軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再戦 エミネムVSデボネア②

両手に握られた『白い鞭』を、エミネムは警戒……だが、決して『受け』に徹するのではない。

四本を縦に拘束回転させて竜巻を形成し、残った二本を両手で持つ。

そして、二本の槍を振り回しつつ構えを取り、デボネアに言った。

「ふぅ……このムズムズした感じ、なんというか」

「ふふ、下半身が疼く?」

「下品な言い方は嫌いです……私はこれから、全力で攻めます。受けの時間は終わりです」

「あら大胆。受けじゃなくて『責め』に回る宣言? あなた、もしかしたら私と似てるかも」

「……参ります!!」

もう会話をすることはやめた。

エミネムは竜巻を従え、デボネアに特攻する。

「『 北風(ボアレス) 』!!」

竜巻の一つが、エメラルドグリーンの風に輝く『馬』となり……なんとエミネムは騎乗した。

そして、残り三つの竜巻も変化する。

同時に、デボネアは踊り出す。

鞭を手に、紫の煙を全身から放出し、鞭からは白濁の液体を滴らせ……煙、液体、全てが毒。

鞭を振り回しながらのダンスは、煽情的であり、さらに隙がなかった。

「『 西風(ゼピュロス) 』!! 『 南風(ノトス) 』!! 『 東風(エウロス) 』!!」

竜巻が、巨大な怪魚、並走するオオトカゲ、巨狼となりエミネムと並走する。

東西南北を司る風の獣を具現化、デボネアに襲い掛かる。

デボネアは、まだ踊っていた……が、煙に包まれ、白濁の液体がデボネアを包み込み……まるで、巨大な蛇のような姿となる。

液体で形作り、煙で覆い固定する、毒の蛇。

鞭は攻撃ではない。毒を撒き散らし、この毒蛇を形成するための神器。

「互いに、最強の一撃──……勝負です!!」

風、そして毒。

風の聖獣、毒の大蛇が正面から衝突した。

「『 東西南北聖風神嵐(ウェンティーズ・ゼファー) 』!!」

「『エキドゥナ・ポワゾ・モルテール』!!」

毒蛇が風の聖獣三体に巻き付き、その身を砕いた。

だが、エミネムの騎乗していた馬に巻き付いた瞬間、煙が風で散り、白濁の毒だけの状態になる。

そこでエミネムの槍が突き出され、毒が一気に弾け飛び……同時に、エミネムの槍も吹き飛ばされる。

剝き出しになるデボネア、そしてエミネム。

デボネアは五指を開き爪をエミネムに向け、その身を引き裂こうとした。

が……エミネムは小さく微笑んだ。

「ラスティス様の、教えです──」

エミネムの手には、風を圧縮した小さな『球』があった。

デボネアが目を見開く……が、エミネムは言う。

「どんなに小さくてもいい。使うつもりのない一撃を、常に用意しておけ……この風は、激突前に用意しておいた切札。ただの、風の玉……」

「───チッ」

デボネアが舌打ちすると同時に、風の玉が発射……デボネアの胸に直撃すると、風が一気に解放され、デボネアを吹き飛ばした。

そして、デボネアは地面を転がり、完全に気絶。

立っていたのは、エミネム。

同時に、ボーマンダが手を挙げた。

「それまで!! この勝負、エミネムの勝ちとする!!」

◇◇◇◇◇◇

戦いが終わるなり、エミネムはデボネアの元へ。

風の玉が直撃したことで、服が破れ素肌が露わになっていた。なので、シーツでデボネアを隠し、そっと身体を抱き起す。

「……優しいのねえ」

「はい。勝者は、敗者に情けを掛けるものですから」

「嫌味。前のお返しかしら?」

「そんなものです。あの……一つ、聞いていいですか?」

「……何?」

「どうして、神器を解放した時、いきなり最強の技を繰り出したんですか? あなたの神器なら、試合会場に液状の毒を散布して私を追い詰めたりすることもできたはずです」

「……別に、意味なんてないわ。ただ……あなたを見ていたら、昂っただけ。だから思い切りやりたくなった、ってところ」

「……そうですか」

エミネムがほほ笑んだ瞬間、デボネアがエミネムの首に爪を刺した。

驚くエミネム。だが、すぐに痛みも、疼きも消えた。

「……毒、消しただけ。はぁ~……なんだか、自分らしくなかったかも」

「……あの、デボネアさん。私たち、お友達になりませんか?」

「はあ?」

「その、なんといいますか、私……あなたのこと、そんなに嫌いじゃないので」

「…………っぷ」

デボネアは笑い、立ち上がった。

そして、ランスロットの方に歩き出す。

「……ま、いいけど。ああ、女同士で楽しみたいってことなら、相手してあげてもいいわ。私、男だけじゃないからね」

「え、あの、どういう」

「ふふ、じゃーね」

デボネアは、軽く手を振ってランスロットの元へ。

もう、エミネムの方を見ることはなかった。

◇◇◇◇◇◇

ランスロットの元に戻ったデボネアは、ランスロットを素通りしてベンチに座った。

「デボネア。あなたは、変わりましたね」

「……はあ?」

ランスロットが微笑み、デボネアの元へ。

そして、肩にポンと手を乗せる。

「最後の一撃、素晴らしかった。あなたの純粋な一撃……美しいと思いましたよ」

「……あっそ」

そっぽ向くデボネア。だが、耳が少し赤くなっていた。

すると、イフリータが間に割り込む。

「こほん!! ふん、デボネア……最後の一撃、あれだけは評価する。だが貴様、戦闘前に毒を撒いたな? その件に関しては、あとでしっかりお父様から御叱りがあるから、覚悟しておけよ!!」

「はいはい……」

「お父様!! 次は私が参ります!!」

「いえ、お待ちください」

すると、なぜか舞台にバーミリオンが上がり、巨大な『槌』を振り回していた。

「がっはっはっは!! もう我慢できん、次はワシだ!! さあさあガキども、上がって来い!!」

どうやら、我慢できなくなったらしい。

ランスロットは苦笑し、反対側にいるラスティスを見た。

ラスティスは肩をすくめ、青ざめたルシオの肩をバンバン叩き、殺し屋のような目をしているイチカはすでに舞台に上がっていた。

ランスロットは言う。

「イフリータ、よく見ておきなさい」

「は、はい。あの、バーミリオンという傭兵ですよね……タダ者では」

「違います。見るのは、ルシオです」

「え……あの、素人ですか?」

ルシオはブルブル震え、背中に弓を背負い、腰に剣を差していた。

着ているのは兵士支給の防具。どう見ても新兵である。

だが、ランスロットは言う。

「才能……その一点だけで見れば、ルシオは間違いなく、この国始まって以来の天才です」

「……お、お父様より、ですか」

「ええ。間違いなく」

ルシオが舞台に上がると、バーミリオンに向けてペコペコ頭を下げていた。