軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どちらかと言えば棚ぼたでは?

やって来ましたオリンピウス遺跡。

すでに最深部に『どこまでもドア』を設置していたので移動は楽ちんだ。

最深部には秘密の部屋があり、そこにはこの遺跡を制御するための装置があった。

俺一人でもよかったのだが、どうせなら有識者に意見を聞きたい。

そんなわけで、俺はシヴァモードでお一人をご招待したのです。

「私が得た魔神の知識では基本的な操作くらいしかわからないのだがね」

来る前にもそんなこと言ってたね。

遺跡の有識者――ナンバー『1』ことアレクセイ先輩はため息混じりに古代語を口ずさむ。

部屋には直径二メートルほどの巨大水晶が浮いていて、周囲を帯状魔法陣がぐるぐる回っている。先輩の前にはいくつもの半透明ウィンドウが展開された。

「……残念だがシヴァ、ここには何かしら記録される機能はないようだ。その迷子の少女に関する情報も当然ながら皆無だな」

そっかー。この手の情報システムに必須の機能すらないなんて、昔の神的何かってのも大したことないなあ。

「ではアレクセイ、君に質問だ。ここでルシファイラ配下の魔人が悪さをしていたようなのだが、それについて知っているかね?」

俺が仰々しく尋ねると、アレクセイ先輩は顎に手を添え考える。

「……すべての魔人はルシファイラとつながってはいたが、必ずしもすべての情報が流れていくというわけでもない」

それはそう。

まあ、下っ端を作ったなら基本丸投げにするよな。しないかな? 俺はそうするんだけど。

「また何らかの理由でつながりが断たれた場合は当然ながら、どこで何をしているかを把握できない」

それもそう。

たとえば俺が取り逃したやつは翼を引っ剥がされたわけだが、そのショックでルシファイラとの接続が切れちゃったかも――って、待てよ?

そういやあの魔人、あれからどうなったんだろう?

あいつを生み出したルシファイラは消えちゃったし、人知れず消滅しちゃったかな。

と、件の魔人のことを考えていたわけだけど、あれ? あの魔人……の、顔……って、どんなんだったっけ?

思い出そうとしたけど、まったくもって思い出せない。なんというか、顔にだけ靄がかかっているみたいだ。

もともと一瞬しか見てないし、メイド服の印象が強かったから顔は忘れちゃったか。

いや、でもなあ。

わりと注意して監視してたし、そんなすぐ忘れるか?

「シヴァ、どうかしたのか? 考えこんでいるようだが」

アレクセイ先輩の声で思考を戻す。

思い出せないものは仕方ない。むしろなんでこんなこだわってるのか自分でも不思議だ。

ともあれ、ここにメルちゃんの不思議に迫る手掛かりは何もなかった。

しゃーねえ 帰(けえ) るか。

そう考えたのに、どうにも俺はこの場所に引っかかりを感じていた。

本当に何もないのか?

メルちゃんがどうとかではなく、古代の迷宮の奥深くに妙な制御装置だけあるって安直すぎるよなあ。

こういう場合のお約束と言えば――などと、執拗に辺りを探っていたら。

「……なあ、この下ってなにかあるのか?」

ちょい素が出てしまったが、アレクセイ先輩はとくに気にした様子はなく応じる。

「さて、制御装置に遺跡の全図はあるが、この階層より下は存在しない」

てことはコレ、遺跡を作ったヤツとは別の誰かの仕業ってことか。

俺はかかとで床をコンコン、と叩いた。仕草にさほど意味はない。なんとなくカッコいいかなと思っただけだ。

かかとから飛び出した結界で地面を削っていく。

やっぱり深いな。

それこそ百メートル近く掘り進んでようやく。

「ビンゴだ。 部屋がある(・・・・・) 」

部屋って言うには狭い空間だ。二畳間くらいで正方形。大理石みたいなつるつるの壁で囲まれているので自然にできたところじゃない。

でもってその中心には、何もない――はずもなく。

「なんだろうな、これ」

パッと部屋の中を見た感じでは何もない空虚な場所だったんだけど、外側にある結界らしきを破ると、そのど真ん中に浮いている物体があった。

引っ張り上げる。

正三角形を八枚貼り合わせた正八面体だ。大きさは人の頭くらいで、色鮮やかに変化している。

「私の知識にはないものだ。魔神の記憶をまさぐれば絞り出せたかもしれないが、すでに消えてしまっては辿れない」

なんかよーわからんけど、魔法的な何かじゃなかろうか。

「持ち帰って調べてみるか」

てなわけで――。

アレクセイ先輩を引き連れ、シヴァモードのままティア教授の研究棟へブツを持ってった。すでにメルちゃんは変身を解き、ティア教授も人の姿に戻っていた。

「超々高密度の魔力体ってところかな」

ティア教授は言う。

俺が作ったなんでも鑑定機、カメラ型の魔法具『 解析(わか) るんです』で調べてみたのだ。

ティア教授の研究棟にも純正の鑑定機はあるんだけど、『キミのやつのが高性能なのにこちらを使う必要ある?』とド正論をかまされたので、シャルに渡していたやつを借りて持ってきたのだ。

「魔力体? それは何だ?」とシヴァ 面(づら) で問う。

「利用目的は様々だけど、要するに魔力を凝縮して固体化したものだよ。通常は水晶や宝石に魔力を移すんだけど、これは魔力そのものを結晶化したっぽいね。いずれにせよ現代魔法の範疇じゃない。古代の文献にはちらほら現われているから当時は一般的みたいだけどね」

「で、これは『超々』などと付くくらいだからすごいものなのか?」

「正直、どれだけすごいかわからない。実は大したことないかもしれないし、測れないほどすごいかもしれない」

なるほどわからん。

アレクセイ先輩もなにがなんやらわからないのか、正八面体の謎物体を難しい顔で凝視している。

「やはり危ないものなのか。変に刺激すると大爆発したり?」

魔力を凝縮したもんだもんね。超々高密度に。きっと危ないに違いない。

ところがティア教授はにぱっと笑って言う。

「危なくはないよ。術式が付与されていない、ただの魔力なんだから。壊れても魔力が霧散するだけだよ。もったいないけどね」

へー、そうなのか。

ん? だったら――

「これ、景品に使えるな」

ひらめきを口にしたら、とてもいい案に思えてきた。

「は?」

「……」

でも二人の反応は鈍い。

俺はシヴァモードで仰々しくたたみかけた。

「例の儀式の景品だ。〝聖なる器〟の中身にちょうどいい」

せっかくメルちゃんがいい感じにデザインしてくれたからね。

今は完全に閉じこめられているからか、外からはまったく魔力を感じないけど、危険がないならチョチョイと加工しておどろおどろしく魔力をかもすようにしてみよう。

アレクセイ先輩が怪訝な表情に変わった。

そういやなんも知らずに捲きこんじゃってたな。儀式についてはさくっと説明しておくか。

図らずも魔法少女戦争(仮)の景品の素体が手に入った。

こういうの、怪我の功名って言うんだっけか――。