軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

さすがの俺でも気づきます

王都の中央公園に巨大な魔物が出現したとの報を受け、俺は戦慄した。

赤くて、でかくて、なんかしゃべる、狼さん。

そして炎を操る。

フレイやんけ!

なぜそうなったかは後で聞くとして、別のアナウンスで参加者ではなくゲームマスターとしての俺の脳内に〝赤〟陣営の脱落が伝えられた。

そんなわけで事態を収拾すべく、俺はフレイに命じる。

「魔法少女ゴールドに退治された体にしてくれ」

光学迷彩結界で姿を隠し、こっそり耳打ち。

ゴールドちゃんことユリヤにも合わせてくれとお願いすると、

「みんな、安心して! 迷いこんだ魔物はわたしが優しく諭すから」

言いつつトンファーをくるくる回してフレイに突っこみ横っ面をびったーんとはたいた。優しく? 諭す……?

『うーわー、やーらーれーたー』

めっちゃ棒読みだがフレイに演技は期待できないので不問とする。

ずずーんと倒れたのち、俺の耳打ちで棒読み再開。

『はっ! 私は何をしていたのだ……、ここはどこ? どうして街中に……?』

「正気に戻ったみたいね。あなたは魔神に心を操られていたの。でもみんなの声があなたの優しい心を呼び戻したのよ」

そうだったのかー、と驚く聴衆のみなさん。

『そうか、ありがとう、魔法少女ゴールド、そして街のみなよ』

目を閉じて感謝を述べる巨大狼がふわりと浮き上がる。俺がやった。早いとここの場を離れたいので。

「ちょ、早くない? そーれ!」

息が合わずユリヤが慌てておててをくるくる回す。

「さあ、森へお帰り」

言って、思いきり腕を振り上げた。

そんな勢いよくする?

仕方ないのでユリヤに合わせてズビュシューンっとフレイを空高く飛ばす。遥か彼方へ見えなくなる瞬間、キラーン☆と演出しておいた。

聴衆のみなさんは魔法少女ゴールドにやんやと喝采を送っている。

ユリヤはしばらく手を振って応じ、やがてこちらも空の彼方へ飛び去った。

ふぅ、これで事態はなんとか収拾できたな。

と、地上できょろきょろする人を見つけた。

こっそり降りてシヴァモードを解除し、光学迷彩結界も取り除く。

「お疲れさまでした」

「ひゃわっ!? あ、ハルト君、えっとその……こっちへ」

後ろから声をかけたら驚かせてしまった。

頓狂な声で周りの人たちが訝り、中には『あれ? 王女殿下じゃね?』みたいな鋭い方もいらっしゃる。

マリアンヌお姉ちゃんは俺の袖を引っ張って広場の植木の陰に回った。

「どうかしたんですか?」

「どうもこうもいろいろありすぎて……。いえ、ひとまず私のことは置いておきます。さっきこの辺りで銀の狼さんと一緒になって、民衆が混乱しないよう手を尽くしてくださった方がいたのですけど、姿が見当たらなくなってしまって……」

へえ、あの状況で裏方に回ってくれるなんて殊勝な人だな。たしかにお礼のひとつも言いたくなるか。

ところがマリアンヌお姉ちゃんは別の理由で捜しているらしい。

「すこし、心配なのです。手際よく、通る声で指示を出していたのですけど、どこか上の空と言いますか、なにかに取り憑かれているみたいな、そんな雰囲気なのが気になったのです」

容姿を尋ねると、厳つい感じの若い男……のように見えて実年齢はもっと高いと感じられたそうな。

「立ち居振る舞いから一般の市民ではないと思います。貴族……の中でも軍務に携わる方のように思えました」

なるほどやんごとなきお方ってことか。昼間から中央広場で遊んでるとか放蕩にもほどが――って待て。なんかおかしくないか?

「貴族っぽいのに、王女は知らないんですか?」

王国貴族でそこそこの年齢なら当主か後継者クラスだろう。

王女と顔見知りじゃない貴族当主なんている?

「私は 国王(おとうさま) と 王妃(おかあさま) の仲がよろしくなかった関係上、本来なら王妃が参加する公務に随伴していました。謁見行事も含めて。すくなくとも王都に滞在するほどの貴族ならば一度は会っているはずです」

そして一般人に扮しながらも消せないほどの威厳を持つ者となれば、一度見れば忘れるはずはないとお姉ちゃんは断言する。

「てことは王国の貴族じゃないってことですね」

マリアンヌお姉ちゃんは険しい顔つきになる。

「他国の貴族が王都に秘密裏に滞在するとなれば、内部に手引きした者がいる……考えたくはありませんけれど」

まあお貴族様が商人に扮して、みたいなのもなくはないだろうけど、そもそもこの話を聞いてて思ったんだが。

俺はとある元王妃派の貴族名を口にする。

「たぶんそこが〝白〟の魔法少女の拠点だったはずですよ。てことは連中、外国の勢力だったのか」

で、魔法少女ホワイトだった少年はたぶん学院長の知り合いだ。本人は言い淀んでちゃんと話ができてないけど、

「その辺りをはっきりさせに戻りましょうか」

いい加減、俺にも感じ取れてきた。

なーんか裏で妙なことが進んでるっぽいんだよなあ。

「わかりました。私も行きます」

国の存亡にかかわる、とまではいかんまでも、儀式に悪影響がありそうな気がする。

そんな話をしてみたら。

「いえこの大魔法儀式自体が常識では考えられない規模なのですから異常があれば国家存亡の危機になるのでは?」

早口でまくしたてられました――。