軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第12話 推しヒロインと告白

昼休み。

友達と購買に行く人や机を寄せてみんなで弁当を食べる人。それぞれが動き出す中、俺は席から動けずにいた。

昨日、俺は七瀬と月見さんと芹澤さんと一緒にご飯を食べていたのだが……今日も一緒に食べてもらえる確証はない。

いざ、七瀬たちのところに行っても歓迎されなかったらどうしよう。

え、なんか今日も来たんですけど……みたいな空気されたら立ち直れないぞ。

くそ、地球の重力のせいで動けない。重力のせいで。

「入江、何一人ぽつんとしてるの?」

「せっ、芹澤さん」

ヘタっている俺に声をかけてくれたのは不思議そうに俺を見つめる芹澤さんだった。

「お昼、私たちと一緒に食べないの?」

「え、あ……一緒に食べてもいいんですか?」

「え、いいでしょ。なんでだめなの?」

「あ、うん……いや、一緒に食べます」

よかった……どうやら今日も一緒にご飯を食べてもいいらしい。

「……もしかして、このやりとり毎回やるの?」

「もちろん、なんたって意思確認のプロセスは大事だから」

「……入江には心のフレンドリーさが足りないと思うよ」

芹澤さんに呆れ顔で言われてしまった。

ふ、フレンドリーさか……

救いの手を差し伸べてくれた彼女に心から感謝しつつ、七瀬と月見さんの元へと向かう。

しかし、そこには月見さんしかいなかった。

「あれ、ひよりは?」

「んー? なんか呼び出されてた。長くなりそうだから先食べといてだって……ってなんで入江も居んの」

「おいおいツッキ〜そんな冷たいこと言わないでくれよ」

「は? 何こいつ……キモいんだけど……」

「え、あ……すいません」

そ、そんな……頑張ってフレンドリーさを出したのに……

「星乃ずるい……私もあだ名で呼んでほしい」

「突っ込むところそこ?」

ぷくっとむくれる芹澤さんにお呆れながらつっこむ月見さん。

「長くなりそうって……七瀬はどんな用事なんだろう」

「どうせ告白でしょ」

「そっか、告白か……告白!?」

「なに驚いてんの?」

え、だって……告白だぞ!? 告白!!

驚いているのは俺だけのようで、月見さんも芹澤さんも慣れたような感じだ。

いや……実際に慣れているんだろう。この3人は学年の中でも屈指の美少女グループ。告白なんて日常茶飯事なのだろう。

まぁ、前世では俺にとっても告白なんて日常茶飯事だった。

振られる側だったけど。

「……俺も少し席を外すから、先食べといて」

「え、まさか……告白現場に行くつもり? ヤバー」

「いや、購買に行くだけだから!!」

明らかに引いている月見さんに対してしっかりと否定しつつ、購買へと向かう。

それにしても告白かぁ……今の七瀬ならどんな返事をするのだろう。

まだ、そういうのはいいのか、それとも新しい恋を求めて応えるのか。

もしかしたら、俺の役割が終わるのもそう遠くないかもしれなー

「よかったら、俺と付き合ってくれないか?」

おおっという歓声と共に告白セリフが聞こえた。

すぐさま、声がする方へ振り向くとそこには告白するイケメンのバスケ部キャプテンと告白されている七瀬の姿が。

な、なな……中庭で告白……だと?

多くのギャラリーがいる中であんなに堂々と……無敵か? 彼は。

「あの笹原先輩に告白されるとか、普通なら断らないでしょ……」

「だねー断らないというか、断れないというか」

「最近、七瀬って……あれだったし。付き合うんじゃない?」

見ている多くのギャラリーがざわざわと騒ぎ出す。

まるで告白の成功を確信している様な……そんな雰囲気だ。

もしかして、この空気にするためにあえて中庭で?

さ、策士だ……さすが恋愛上級者。笹原先輩……彼こそが歴戦の猛者なのではないのだろうか?

