作品タイトル不明
第34話 ヒロイン達のお茶会
大型ショッピングモールの中にあるカフェにひときわ目を惹く女子高生がいた。
その3人は七瀬ひよりと芹澤美鈴と月見星乃。つまり、いつものメンツである。
「ふぅ〜今日は結構いろいろとまわったねー」
ぐーと体を伸ばしながらひよりは楽しそうに言った。座っている椅子の左右には本日の戦利品が置かれている。
本来、テラス席がオシャレなカフェに行く予定だったが雨が降ったので予定を変更し、ショッピングモールで服やバックなどの買い物を楽しんでいた。
「星乃、この前はお疲れ様。これ、お納めください」
美鈴はひよりと二人で買ったピーチマンゴーフラペチーノをこの前のボーリング大会の参加報酬として星乃に渡す。
「ん、ありがと」
星乃は美鈴から受け取ったフラペチーノを一口飲む。フローズンされたピーチマンゴーの甘みが、疲れた体に染み渡る。
「ほしのん。すごく大変だったみたいだね。いろいろと変な噂がたっちゃってるし」
「……変な噂?」
オウム返しをする星乃にひよりは頷いた。
「うん。ほしのんが文くんにお持ち帰りされたとか!」
「……………………」
星乃の背中に冷や汗が走る。
「しかも、すでに何回も文くんの家に泊まってる爛れた関係みたいな!」
「………………ほんと、根も葉もない噂よね」
なんなら、その日の夜はあのまま入江の家に行ったし、普通に泊まった。
そんなことは口が裂けても言えないので何も言わず黙っておく。
「美鈴、そういえばどうだったの? 入江となんちゃってデート? したんでしょ。なんでそんなことになったの?」
なんちゃってデートというのがよくわからないが、これ以上この話題を続けるのは不味いと感じた星乃は話題を変えた。
「昨日は本当にいろいろあった」
どこか遠い目をする美鈴。そして、どこから話そうかと長考しやがて口を開いた。
「まず、私が昼休みに入江に告白して振られた所から始まるんだけどー」
「「振られた!?」」
「うん」
慌てふためく二人の言葉に対して平然と頷く美鈴。
「え、ちょ、ちょっと待って……? え? みーちゃん、文くんに告白したの!? 昨日の昼休みに!?」
「そう。人生初の告白、振られちゃった。いえい」
どこか楽しげに話す美鈴に困惑する二人。
「それで、結局私は入江のこと異性として好きではないのでは? という結論に至って……」
「「どういうこと!?」」
「私は入江のことをちゃんと好きなのか確認するために、デートしたの」
「……えと、みーちゃんは告白したのに文くんが好きかどうかわからなかったの?」
「うん」
美鈴のドヤ顔に思わず二人は神妙な顔になる。
「……ま、まぁ、そういうこともあるよね!」
ひよりの言葉に星乃は頷く。
ツッコミどころが多すぎる話の展開だが、この友人を相手にして考えるだけ無駄なのだ。
「……そういうひよりは入江のこと、好きなの?」
「へっ!?」
まさかのキラーパスに思わず面を喰らうひより。思わず裏返った声を出してしまう。
「な、なんでいきなりそんなこと……」
「いきなりじゃないよ。前から気になってた。ひよりは入江のこと、意識してるような気がするから」
「それは……」
美鈴の澄んだ瞳がひよりへと向けられる。
それに対し、ひよりはぎこちなく深呼吸をして答えた。
「好きだよ。文くんのことは好き、大好き。だけど、これはきっと恋ではない……と思う」
「そうなの?」
「だって、天馬の時とは違うから……天馬に対してはドキドキしたり、ときめいたり、他の女の子と仲良く話してたら、胸が痛くなって苦しかったり……毎日がキラキラしてた」
再び、大きく息を吸って。
「だけど文くんは違う。私にとって文くんは……ふかふかのベッドというか……一緒にいると落ち着いて、とても居心地が良い。そんな存在……かな」
だから、私だけを見て欲しい……他の女の子なんか見ないでほしい。
他の女の子と話しているところを見ると不愉快で不快に感じてしまう。
天馬の時とは違う真っ黒で独占的なその想いは口には出来なかった。
本当はずっとぞばにいて欲しいと思うし、彼が自分から離れて行ってしまうことを心の底から恐れている。
天馬には我慢出来ていたことが文学に対しては我慢出来なくなっている。我が儘になっている。
そんな自身の想いをそっと仕舞うひよりを美鈴はじっと見つめ、納得したようにうなずいた。
「…………そっか、うん。わかった。ひよりが恋じゃないって言うんだったら、遠慮はいらないね」
「美鈴? あんた何を言ってるの?」
「話の続きだけど……昨日、文学となんちゃってデートをした帰り道で改めて告白したの」
「み、みーちゃん?」
「私、文学と付き合うことになった」