軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

武器屋の常連ってどう考えてもヤバイ人だよね

次の日。なんだかんだで遅くまで起きていたので遅い起床になった。しかも交代で見張りをしていたため、寝た気がしない。

疲れは残っているが、軽い朝食を済ませたらテントを撤収して出発だ。

「ルナ、クレアに強化魔法を掛けてくれ。練気法と合わせれば、かなり強化されるだろ?」

今日はクレアが1人遅れることになると思う。リーズが1日で成長しすぎた。

「無理よ。同時に発動すると反発するから」

「え? そうなの?」

「はい。昔から研究されていましたが、不可能だという結論に至りました」

残念……。お手軽チート戦士は無理なのか。今日は走るだけなので、クレアには強化魔法で走ってもらおう。

疲れないから昨日よりはハイペースになると思う。

王都に着いたのは、昼の鐘が鳴る頃だった。遅い朝食だったので、昼は食べずにギルドに向かった。

「こんにちは。調子はいかがですか?」

今日もエリシアさんが迎えてくれた。今日もギルドは閑散としている。カウンターの奥で働く職員は居るのだが、フロアは駐在らしき冒険者が居るだけだ。

まあ、昼間からギルドで遊んでいる冒険者は居ないということだな。みんな真面目だ。

「ああ。ぼちぼちやっているよ。昨日狩りをしてきたから、素材を買い取ってほしい。解体済みだ」

そう言って、1体分の毛皮と牙をカウンターに乗せた。アンチマテリアルライフルで撃ち抜いた、比較的程度が良い素材だ。

「グレイウルフですね。きれいに倒してあります。でも、解体が雑なので増額はできませんよ?」

雑になるのは仕方がないと思います。あの状況できれいに解体できる奴が居たら仲間になってほしいよ。

ちなみに、解体は本来ギルドの仕事だ。持ち込む前にきれいに解体してあれば、その分の手間賃が上乗せされる。

「わかっている。まだ300匹分以上ある」

「また、そんなに……」

エリシアさんは驚いたような顔をしながらつぶやいた。

驚くのはこれからだよ? ボロッボロになった(解体のせい)グレイウルフがいっぱい出てくるよ?

ちなみに、デカい奴はそれなりに丁寧に解体した。元がボロボロだったから、あまり期待していないが。

「とりあえず、フロアに並べるから査定を頼む」

そう言って、俺達で手分けをして素材を出した。並べる、というより積み上げるだな。

最後に、デカい奴を引っ張り出して雑魚ウルフの山の横に据えた。

「え? これは……どうされたんですか?

