軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

黒くドロドロしたアレをどうしましょう?

俺の可愛い妹を怖がらせやがってこの野郎! くらいのテンションで登場したわけだが、当のシャルちゃんもとい魔法少女ピンクちゃんは俺の背にお礼を述べつつニッコニコ。

なんだか気分が良くなりましたね。

とはいえ、帝国皇帝の肉体を乗っ取ったらしい魔神ヴィーイとやらは、黒い瘴気みたいなのを集めてドロドロした巨大な何かに姿を変えて付近を破壊し尽くさんとしているそうな。

とても迷惑である。

儀式も大詰めだし、さくっと退場してもらいますかね。

俺は片手を挙げた。紫電を閉じ込めた球体を生み出して「 冥(くら) き正義の名の下に、 滅紫(めっし) の裁きを」うんぬんかんぬんと口上を述べて放り投げる。

後ろからきゃっきゃと興奮した様が伝わってきて大満足の俺。

やっぱり大技を繰り出すときはカッコいいセリフが必須よね。こっそり用意しといてよかった。

さて、あとは大爆発の影響が周囲に及ばないよう結界をそこらに――って、あれ?

シーン、と。

大爆発どころか敵さんの苦しそうな声すら聞こえない。

それもそのはず。

俺が放った雷ボール的な結界は黒くてドロドロした体に吸いこまれるようにして消えていったのだ。

「忘れたの? ルールを決めたのは シヴァ(あなた) でしょう?」

颯爽と現れた金色の魔法少女が魔法弾を撃ち放つと、黒い腕の一部が弾けて散った。

と、イリスとテレジア学院長を引き連れて、マリアンヌお姉ちゃんも駆けつけてきた。

「シャ……じゃなかった、魔法少女ピンクさん! 援護に来ました。貴女はそのまま抑えていてください」

お姉ちゃんが魔法弾で牽制する。イリスも聖武具もどきをぶっ放した。

だが、それらは黒い巨人に届く前に消え去った。

「やはり魔法少女の攻撃しか有効ではないようですね」

ピンクちゃんがきりりとこぼす。可愛いね。

でも、そうか。つまり、アレか。ピンクちゃんと一緒に戦うには、

俺も魔法少女にならんといかん、と。

いやいやいや、さすがにそれはどうなのよ?

俺はライアスと違って女装には抵抗がある。特段の理由はないが、なんとなくやりたくないのだ。

チラ、チラッ。

いくら可愛い妹が期待していようと、本当になんとなく嫌なのだ!

『だったら儀式の仕様を変更して今のキミでも戦えるようにすれば? それくらいキミなら簡単でしょ?』

アドバイザーの言うとおりではある。

てか実際のところはそれすら必要なく、バカでかい結界にアレを閉じこめて圧縮しちゃってプチッ、で終わりな気がしなくもない。

それが無理でも謎時空に放りこめばひとまず問題は解決するのでは? とも思う。

だがしかし!

冷静に考えてみると、大いなる問題があることに気づいたのだ。

――そんな解決で面白いかぁ? 面白くねえよなぁ!

少なくともシャルちゃんを楽しませるために始めたこの 大魔法儀式(イベント) で、 想定外の事態(イレギュラー) とはいえ 俺(シヴァ) がさくっと解決しちゃったら意味なくない?

てなわけで、どうせならシャルちゃんに活躍してもらいたい。

ところがここでも問題が。

「アレってどうやって倒すんだ?」

俺ならパワープレーで対処できるにしても、黒い巨人の動きを抑制しているシャル以外ではユリヤが唯一の攻撃手段となっている。

その彼女の攻撃はまさしく焼け石に水。

黒くドロドロした体を削ってもすぐさま再生し、むしろどんどん大きくなってないか?

のったり進むにつれて地面が割れる。ひび割れた先には黒いドロドロも流れていき、小爆発があちこちで起こっていた。

さらに大きなお口から黒い塊が無数に飛び出している。口を開けたままスイカの種でも飛ばしてるみたいで気持ち悪い。

ちなみに俺、見てるだけじゃないからね? 被害が広がらないようアレコレしてますから!

『倒し方ねえ、さすがのワタシでも推測以上のモノは出ない。情報が足りなさすぎるね』

「ではどうしましょう?」

『相手は魔神なんて不可解なモノなんだ、実情を知る 女性(ひと) に聞くのがいいんじゃないかな』

俺はちらりと下を見た。

魔法陣をいくつも展開してピンクちゃんを護りつつ、お姉ちゃんやイリス、さらにゴールドちゃんのサポートもしているアダルティな女性。

「えー? 俺が訊くんでござるかー?」

『ワタシが間に入ったら殺されちゃうかもじゃないか。学院長が元は魔神だったってことは、キミにしか話してないことになってるんだからね』

なんとなく学院長は見逃してくれる気がする。

などと話すうち、目が合った。

こくりとうなずく学院長。どうやら話がしたいのは向こうも同じらしい。

俺はすすっと学院長の横に降り立った。

「儀式のルール上、私の攻撃は通じない。状況は芳しくないな」

「さすがの貴方でも、儀式の根幹を揺るがすルール変更はできませんか」

いえそもそも魔法少女になりたくないのです。

「とはいえ黙って見てはいられない。多少のルール変更は押し通すさ。アレを倒す方法を、貴女は知っているか?」

学院長は唇を引き結ぶ。数秒、目をつむったかと思うと、

「残念ですが力になれそうもありません。私は〝魔神〟についての知識はありますが、この大魔法儀式に精通しているわけではありませんから。ヴィーイを倒す手立てに思い至るだけの情報が、足りていないのです……」

なんてこった。

頼みの綱も情報不足で頭を悩ませているとは――って待てよ?

「状況がわかれば打開策も見出せるのか?」

「そうですね。まずはヴィーイがなぜ再び魔法少女となったかがわかれば、あるいは」

なるほど。

わかるというか推測ではあるんだけど。

「たしかヴィーイの神としての特性とやらは【強奪】だったな。本来は倒した〝 神(あいて) 〟の特性を奪い取るものだが、この儀式においては倒した魔法少女の特殊能力を奪っていた」

「その特性をもってして『魔法少女の権利』を奪ったのでしょうか?」

「いや、それだと『奪った相手』がいないので該当しないな。その前段階で――」

俺は低く言い放つ。

――奴は 魔法少女になれる(・・・・・・・・) モノを奪った(・・・・・・) んだ。