「ごめんなさい。私、今は誰とも付き合う気はないです」

頭を下げて丁寧に断る七瀬。その光景に余計周囲はざわついた。

「そうか……ひよりちゃんの事情は知ってる。だからこそ、俺はひよりちゃんの支えになってあげたいんだ。だからー」

「大丈夫です。私はもう、十分過ぎるくらい支えてもらってますから」

そうハッキリと伝えた七瀬を見て、なんだか嬉しかった。

俺はちゃんと七瀬を支えていられたのだと、そう自信が持てる様な気がして。

ふと、笹原先輩と目が合う。

俺を笹原先輩の目は明らかに敵意が込められていた。

「確か……入野くん……だったかな? ちょっと噂になってるよ。俺が思うに、きっとひよりちゃんの弱みに漬け込んでいると思うんだ」

お前が言うなと心の底から叫びたくなったが、俺は鋼の精神を持っているので、なんとか抑えた。

あと、俺は入江だ。覚えとけタコ。

「それに、彼は君の隣にいる人間として相応しくはー」

「あの、私の大好きな人のこと、悪く言うのやめてもらっていいですか」

「……え」

表情は見えない。

しかし、七瀬の発した声は明らかに嫌悪感が滲み出ていた。

「文くんは先輩が思っている様な人じゃありません。先輩よりずっと素敵な人なんです。碌に文くんのことを知らないのに勝手なことを言うのはやめてください」

「そ、それは……その」

……キレてる。明らかに七瀬がキレている。

みんなに優しくて明るい七瀬でも一人の女の子だ。友達が悪く言われたら怒るし、口調だって強くなってしまうだろう。

しかし、怒りという感情と共に拒絶という感情も垣間見える。

「失礼します」

七瀬は一切先輩の方を見ることなく教室へと帰っていく。

周りの空気が凍る中、先輩はただ俯くしかなかった。

「…………」

購買の商品を眺めながら、先程の七瀬を思い出していた。

あんなに怒った七瀬ひよりは『てんいち』では見たことがなかった。ああゆう場面では、こう……泣きながら怒って否定する。そんなイメージがあったのに……

「やっほー文くん〜」

「うわっ」

とんと肩をぶつけてくる七瀬。

あ、あれ? 教室に戻ったんじゃ……

「ど、どうしたの?」

「んー? さっきね。嫌なことがあったから甘いものでも食べようかなって」

「そ、そっか……」

嫌なこと……先程の告白現場がリフレインされる。

きっと、今日の告白で、間違いなく俺と七瀬の関係性に対してあれこれ噂が流れるだろう。

「あのね……文くん」

「ん?」

「私はさ、人の流す噂とか全ッ然気にしないから……だから」

七瀬の視線はそのままで俺の袖をぎゅっと掴む。

「居なくならないでね?」

「え? うん……というか、そばにいるって約束したでしょ」

俺は七瀬と約束した。

彼女がこの先どんな選択をしても……俺はそばにいると。

もし、俺が距離を置いてしまったら、約束を破ることになってしまう。それだけはあってはならないことだ。

「……そうだったね」

そういうと、七瀬は嬉しそうに微笑んだ。

ただ、今日のことが天馬や一花に知られたその時は……しっかりと彼らと向き合わないければいけないだろう。

いずれ来る『その時』を思いながら購買を後にした。

「あの、すいません。入江文学くんは居ますか?」

放課後。帰ろうとした瞬間、教室がざわめき始めた。

出入り口に視線を送るとそこにはメインヒロインである綾部一花がいた。

七瀬たちはすでに教室を出ていてここにはいない。

「あ、入江くん」

俺に気づいた瞬間、ぶんぶんと手を振って来るメインヒロインの一花さん。周囲の反応をスルーしつつ一花の元へ。

「え、と……綾部さん。だったよね。俺に何か用ですか?」

なんか、最後敬語になってしまった。

「もうっ、どうして敬語なんですか? 私と入江くんの仲じゃないですか」

クスクスと面白そうに微笑む一花。

え、なに……? ちょっと、怖いんだけど……私と入江くんの仲ってなに?

「えと、俺たち初対面!! だよね? 初めまして! だよね?」

必要以上に初対面ということをクラスメイトにアピールする。

「……ハッキリ言った方が良かったですね。言いなおします」

一花は背伸びをして俺の耳元で囁いた。

「文香ちゃん。久しぶりにお話ししませんか?」