコピーは魔力がまったくないが、ホムンクルスのほうはそこそこあった気がする。

……もしかして、コピーにも魔力を付与して魔法が使えるようになったりするのかも? 今度試してみよう。

それはそれとして。

「さて、お前にはいろいろ話してもらう。魔神だの魔人だの、復活とかその他もろもろ目的とかな」

アゴスはさあっと青くなる。

「い、言えば、見逃してくれるのか……?」

怯えながらもどこか期待に染まった瞳だ。

たいそうなことをやらかしておきながら面の皮が厚い奴だな。

「ああ、いいよ。俺も情報が欲しいだけだからな」

元より すぐ(・・) 殺すつもりはなかった。なにせ得体のしれない連中だ。魔法レベルと属性がわからんのでは今後また似たようなのが現れたときに困る。

だからこいつの体をいじくり回し、強さを測定するための 実験体に(・・・・) なってもらわなくちゃいけないのだ。

アゴスはすこしだけ安堵したような表情になる。うっすら笑みまで浮かべていた。

なんとなくだけど『隙をついて逃げ出してやるぜバーカバーカ』とか考えてそう。

ので、先手を打った。

「ひっ!? な、なんだこれは!? 体が、私の体がバラバラに!」

両腕と両足を切断。胴体も腰から二つに分けた。もちろん首も刎ね飛ばす。けれどそれらすべては つながったまま(・・・・・・・) だ。

ギーゼロッテの首にやったアレ。

俺はアゴスの髪をむんずとつかみ、残りのパーツは謎時空へ隠した。

「私の、体は、どこへ……?」

「安心しろ。ちゃんと生きてるよ。だから俺とは友好的に頼むぞ?」

「は、はひ……」

アゴスは歯をカチカチ鳴らして返事をした。二十歳くらい年取ったみたいに老けこんでしまったな。

「さて、事後処理をちゃっちゃとやっちゃうかね」

シャルとかリザとかフレイとか面が割れちゃったからな。あいつとかあいつに釘を刺しておかないと。

俺はアゴスの頭を持って、王宮へと飛んでいくのだった――。