軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25.15歳になりました

そんなこんなで死に戻って5年の月日が経った。

つまり私は15歳。あと半年で、あの屑と出会った学園へ入学することになる。

「さて。そろそろ本気で、私自身を磨かないとね」

見た目って、自信につながるからね。前の私じゃ、カモにしかならないのよ。今度の私は、狩人にならないと。

資金と信用は、もう十分だろう。本格的に戦闘準備に入らねば。

「あらゆる(娼館)テクニックを駆使して、魅せてやるわ。全生徒をね!」

ほーっほっほと腰に手を当て、高笑う。

これ、なんか悪役っぽくて楽しいわね。ド屑を叩きのめした後、このポーズで笑ってやろう。もっと美しく見える角度を練習しよっと。

クレアが鏡の後ろで拍手をしてくれている。

「お嬢様が楽しそうにされていると嬉しいです」

応援してくれてる人が傍にいてくれる。この幸せを守るために。絶対に、負けない。

それにしても、一度目の学園生活は本当に苦痛だった。苦痛しかなかった。

何の対策も取らずに受けたハリケーンの被害は大きくて復興は進まず、当時の領地の経営は破綻ぎりぎり。

三女でしかない私は、姉たちのお下がりの制服を着て、お下がりの教科書と筆記用具で通っていた。

侯爵家でありながらヴァロー家が窮乏していることは知れ渡っていたから、クラスメイトたちが通うカフェも劇場も一度も足を踏み入れたことすらなかった。誘われたこともない。

当然だ。お金が無さ過ぎていつ降爵なるか分からない侯爵令嬢などにこびへつらっても、腹が立つだけで何のうまみもない。仲良くなる価値がない。

必要最低限以外、誰とも会話をしないで終わることもある日々。下位貴族家の令嬢にすら相手にされなかった。

いつも、ひとりぼっちだった。ギャレットから、話し掛けられるまで。

「娼館生活よりずっとずーっとマシなんだけどー。世界が狭かったから、あの程度で地獄だと思ったのも仕方がないわよね。まったく甘ちゃんだったわぁ」

より酷い生活を知っているからといって偉い訳じゃない。知ってから同じようなお金のないボッチ生活を送ったのだとしても、無視されて辛くない訳でもないと思う。

それでも、今の私なら、あの男の誘惑なんか簡単に跳ねのけることはできる。

「神様のきまぐれか。感謝しないとね。領地だけじゃなくて隣接する他領の人々の命も、繋ぐこともできたしね」

当たり前だけれど、ハリケーン通過後、近隣の領地から緊急での援助を申し込まれた。

我が領が潤っていることは有名だし、表立って備蓄してるとは言った訳でもないけれど、最近領内で作り始めた乾燥パスタが携行しやすい保存食であることも知られていた。

「前の時は誰もヴァロー侯爵領を、助けてくれたりしなかったけどねー」

でも、今回、私はその援助の手を差し伸べることにした。両親にもそう働きかけたし、私の個人資産からも各地の教会へ寄付を出した。

だって、結局は一番割を食うのは民たちなんだもん。

娼館には、災害ガーとかじゃなくっても、いろんな理由で食い詰めた家から娘たちが売りに出されてきた。

ああいうのはよくない。本当によくない。

兄弟姉妹の一人だけが犠牲になるとか。本当に駄目。

希望失って売られてくるからすぐ死んじゃうし。子供ってこともあるかもしれないけど。

親の酒代として売られてきた娘もいてさ。ホントやってられない。

子供が泣く声は、本当にきらいだ。

笑ってる声だけ聴いていたい。

と、言う訳ですね!

二度目の学園生活、入学初日から、私は英雄と謳われ崇拝を捧げられていた。

「ヴァロー侯爵令嬢さまよ!」

「あぁ、女神のようにお美しい」

「見目麗しいだけじゃないわ。そのお心だってお優しくてお美しいのよ!」

見目が麗しいのは、化粧上手いだけです。

でもって心が綺麗かどうかってところには、大いに疑問が残る。子供が売りに出されるのを阻止したかっただけだし。

「ヴァロー侯爵令嬢ターシャ様。どうか、我がデレル子爵家より感謝をお伝えさせてくださいませ」

乾燥地帯にハリケーンって凄いことになるのね。知らなかったから吃驚したわ。

大量の砂が暴風で拭きあがり、雨と一緒に吹き荒れるんですって。

それなのに、ハリケーンが過ぎていくとあっという間に水分だけが蒸発して飛んでいき、固まった砂が街中を覆いつくしてて。こっわ。

話を聞いただけでも怖すぎたので、我が領で働いていた職人さんたちに手元に残っていた資材を持っていって復旧に当たって貰ったのよ。

「まぁ。我がリュシュパン伯爵家より敬意と崇拝を捧げる方が先でしてよ!」

無事だった家畜で作った燻製肉の取引は、今後は是非とも我が領優先で! 末永いお付き合いをよろしくお願いしますわ。じゅるり。

「いいえ、俺の愛を捧げさせてください。あぁ、愛しのターシャ嬢! なんて美しいんだ」

間に合ってますの。失礼します~★

競い合うように、通りすがりの令嬢令息たちから心を捧げられる。そのすべてに「ありがとう。でもお気になさらないで。当たり前のことをしただけですもの」と、足も止めずに笑顔で受け流していく。

うへぇ。さすがに作り笑顔で頬が引き攣るよぅ。