目撃情報すら入っていませんよ?」

「森の入り口でキャンプをしていたら襲われた。危険そうだったから狩っただけだ」

エリシアさんは目を見開いて聞いてきたので、答える。

コイツが暴れたらみんなが怪我をするじゃないか。

「グレイウルフのリーダーで間違いないわよ。このグレイウルフは、全部コイツの手下ね」

「そうですか……。みなさんに一つ依頼を出してもいいですか?」

「何だ、指名依頼か?」

「いえ、通常依頼です。みなさんが引き受けないのであれば、掲示板に貼り出します。

みなさんでしたら出現した場所を詳しく知っておられますし、同程度の危険があっても生還できますので。

これだけの群れが森の外側に来たということは、森に何か異常が発生している可能性があります。

この群れが居た付近だけで構いません。異常な兆候が無いか確認してきていただきたいのです」

悪くない依頼だ。薬草採取のためにもう一度あの場所へ行くつもりだし、ちょうどいい。

「みんなはどう思う?」

「良いと思います。また何かに遭遇するようでしたら、間違いなく森の奥に異常があります」

「そうね。いいと思うわ。たぶん高ランクに設定しにくい依頼よ。私たちが受けなければ放置されるかもしれないわ」

「……? いいよー」

リーズはよくわかっていないみたいだから放置。

受けない理由は見当たらないな。ついでの依頼だから報酬は激安でも問題ない。

「報酬とランクはどうなる?」

「クレアさんが予想する通り、Fランクの依頼になります。元々危険が少ないエリアですので報酬は大銀貨2枚です。

安い依頼で申し訳ありませんが、受けていただけると助かります」

「いいぞ。ただし、受けるのは俺じゃない。リーズだ」

「あたし?」

「リーズはまだランク無しだからな。Fランク依頼ならちょうどいい。

俺たちがちゃんとフォローするから、リーズがやってみろ」

裏技だ。

本来ならFランクの俺がランク無しのリーズを指導することはできない。面倒な話だが、このルールはランクアップの不正を防ぐための措置だ。

しかし、リーズの指導係はクレアで、俺の指導係もクレア。

同時に指導されているという立場を利用して、リーズの依頼を手助けすることができる。

高ランク冒険者である指導係が監視をしているという建前だ。もし指導係が不正に手を貸せば、即除名処分になる。

「わかったー。やってみる!」

リーズのやる気は十分だな。冒険者リーズの初依頼だ。

張り切っているリーズに水を差すようだが、これから武器屋にも行くからな。

査定の結果、ゴブリン8匹とグレイウルフの素材、全て合わせて金貨786枚と大銀貨4枚だった。

細かい内訳は見ていないが、デカい奴の買取金額は金貨80枚だった。過去最高額である。

ただし、きれいな状態だと金貨200枚だってさ……。やりすぎは良くないよ、何事も。

全体で見ると半値以下だ。ほぼ牙で稼いだようなものだな。

報酬を受け取ってフロアの椅子に腰掛けた。

クレアには80枚の金貨を渡す。1割よりも多いのは見舞金だ。

「本当にこんなに貰っていいの? アタシほとんど役に立ってないわよ?」

「大丈夫だ。十分役に立っているさ。不服ならこれから頑張ってくれたらいいよ」

正直に答えれば「居なくても何とかなった」なんだけど、居てくれて助かったのも事実だ。

クレアが居なかったら、リーズを抱えて逃走することになっていたかもしれない。その場合、今回の稼ぎはゴブリンの大銀貨8枚のみという残念な結果になっていた。

「あんたたちは分けないの?」

「ああ。俺が全額預かって、買い物の時はすべて俺が払う」

「へぇ。変わったやり方ね。よく問題が起きないものだわ」

俺もそう思う。普通は問題が起きるだろうなあ。

武器と防具はみんなの共有財産ということになっているが、普通ならこれだけでも揉めそうだ。

「私がコーさんのパーティを抜けることはありえませんので、問題ありません」

「あたしもだよー。このパーティ抜けたら行く所ないもん」

2人とも嬉しいことを言ってくれる。結局のところ、一番の問題は脱退時の取り分だからな。

パーティを抜けないなら同じ財布にしても問題が起きにくい。あと、この2人が控えめな性格だということも幸いだな。

ルナは堅実な性格だから、リーズは元ド貧乏だから、お金の使い方に慎重だ。

「なるほどねぇ。一生ついていくつもりなら、分けなくても変わらないわね」

クレアがニヤニヤしながらルナとリーズを見ている。

うーん、一生か……。地球に帰るつもりでいたけど、どうすればいいかな……。

まだ悩むことではないな。帰る方法を発見してから考えよう。いざとなったら連れて帰ればいい。

「じゃあ、まず武器屋に行こうと思う。クレアは行きつけの武器屋はあるのか?」

「無いわね。いろいろ店を見て回って、一番良い物を選ぶようにしているわ」

「じゃあ俺たちがいつも行っている武器屋に行こう」

昨日の武器の被害をまとめると、クレアの片手剣が大破、リーズの槍が中破、俺とルナのナイフは刃こぼれ少々。

リーズの槍はまだ修理していない。ナイフでも戦えたし、今日買い換えるかもしれないからな。

俺とルナのナイフは軽く研いだだけ。刃こぼれはまだ残っている。今日の夜、しっかり研ぎ直す予定だ。

クレアの片手剣は残念ながら修復不可能。完全に折れたからな。

いつもの武器屋『大鷲屋武器店』にやってきた。

いつものように狭い店内。今日は4人で入るからさらに狭い。

「アタシ、ここは来たことがないわ。ずいぶん安いわね」

ここは相場よりも安いのか。おっさんはこの値段から更に値引くぞ? あのおっさん大丈夫か?

ここが潰れると困るから、もっとここで買い物をしよう。

「よう。どうした? また壊したのか?」

奥から現れたおっさん。もうすっかり顔なじみだ。

「今日は俺じゃないぞ。彼女だ」

クレアの背中をズイと押しておっさんの前に出した。

「どうした? 得物を見せてみろ」

折れたロングソードを差し出すクレア。どことなく寂しそうで哀愁が漂っている。

まあ、愛剣を折ったんだ。無理もない。

「いい剣だ。残念だがこれはもうダメだな。買い換えるしかない」

「わかってるわ……。無理を承知で聞くけど、金貨30枚でこれと同じくらいの剣はあるかしら」

自分の足であちこちの武器屋を探して回った納得の一振りなんだよな、あの剣。かなりできが良い剣だったみたいだ。俺にはわからん……。

おっさんは「ふむ……」と考え込んでいる。この剣って金貨30枚以上するの? マジで?

俺なら金貨3枚のマチェットの方がいい剣だと思うんだけどなあ……。

おっさんが店内を漁りながら困った表情を浮かべていたので、ちょっと口を出すことにした。

「おっさん、彼女は両刃の片手剣を使っているが、たぶん片刃の方が向いている」

戦い方を見ていて感じたことだ。ロングソードを使っている時よりマチェットを使っている時のほうが動きがいいような気がする。本人は納得しないかもしれないが。

両刃の剣はあまり切れない。叩き切るか突き刺すのがセオリーだ。

両刃の剣で切ろうと思うと、かなりの力がいる。いくら練気法でブーストしたとしても構造の問題だから仕方がない。

なので、クレアはよく切れる片刃を持ったほうがいいと思う。

「え? ちょっと、勝手に決めないでよ」

クレアが怒りながら抗議するが。何の変哲もない普通の一般的なロングソードなんて面白くないじゃん! あ、本音が出ちゃった。

両刃よりも片刃のほうが向いていると思うのは事実なんだけどね。

「いいから。一度片刃を使ってみるといい。

俺のナイフは使いやすかっただろ?」

「そうね……。見るだけよ?」

さて、おっさんはどんな剣を持ってくるのかな。