軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第22話 推しヒロインとお出かけ

初の学級長の仕事は書類運びだけでは終わらなかった。

七瀬と職員室に行った後、花壇の水やりや飼育しているニワトリのお世話などなど。

……やってることが学級長の仕事の範囲を超えていたような気がする。

窓を見ると夕暮れ時で部活動も後少しで終了する時間だ。

「みーちゃんとほしのん。先に帰ってもらって正解だったね」

「だねー……思ったより時間かかっちゃったし」

つまり、今日は七瀬と二人で帰ることになる……のか。

……だったらこの前に約束してたショッピングモール巡り、今日行けばいいのでは?

「あ、あの、文くー」

「七瀬さん」

「え? あ、ど、どうしたの?」

「この後何か予定はー」

あれ? これって、もしかしたらデートのお誘いみたいにならないか?

「え? えと……と、特にないよ?」

特にない。ならショッピングモールに誘っても大丈夫なはず。なのに、なんだろうこの緊張感は……

「……………………………」

「ぶ、文くん?」

か、覚悟を決めろ。うじうじしているこの時間が一番辛い!!

「あーその……よかったら、このあと一緒にショッピングモール行かない?」

「……へ?」

「あ、いやね……この前約束してたでしょ? 二人で行こうって。今日ちょうど二人っきりだしどうかなって〜あれ、七瀬さん?」

「………………」

隣に誰もいなかったので思わず振り返ると七瀬はぽかんとした表情で立ち止っていた。

も、もしかして、七瀬は覚えてない!?

え? なにそれ、そんな約束したっけ? 困るな……私、入江くんとはそういうのじゃないのに……みたいな感じか?

「……覚えててくれたんだ」

「え? も、もちろん」

「うヘヘ、そっかそっか! 実は私も誘おうと思ってたんだ!!」

「そ、それなら、良かった」

「そうと決まったら、出発だね!」

ほっと一安心し、緊張が解かれる。

とりあえず、最悪の事態にはならなかったみたいだ。いや、本当、断られなくて良かった。

軽い足取りで鼻歌を歌う七瀬さん。今までにないくらい上機嫌だ。そんなにショッピングモールに行きたかったのだろうか。

「あ、文学! ひより!」

「あれ? 天馬じゃん」

俺たちに気付いた天馬が手を振りながらこちらへとやって来る。

相変わらずのキラキラとした主人公オーラが眩しい。

「二人ともこんな時間まで残るなんて珍しいな。何かあったのか?」

「文くんと一緒に学級長の仕事をね……天馬こそどうしたの?」

「俺は生徒会の仕事だよ」

「あ、そっか。天馬って生徒会長だったね。忘れてたよ」

「おい、忘れるなよ。これでも結構頑張ってるんだぞ」

ごめん、その設定、俺も忘れてた。

「文学たちも帰るのか?」

「うん。鞄を持ってるってことは……天馬君も帰るの?」

「そそ、ちょうど一花と待ち合わせしててー」

「天馬くーん……あれ? ひよりちゃん! 文学くん!」

俺たちを見つけた瞬間、天使のように明るい笑顔を見せる一花。トコトコとこちらへ向かって走って来た。

「はなちゃん〜」

「ひよりちゃんっ」

七瀬と一花はいえーいと楽しそうにお互いの両手をタッチする。

うん。うん。仲が良さそうで俺も嬉しいよ……

「文学くんっ」

「え? 俺も?」

「もちろんですっ」

「……えと、い、いえーい」

七瀬と同じように両手でタッチすると一花は満足そうに微笑んだ。

「お二人とも、今から帰るところですか?」

「…………うん。ちょうど、二人で学校を出るところ」

今の間は天馬たちにショッピングモールへ行くことを話すのか考えてたな。

まぁ、この二人に俺と一緒にショッピングモールに行くーなんて言ったら変な誤解されるだろうし。

「そうだ。よかったら今からショッピングモールにも遊びに行かないか? 今まで4人で遊びに行くことなんてなかっただろ?」

「いいですねっ! 私、この4人で遊びに行きたいです!」

まさかの主人公&ヒロインカップルのお誘いが来てしまった。

ついさっき、七瀬と一緒に行くことになったのだが。

…………いや、この4人で遊びに行くのも悪くないんじゃないか?

4人になってしまうけどショッピングモールで買い物する目的は果たすことは出来るし、逆に二人きりだと他の生徒に見られてしまった時にいらぬ誤解を生んでしまいそうだし……

『一緒に行かない? ショッピング……二人で』

…………………………

「ごめん二人とも、せっかくのお誘いだけど、実は俺たちこれから……で、デートなんだ」

「でっ!?」

俺の発言にめちゃくちゃワタつく七瀬。

ですよね。いきなりデートとか言ったらそうなりますよね。

でも、こう言ったら一花と天馬はすんなり引き下がってくれる……気がする。おそらく、多分、きっと。

「!! そうだったんですか!? ひよりちゃん!?」

「え、あ、う、うん……じ、実はそうなんだ〜」

「あ、ご、ごめん……俺、余計なこと言ったよな」

「いやいや、そんなことないよ。正直誘ってくれてすごく嬉しかったし、また誘ってくれると嬉しい」

「文学……」

コツンとグータッチをして友情を深め合う俺と天馬。

「文学くん!!」

「は、はい!?」

「私!! 信じてました!」

なにを?

興奮気味に距離を詰めてくる一花さん。目がすごく輝いているのはなぜだろう。

「あ、ありがとう……?」

「さぁ、天馬くんいきましょう。これ以上お二人の邪魔をしたらダメですッ」

「そうだな! またな! ひより! 文学!!」

「うん……ばいばい」

「ば、ばいばい〜」

さて、嵐が過ぎ去り、再び俺と七瀬は二人きりとなった。

「………………」

「………………」

そして生まれる沈黙。

すいません。俺が変なこと言ったせいですよね。ぶっちゃけ、こうなると思っていました。

誰か助けてください。

とりあえず、七瀬にはちゃんと説明しなくては……

「でっ、デートだったんだね……あはは、ちょっとびっくりしちゃった」

「え? いや、さっきのは二人をすんなり引き下げるための作戦で、これはデートなんかじゃなくて、つまり、その……」

「……デートじゃないの?」

「あ、デートです」

し、しまった。七瀬の寂しそうな表情を見て反射的にデートということにしてしまった。

すっと七瀬は頬を赤めながら右手を差し出してきた。

流石の俺でもどういう意味か理解している。

「……デートだったらさ、これくらいはしないと……だよ」

「……あ、はい」

覚悟を決めて俺は七瀬の手を握った。

なんちゃってではない初めてのデート……しかも相手は俺の推しヒロイン。

俺、明日死ぬかもな。