軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

再戦 エミネムVSデボネア①

エミネム、デボネアは互いに向き合い、睨み合っていた。

ボーマンダがその間に入り、試合の説明をする。

「神器は使用可能、だが『臨解』を使用することは厳禁だ。もしルールを破った場合、厳しい罰を与える。それと……相手を殺害、または再起不能になるような後遺症を与えることも禁止する」

「「…………」」

互いに頷く。

ボーマンダは、エミネムよりもデボネアを見て言っていた。

だが、少しだけ眉を潜める。

(……最初に見た時は、ただ神スキルに甘えた殺し屋にしか見えなかったが……フン、なかなかいい顔をするではないか)

最初、エミネムと試合をした後、毒に侵された娘を見て、ボーマンダはデボネアを殺すつもりだった。たとえランスロットが間に入ろうと、デボネアを殺すこと込みでランスロットの策略だろうと、娘の命を危機に追いやったデボネアは生かしておくつもりなどなかった。

だが、ラスティスが恐怖を与え、エミネムを治療させた……その件に関しては感謝していた。

そして今、こうして娘と向かい合っている。

(もし、何も変わらない殺し屋気取りのガキだったら、全て終わった後に殺すつもりだった。が……その心配はなさそうだ)

ボーマンダは二人から離れ、手を挙げる。

「それでは、互いに全力を尽くせ……始めッ!!」

デボネアが五指を開き、エミネムが槍を構え、戦いが始まった。

◇◇◇◇◇◇

エミネムは、風神器ビーナスゴスペルを構え頭上でクルクル回転させた。

「へえ、槍……」

デボネアが呟く。

この神器の最も優れているところは、その使い勝手の良さだ。

神器は、顕現させるだけでも疲労する。だが、この槍は日常使いとしても疲労が少なく、エミネムは常に出し入れできるよう訓練を続けた。

おかげで、今は剣よりも使いやすいメインウエポンとなっている。

「旋風六槍」

そう呟くと、エミネムの周囲に風の槍が五本、ビーナスゴスペルの形状をした槍が浮かんだ。

「参ります!! 『六連連牙』!!」

五本の槍、そしてエミネムの持つビーナスゴスペル本体による連続突き。

風の如き速度。デボネアとの距離を一瞬で詰め、中距離からの連続突きにデボネアは目を見張る。

だが……デボネアは態勢を低くし、まるで幻影のように分身した。

「『 幻惑毒(ファンタズマ) 』」

「ッ!?」

分身。だが、その姿は揺らいでいた。

数は二十以上。そして、幻影の一体がエミネムに向かって来る。

「『 毒魔爪(ヴァイパー) 』!!」

「くっ!?」

両五指による爪の斬撃。

エミネムはバックステップで躱すが、すでに背後に別のデボネア……背後だけではない、左右、上下……なんと、地面から幽霊のようにデボネアが迫っていた。

ギョッとするエミネム。だが、歯を食いしばり自分を竜巻で包むと、幻影のデボネアが消えた。

そして、目の前にデボネアが。

「───っ!!」

「っ!!」

エミネムは首を思い切り傾け、デボネアの爪を躱す。

デボネアも、まさかこの距離で躱されると思っていなかったのか、驚きに目を開いて一瞬でその場から離脱。

エミネムの頬に、一筋の切り傷が走り、血がつぅーっと流れた。

そしれ、気付いた。鼻と口を押えたが、すでに遅い。

「ふふ、気付いた?」

「……無色、無臭の、毒」

「正解」

「……あなた、試合開始前に」

「それも正解。でもね、別に気付かれなきゃ反則じゃないの」

デボネアは、試合開始前、エミネムと向かい合った時、すでに毒を散布していた。

エミネムは気付かなかった。そもそも、ラスティスを始め七大剣聖、そしてそれに準ずる者たちが集うこの場で、このように堂々と不正をするとは思わなかったのである。

「幻惑毒。その名の通り、吸うと幻覚が見えるの。どう? たくさんの私があなたを襲う光景……実際は私本体だけで、残りは全て幻影だけど」

すると……エミネムの視界が歪んだ。

頬についた僅かな切り傷から、毒が混入したのだ。

そして、エミネムの心臓が高鳴り、胸を押さえる。

「!?」

「フフフ……ねえ、知ってる? 人間って、痛みや苦しみには態勢ができちゃうの。でもね……『快楽』には贖えない」

身体の奥が、妙にムズムズした。

頬が紅潮し、足が震える。

「拷問訓練で、痛みに耐える訓練はよくあるの。私も受けたことあるわ……敵に掴まって、貴重な情報を吐かせるためにまずやるのが拷問。殴り、蹴り、髪を切られ、皮膚を焼かれ、爪をはがされ、指先に釘を打たれ……それはね、訓練で耐えることができる。脳が痛みを遮断しちゃうから。でも、快楽は違う……気持ちいいコトは、抗えないの」

「……ぅ、ぅ」

「ふふ、ダメ押し……」

デボネアが両手を交差させると、白濁した液体がドロドロと溢れ、形となる。

両腕に、まるでムカデのような『鞭』が握られていた。

「私の毒神器……『カデュカ・ペンドゥーラ』で、お仕置きしちゃう」

鞭からは、ぼたぼたと白濁の液体が滴り落ちていた。

エミネムは荒い息を吐きながら言う。

「……あなた、少しは変わったと思いました、けど」

「変わったわ。命が惜しいから、殺す相手と、犯す相手を選ぶようになっただけ。あなたのお師匠様に殺されたくないもの」

「……ぐっ」

「安心して? 殺しはしない。でも……脳がハジけるような快楽で、溺れさせてあげる」

「…………」

エミネムは深く息を吐き、ゆっくりと構えを取る。

「……ふぅぅ、いいでしょう。この快楽を身に宿したまま……あなたを、倒してみせます」

「あら楽しみ」

エミネム、デボネアの戦いは、佳境に入ろうとしていた。