軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

はい、真打の登場です!

ユリヤの先制攻撃に対し、試験官たちは自動追尾する矢で応戦した。

だが矢による攻撃はことごとく、牡丹にもわからない不思議な力で防がれたのだ。

仕切り直しはシャルロッテのターンで始まる。

「それではわたくしたちも続きましょう。マリアンヌさま、わたくしにスキルをかけてください!」

こくりとうなずき、マリアンヌは意識をシャルロッテへ。

スキルの発動自体は簡単だ。

念じれば行える。スキルによって様々な手法・段階はあるものの、マリアンヌの固有スキル『 女王の激励(ロイヤル・インスパイア) 』は対象を定めるだけで事足りた。

ほんのりと、シャルの小躯が光を帯びる。

「えっと、どうですか? シャルちゃん」

「……はい、なんだか力がみなぎってきたりこなかったりな感じがしますね。具体的にはステータスが二割上昇しています!」

「それだけ……ですか?」

「ぃ、いえ! 毒とか呪いとか状態異常の耐性も上がっていますし、弱体系のデバフへの耐性も上がっているとステータス上は表示されていますよ!」

マリアンヌはがっくりと肩を落とす。

「やっぱりこれ、魔法で身体強化や魔法効果を上昇させたほうが絶対いいですよね? スキルの対象も今のところ一人だけですし、持続時間もたったの一分って……。ハズレを引いてしまったのでしょうか」

どんよりする彼女に、牡丹は『それは違う!』と声を大にして言いたかった。

彼女のスキルはランクがA+。Sの次に位置する超絶レアスキルだ。

たしかに低レベルでは使いどころが限られるが、レベルが20を超えたとたんに爆発的に効果を発揮する。

(でもそれはスキルを持つマリアンヌさんも承知のはず。あの人たちの言う『魔法』って、それ以上にすごいってことなの……?)

「ともあれ! です!」

思考を斬り裂くような元気な声に顔を上げる。

金髪の美少女がふわふわと浮き上がって片手を前へ。

「ステータスもちょっぴり上がったことですし、わたくしもスキルを使ってみます!」

「散れ! もはやレベル1だとかは関係ない。レベル40相当のスキルだと想定しろ」

ひげの試験官が叫びつつ跳び退く。

女試験官は険しい顔つきで後退した。

シャルロッテの固有スキルは『 聖域展開(サンクチュアリ・フィールド) 』。ランクは最高のS。

特殊なフィールドを形成し、様々な効果を付与できる。

弱体化は避けたいと試験官二人はばらばらに距離を取った。

(さすがにあれだけ離れたら効果範囲には収まらない、けど……)

なにか妙だ。

フィールド形成のスキルなのに、彼女は突き出した片手をひげの試験官へ向けている。

そう言えば、と牡丹は思い出す。

シャルロッテにはもうひとつ、 第二(セカンダリー) スキルが授けられていたのだ。

けれど、とも思う。

そのスキルランクは最低のD。

エネルギー弾を撃ち放つだけの単純なスキルだ。そしてランクが示すように、いくら成長しても対象を弾き飛ばす程度の威力しかない。

倒すための攻撃スキルではなく、対象を牽制することを主目的とした支援系に近いスキルなのだ。

と、シャルロッテが目をぱちくりさせた。わずかに首を傾けて、ふんふん、とうなずく。まるでそばに誰かがいて、耳打ちしているような――。

「わかりました、兄上さま」

にぱっと笑う。

伸びた手の先にいたひげの試験官はなにかに警戒したのか、大剣を抜いて身構えた。

「マジックぅ~~、バレットぉ!」

とくにスキル名を叫ぶ必要はないのだが、シャルロッテは高らかに告げた。直後。

ずびゅーんっ!「――ッ!?」どっかーーーんっ!

試験官の横を、巨大な金の光線がかすめていった。

進む先にある朽ちた建造物を粉々に消し去ったのち、遥か遠くの壁面にも大穴を穿つ。

「はわわわ、やはり魔力をこめると威力が上がるのですね。兄上さまのお言葉に従って狙いを外しておいてよかったです」

シャルロッテはあわあわしつつも、ほっと胸を撫でおろす。

そこへユリヤがパッと姿を現した。

「本当ね、魔力を絡めるとスキルの効果が上がるわ。わたしのだと回数制限が実質意味をなさなくなるわね。そもそも使う意味があるか疑問だけど」

もうひとつのスキルでも使おうかしら、などと和気あいあいにおしゃべりしている二人を呆気に取られて眺めていると。

「…………合格だ」

絞り出すような声が届いた。

「本気ですか!? いくらなんでもこいつら怪しすぎますよ!」

女の試験官が駆け寄って不満をぶつける。

「たしかにな。提出書類から何から不審な点しか見当たらないし、 スキル以外の妙な力(・・・・・・・・・) を持っていることは確実だ」

「だったら――」

「 だからこそ(・・・・・) 、だ」

ひげの試験官は女試験官に耳打ちする。

不満げな表情は残したままながら、反論はしなくなった。

「君たち四人の実力は本物だ。すくなくとも不合格にする理由がない」

ため息を伴い肩を落とすも、ひげの試験官は「それに」と苦笑を浮かべる。

「人間的に悪い者たちではないようだしな」

粉々に破壊された建造物の瓦礫に目をやり、女の試験官と目を合わせると肩を竦めた。

あらためて合格を伝えられ、牡丹はほっと胸を撫でおろしたものの、

『よく言うよ。あのおっさん、見た目によらず腹黒だな』

「ぴえっ!?」

『あ、すんません。急に声出しちゃって。だからキョロキョロと不審な行動はやめてもらえますかね』

心臓がばくばくと鳴り響くのを、必死に両手で抑えこもうとする。

『おれおれ、俺ですよ、ハルトっす。今は姿を消して貴女の近くにいるんですよ』

もう何が何だかわからない。

『ついでなんで言っちゃいますけどあのおっさん、俺らに不思議な力があるから調査が必要だとか企んでましたよ』

「不思議な、力……。その調査って、もしかして――」

『十中八九、俺らの魔法を調べていい感じで利用しようって腹積もりでしょうね』

その可能性は、なくはない。少なくとも政府が彼らを自由に放置するとは思えなかった。

『ただまあ、あのおっさんたちってひとつ誤解をしてるみたいっすからね。俺らは俺らであっちの思惑を逆に利用させてもらいますよ』

誤解……それに牡丹は心当たりがあった。

彼らの操る不思議な力――魔法はべつに、ダンジョンの中だけで使えるものではないのだ。

『つーわけで、明日の試験のお供もお願いしますよ、所長さん』

(そ、そうだった。明日はフレイさんたちの試験なんだよね……)

牡丹はキリキリ痛む胃の辺りを押さえるのだった――。