軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脇役剣聖、二人に説明~からの修行

翌日。俺はサティと一緒に団長の屋敷へ。

正門前に、一台の馬車とエミネムがいた。

「エミネムさん!!」

「サティさん!! お久しぶりです」

ペコっと頭を下げるエミネム。サティはエミネムの手を掴み、ブンブン振った。

俺は軽く手を上げ、エミネムの傍にある馬車を見る。

「俺たち、歩きで来たんだが……気を遣わせたか?」

「あ、いえ。これは私物です。フル-レさんのお屋敷にお世話になるので、お土産とか、お着換えとか」

そう言うと、馬車は行ってしまった。

エミネムは、ちらりと俺たちを見る。

「フルーレさんは、いないんですね……」

「まあ、あいつも七大剣聖の仕事あるしな。今回は俺たちだけだ」

「……はい」

「そう残念がるな。屋敷に行けば会えるさ……よし、じゃあ行くか」

「はい!!」

「はい。ふふ……またこうして会えて、本当に嬉しいです」

「あたしもです。エミネムさん、よろしくお願いしますね!!」

うんうん。サティも同性の友人ができて嬉しそうだ。

まぁ……これから話す内容は、ちっとも優しくないけどな。

◇◇◇◇◇◇

軽く散歩しつつ、いい感じの喫茶店を見つけたので入る。

サティはメシ食ったばかりなのにパンケーキを注文。俺はコーヒー、エミネムは紅茶を注文した。

「そういや、エミネムは公爵令嬢なんだよな。こういう店に入って大丈夫なのか?」

「公爵令嬢と言っても、普段は騎士団で剣を振る生活です。こういうお店も入ったことがあるし、酒場で部下たちとお酒飲んだこともありますよ」

ちょっと意外だな。まぁ、エミネムは部下に慕われてそうだ。

「お父様は、私を公爵令嬢とは見ていません。『神スキル』の使い手として騎士団に残し、家は私の結婚相手に任せたいと思っているようで……」

「結婚相手? ケインくんがいるじゃないか」

「……兄さんは、その……『スキル』を持っていないので。グレムギルツ家の跡取りが、能力を持たないというのは、お父様には認められないみたいで」

「ふぅん……」

「お父様は、『神スキル』持ちの貴族を探しています。でも、神スキルを持つ人間なんて、そう簡単には現れないし、見つからない……」

「じゃあ、ケインくんでいいと思うけどな。ケインくん、マジで有能だし」

「……いないことは、ありませんけどね」

と、エミネムはボソボソ言い、俺をチラチラ見ていた。

すると、いつの間にかパンケーキを完食したサティ。

「あの、師匠。事情を説明するって話ですけど」

「あ、そうか。じゃあ、整理して説明する」

俺はコーヒーで喉を潤し、頭の中で情報を整理した。

◇◇◇◇◇◇

きっかけは上級魔族。

上級魔族の討伐が、俺ではなくいつの間にかランスロット、そしてアロンダイト騎士団の手柄に。

上級魔族が来てるのに何もしなかったアルムート王国騎士団に批判。

ランスロットが「騎士団は一つでいいだろ」と陛下に進言。

陛下、乗り気になる。

俺、上級魔族の顛末を報告。たぶんまた上級魔族が来る。でも、今のままじゃ両騎士団共に魔族の相手はできない。

なので、実力を上げるために互いの騎士団で戦おう。

ランスロット、実力ある七人を出してくる。それに対し、こちらは団長の選んだ騎士五人、エミネムと特例でサティ。

たぶん、騎士じゃアロンダイト騎士団には勝てないので、俺がエミネムとサティを鍛えて、二人で七人倒すようにする。

「───……まあ、こんな感じか」

「「…………」」

二人は黙りこむ。だが、サティが拳をぎゅっと握った。

「アロンダイト騎士団……つまり、イフリータたちが出てくるんですね」

「ああ」

「よーし!! あたし、もう昔のあたしじゃないって、イフリータやお父さ……ヴァルファーレ公爵に見せてやる!!」

「その意気だ。エミネム、お前は?」

「アロンダイト騎士団……実は私、イフリータ総隊長に何度か入団を誘われました。でも、私はグレムギルツ家の人間ですし……お断りしました」

「え、そうだったんですか?」

「ええ。実は、少しだけ後悔しました。私と同世代の女子が集まり、騎士団に……私は、王国騎士団で、年上の男性に囲まれて剣を振っているのに、と」

「「…………」」

「でも、今は後悔していません」

エミネムは、きっぱりはっきりと言った。

「よし。サティ、エミネム。今日から俺が本気で鍛える。闘技大会までに、俺が倒した上級魔族を倒せるくらいに強くなってもらうぞ」

「「え」」

「そうと決まれば、さっそく行くか」

立ち上がり、お会計をする。

サティが俺の袖をクイクイ引いた。

「あの、行くって……フルーレさんの屋敷ですか?」

「違う違う。外だよ外。王都郊外にある『ダンジョン』だ」

「だ、ダンジョン……ですか?」

エミネムが顔を青くする。

サティも、ダンジョンと聞いて顔をこわばらせた。

ダンジョン。大昔からある、大地から吹き出る魔力によって、洞穴や森林などが変化した領域。魔力の影響なのか、魔獣なども独自の進化を遂げており、推定討伐レートが最低でもBクラスのところが多い。

俺は、荷物からマップを出す。

「団長に、この辺りのダンジョンを聞いて、地図にマークした。買い出しして、さっそく挑むぞ」

「あ、あの……ラスティス様」

「ん」

「ダンジョンって、王国条約で『上等冒険者以外立ち入り禁止』では……?」

冒険者ってのは、ダンジョンを調査する専門職だ。

ダンジョン内にいる魔獣の素材はどれも高値で売れる。ダンジョンで生計を立てる者も多い。

上等冒険者ってのは、冒険者の等級だ。えーっと……詳しくないからわからんが、上等冒険者は冒険者の中でも、高位の冒険者らしい。

「安心しろ。ちゃんと許可は取った……団長が」

「ダンジョン、なんだかワクワクしますね!!」

「は、はい……」

エミネムは少し苦笑いしていた。

町で買い出しをして、王都の正門前に向かう。

地図を確認し、ここから一番近いダンジョンに向かおうとすると。

「遅いわよ」

「は?」

なぜか、フルーレがいた。

ぽかんと口を開けていると、フル-レはエミネムの元へ。

「久しぶりね、エミネム」

「フルーレさん。お久しぶりです」

「ええ。しばらく、屋敷に泊まるそうね。ふふ、楽しみが増えたわ」

「はい、私もです」

ニコニコしながら再会を喜ぶ二人……ではなく!!

「おいフルーレ。なんでお前が」

「団長に頼まれたの。あなただけじゃ不安だから、ってね」

「…………」

「他の七大剣聖は、闘技大会の準備。動けるのは、私だけだったの。何……不満?」

「あ、いや」

「なら、行くわよ」

「やったぁ!! フルーレさんも一緒ですね!!」

「ええ」

「ふふ。ちょっと不謹慎だけど……私、楽しくなってきました」

サティ、エミネム、フルーレの三人は並んで歩き出す。

俺はその背中を見て、小さくため息を吐くのだった。