軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ゲームマスターは暗躍します

一大事である。

ゲームマスターであるはずの俺が、なぜだかプレイヤーに選ばれてしまったのだ。

最悪はシャルのサポーター役になってあれこれしようかなーとは思ってたけど、さすがに小動物的マスコットになるのは抵抗があったから躊躇していたのに、なんでイリスのサポーターになっちゃったんだろう?

しかしなっちゃったものは仕方がない。

ここは前向きに考えるのだ。

「ひとまず魔法少女もそのサポーターも、他の参加者には正体が知られないようフィルターがかけられるようにしたからな。しばらく俺もお前もシャルたちには気づかれないはず。その上で、だ」

ひと通り帝国軍から武器やら防具やら食べ物やらを掻っ攫い、俺たちは湖畔のログハウスに戻ってきた。

イリスは変身を解いていて、そのおかげで俺も元の姿に戻っている。

月を写す湖のほとりで、緊張ぎみのイリスにキッパリと言い放った。

「俺はシャルを勝たせるために動く。お前もそうしてほしいお願いします!」

「わかった」

即答っ!?

ちょっと意外だったがよくよく考えてみれば、こいつは最初から参加を渋っていたな。誰かを傷つけてまで叶えたい願いはないとかなんとか。

つまり欲がない。

こいつはこいつで参加したくなかったのだから、誰かのフォローに回るのもやぶさかではない、ということだろう。

「言うてシャルと同盟を組むかは流れに任せよう。あからさまに手を貸しちゃうと他から不満が出るからな」

「キミが参加したと知られた時点でそう疑われるのは確定だと思う」

せやろか。俺ってそんなあからさまにシャルに甘々だっけ? ……ちょっとだけそんな気がする。

「じゃあどう立ち回ろう?」

「威力偵察と情報共有。序盤はそれで十分じゃないかな」

イリスが他の魔法少女たちに単騎で戦いを挑み、その実力を測る。その情報をこっそりシャル陣営に渡すってことらしい。

「意外だな。お前って相手を傷つけたくないんじゃなかったか?」

「もちろん、それは今でも変わらない。あくまで実力を測るための戦闘だからね」

そういうもんか。

「ともかくキミは姿を現さないことだ。いずれ知られるにしても、最低でも中盤まではキミが儀式に参加していることは隠したい。他の陣営がすべてこちらの敵に回りかねないからね」

すくなくともティア教授あたりに知られるとマズイな。あの女は自己の利益のためなら強い相手にごまを擦って近寄り、平気な顔して裏切るに違いないのだ。

うまく立ち回らねば。

「んじゃ、俺はいつもどおりぐうたらしておこう。ときどきシヴァを登場させて『儀式を監視してますよ』アピールさせときゃいいか」

「……そのとおりだけど、前半部分が釈然としない」

細かいことにはこだわるな。楽に行こうぜ。

「ボクも儀式が始まるまでは気づかれないよう善処する。ただ魔法少女に変身したときは魔力の制御に違和感があったから、その辺りをこっそり確かめようと思っているよ」

「そうだな。場所は俺が用意するか」

って、そうそう。忘れるとこだった。

「そういやお前の特殊能力をちゃんと確認してなかったな。ひとまず移動してステータスやらもチェックしとくか」

「そうだね。特殊能力はその種類はもちろん、使い方によって戦況を大きく左右するかも知れないから」

と、いうわけで――。

滝に来たよ。そこ以外に思いつかなかったからね。

「ここはシャルもときどきやってくるところじゃないのか?」

そうかもしれない。

ので、対策することにした。

「ドーム状の結界で外からこっち側にいる俺たちの姿だけ見えなくした」

「それ、この場所でなくてもよかったのでは?」

それはそう。でも細かいことは気にしてはいけない。臨機応変、いい言葉です。

「とりまステータス確認といこうか」

俺は「ステータス、オープン!」と声を張った。むろん意味はない。

半透明のウィンドウが出てきて、イリスのステータスを表示する――はずが、出ないね?

おかしいな、サポーターは相方の魔法少女のステータスを確認できるはずなんだけど。

「魔法少女に変身していないからでは?」

イリスに真っ当な指摘をされる俺恥ずかしい。

ひとまず変身してもらった。

俺もクマ状態に変化する。

互いに気まずい空気が流れる。

イリスはミニスカートの裾に手をかけてもじもじしてるし、俺はそんなイリスをローアングルで見上げるほど小さくなったからかなるほど。

すぅっと浮き上がってイリスと目線を合わせる。

イリスはまだ頬を赤らめているが構わず「ステータス、オープン!」とやり直した。

繰り返すがこの叫びに意味はない。ただ半透明のウィンドウが出てきてイリスのステータスを今度こそ表示した。俺が作ったミージャの水晶(改)で出てくるアレだ。

魔法レベルが変身前よりちょいと上がっているのは横に置き、本命たる特殊能力の欄に目を向ける。

………………なんじゃこりゃ?

「どうしたの? なにか不都合でも?」

不安そうなイリスに、さてどう説明したものか。

とりあえずそのまま読み上げてみよう。

「お前の特殊能力は『道具の意味を拡張してやるぜぇ』だ」

うん、目をぱちくりさせてるお前の気持ちはわかるよ。

「能力の説明にはこうある。『道具が持つ意味を拡張して概念を具現化させる。なお道具は発動中にひとつだけに限る』」

「……それだけ?」

「うん、それだけ」

乾いた風が俺とイリスの間を吹き抜けていく。

「つまり、どういうことかな?」

「さあ?」

再び乾いた風が流れていった。

「キミが用意した魔法具だろう!?」

いやそうなんだけどね。

ランダムにした以上、こういう変なのが混ざってるから逆に楽しいのさ。

「でもなんでこれなんだろうな? お前の願望とか資質に影響されてるはずなんだけど、『道具の意味を拡張』ってなんだよ」

俺と同じく首をひねっていたイリスだが、ハッとしたかと思ったら目を逸らした。

「なんだよ、思い当たることがあるのか?」

「ち、違う! たしかにボクは、キミの道具にごにょごにょ……。いやだから! 道具扱いしてほしいとかじゃなくて、便利に使ってもらっていい的な意味合いで――」

なんかあたふたして言い訳始めたが、ぶっちゃけ重要なのはそこではなく。

「とりあえず試せばわかるからいいとして、それよりも、だ」

特殊能力の説明文でひとつ、わかったことがある。

「これ決定的っていうか、確定したようなもんなんだが――」

疑問符を浮かべるイリスに、俺は穏やかに告げる。

「今回の魔法少女戦争(仮)、どうやら概念バトルになるっぽい」

イリスさん、頭上の疑問符をさらに増やしちゃいました――。