軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

滝行はもう十分です

背中から生える、魔法レベルの概念的な管の秘密はだいたいわかった。

最大魔法レベルを上げられる大成果を得たものの、それをやると心身(主には精神)にとんでもない負荷がかかるため、おいそれとはできない。残念。

ただ現在魔法レベルを上げるのはひとつや二つならさほど負担はないようなので、ちまちま上げてみようと思う。

ちなみにこの辺りの話はシャルやイリスには話さないでおいた。

俺がこっそり魔法レベルを上げていると知られてはマズいのでね。

で、我が妹シャルロッテはと言えば。

「ほほほ本当にこんなんで、ままま魔法レベルが上がんのかかよよ」

「ラララライアス、しゅしゅ集中しなさいいい」

滝行で魔法レベルが上がったのに味をしめ、マリアンヌ王女とライアス王子を強引に連れてきて滝に打たせている。

「だだだ大丈夫でですよよよ」

「ボクたちも、一度は体験済みだからね」

四人、白襦袢を着て滝に打たれている。ライアスは一人、三人から離れて端っこでそっぽを向いていた。

女の子たちはずぶ濡れで体に白襦袢がぴっちりだものね。ガタイはいいのに純情なやつめ。

彼らを見守る、というか睨み据えているのはメイド服姿のフレイだ。

滝壺にある大岩の上で仁王立ち、脂汗を垂らして今にも倒れそうなのをずっと我慢している。

こいつの現在魔法レベルは、昨日のうちにMAXにしておいた。

もともとは大狼形態で【57】/【73】だったんだけど、現在魔法レベルを16上げてみた。さすがに負担が大きかったのか、ひと晩経ってもふらふらだ。

ちなみにリザも51から71のMAXまで上げている。

ただ一気に20はめちゃくちゃ辛かったようで、最大魔法レベルを上げたティア教授たちと同じく寝込んでいた。ごめんね。

彼女たちには今後、ナンバーズやルシファイラ教団との対決にあたってシャルを守ってもらわなければならない。だからまあ、必要な措置ではあったのだ。

そういえばこの二人、人形態になると魔力量が半減するらしい。

魔力量は魔法レベルの二乗にだいたい比例するので、それぞれ人形態で魔法レベルが51とか50

相当になるそうな。

「ええい! 魔力が鍛えられてる感じがしねえ!」

そらそうだ。魔法使ってないもんね。

「やっぱおかしいぞこれ! 魔法使わねえで魔法レベルが上がるわけねえだろが!」

こいつと意見が一致するとなんか嫌だ。

しかしさっきから文句ばっかだな。

「ライアス! 信じてやってみようと言ったではありませんか」

お姉ちゃんは唇を紫にしてガタガタ震えながらもがんばっている。健気だ。

なので、さっきから姿を見えなくして滝の後ろでスタンバっていた俺は、彼女の途中まで伸びた管を引っ張って地面(実際には水面)にくっつけた。

「ひゃわっ!? ぇ? ぁ……、レベルが上がりました!?」

「なんだとぉ!?」

ついでにシャルとイリスのレベルも上げてみる。

「わたくしも上がりました!」

「ボクもだ!」

「ぬわにぃ!?」

さて、シャルたちにはいつまでも滝行をしてもらいたくない。寒いし冷たいし、風邪ひいちゃったら大変だし。

ので、そろそろ止めようと思う。

俺は滝から抜け出し、さも今来たかのようにフレイの隣に降り立った。結界で水を弾いていたので水滴ひとつございません。

「シャルよ、よくがんばったな」

「兄上さま!」

「しかし滝行ではそれ以上レベルは上がらない」

「えっ? どうしてですか?」

「それはほら、アレだ、体が慣れちゃった的な」

「でも、今回は前よりも早く魔法レベルが上がりました。効率が良くなっているように思います」

「あ、うん、そうね…………滝行で上がるのは二つまで! そうシヴァが言ってた」

「なるほど? よくわかりませんが、あにう――じゃなかった、シヴァが言うのならそうなのでしょう」

うんうん、素直ないい子だ。

「では次なる修業は滝に丸太を流して――」

「それもちょっとどうかなあ!?」

危ないことはやめようね?

「なぜだ……、どうして僕だけ……」

滝に打たれながら四つん這いになって打ちひしがれているライアス君がちょっと哀れになったので、ちょちょいと管を伸ばしてやる。

「ッ!? 上がった! マジかよ……」

そうして四人を連れて、シャルが言うところの〝 逢魔の庭園(パンデモニウム) 〟にやってきた。俺の安らぎハウスが建つ、湖のほとりだ。

そこにはなぜか、

「シャルロッテ、どうしたの? ずぶ濡れじゃない」

我が義母にしてシャルの実母、ナタリア・ゼンフィスさんがいらっしゃいました。

長い金髪でスタイル抜群。シャルが成長したらこんな風になるんだろうなあ、と思えるほどの美人さんだ。

父さんとは歳がずいぶん離れているが、大きなお子様がいるとは思えないほど若々しい。

「それにそちらは……マリアンヌ王女殿下とライアス王子殿下ではありませんか?」

「お久しぶりです、ナタリアおば様」

「どもっす……」

こちらもびっちゃびちゃなので、母さんは慌ててログハウスに走ってタオルを取ってきた。

「あちらに温泉が湧いていますから、みなさん温まっていらしてください」

勝手知ったる我が母の言葉に、みなはぞろぞろと温泉へ向かう。

父さんと母さんには俺がヘンテコ結界魔法を使えることや、全身真っ黒な正義の味方をやっているとはいまだに話していない。

魔物が跋扈するこの地は、『シヴァの協力で人と魔が楽しく暮らせる場所を創った』とシャルが説明していた。

「ハルト、いったいシャルロッテたちは何をしていたの?」

「滝に打たれて魔法レベルを上げる修行をしてました」

「滝? それで魔法レベルが上がるとは思えないけれど……」

「うん、まあ、上がったみたいよ?」

えっ? と母さんは信じられないけど俺が嘘を言ってるとは思えない、複雑な表情になる。

「まあ、ハルトとフレイが一緒なら、心配はしなくていいわね」

この信頼はどこから来るのか?

いろいろバレてるっぽくはあるし、もはや秘密にせんでもよかろうとは思うのだけど、なんか話すタイミングがね、今さら感がね。

ひとまず俺もひと風呂浴びるかと、ライアスを追うのだった――。