軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

セクシーの無駄遣い

使徒の2人を回収した後、午後からは教会に乗り込むための打ち合わせをする。

まずはコーリーという人に会い、現状を確認したい。おそらく、この人の近くに術式があると思う。会った時に回収できれば、その時点でミッション終了だ。そうなれば楽でいいな。

「それで、このコーリーという人はどういう人なんだ?」

気になるのは、使徒召喚の真実を知っているくせに使徒召喚に協力する真意だ。

「普段は優しくて、穏やかな方です」

ルナが寂しそうな表情を浮かべて言う。 普(・) 段(・) は(・) という言い方が引っかかるな。

「ちょっと、性格がな……気性が激しいと言うか、恨みを忘れない性格なのだよ。

普段は本当にいい奴なのだ。そしてあまり人を嫌ったり、悪口を言ったりする人間ではないのだが、一度怒ると手が付けられない。

教会に手を貸したということは、絶対に何か考えがあるはずだ」

リリィさんが心配そうに言う。

このコーリーという人、かなり厄介な人みたいだ。あまりお近付きになりたくないタイプだな……。

「この人がミルズに乗っ取られているということは無いか?」

「……絶対に無いとは言い切れませんね。でも、彼女の癖は覚えています。会えばわかりますよ」

どのみち、コーリーには会わなければならないな。

全員を引き連れてゾロゾロと行くような場所じゃないと思うので、希望者を募る。

「じゃあ、明日は教会に潜入しようか。ルナとリリィさんは同行確定として、他に行きたい人居る?」

「行くー! 教会、見てみたいよ」

「ちょ……リーズが行くんならアタシも行くわ。なんだか心配だから」

リーズが即答し、クレアが同調した。結局全員で行くのか……。

「あの……私も同行しても良いでしょうか……」

ルミアが遠慮がちに手を挙げた。

「俺は構わないが、いいのか? 絶対に見つかると思うぞ。敵の本拠地じゃないか」

「目の前で使徒召喚が行われるというのに、こんな場所に隠れている場合ではありません。命を賭してでも、使徒召喚を止めてみせます!」

いや、重いって。ルミアに死なれると困るんだよ。俺の今後の予定が完全に狂う。

でも、ルミアを連れていくのは良い手段かもしれないな。運が良ければミルズをおびき出すことができるかもしれない。

「まあ、いいだろう。ただし、絶対に死ぬなよ。ミルズが出てきた時、戦うのは俺だ。それが納得できるなら、連れていってやる」

俺がそう言うと、ルミアが「でも……」と口ごもる。

「俺はハインツとも戦って、勝った実績がある。ミルズと戦って負けたルミアと比べて、勝つ可能性が高いのは俺だと思わないか?」

「それはそうですが……これは私たちの責任ですし……」

「そんなことは知らない。ルミアが死んだら、俺が困るんだ。俺たちに任せてもらう」

「……わかりました。それでいいです」

ルミアが不承不承に頷いた。絶対納得していないという顔をしている。一応連れていくが、気を配っておいた方がいいな。

「じゃあ、僕たちはお留守番ということでいいのかな?」

アーヴィンが不安げに言う。

しまった。このことを考えていなかった。留守番組はアーヴィンと使徒2人。確実に戦闘力不足だ。この3人は、サイクロプス程度の雑魚で全滅しかねないほどの非戦闘員。正直、ここに置き去りにするにはかなり心配だ。

「それは拙いな……。一応聞くけど、3人はどれくらい戦える?」

「ゴメン……僕はこの体になってから、まだ魔物とは戦ったことが無いんだ。訓練はしているけど、戦力にはならないと思う」

ええ……その程度でよく「ミルズを倒す」とか言えるな。この世界の10歳はこれが標準なのかな。転生チートでクソ強くなっていてもおかしくないのに。

「あたしたちはそれなりに戦えるよ。この前はねぇ、2人の神官さんと協力して、ボアを倒したよ」

うわぁ……だいぶ心配だわ。

この周辺の魔物はまだ未調査だが、ボアよりも弱いとは考えにくい。4人がかりでボア1匹を倒す程度では危ない。

「だいぶ厳しいな……。ルミアも同行すると言うなら、お前らだけをここに残すのは危険だ。誰か1人でも護衛を付けた方がいいな」

この宮殿には、大規模な魔除けの魔道具が組み込まれている。魔物が近付きにくくなる装置だ。アレンシアの街にも使われている。ただし、これは近付きにくくなるだけ。絶対に寄ってこない魔道具ではない。

アレンシアでは、定期的に兵士と冒険者が周辺の魔物を駆除することで安全を保っている。

せめてルミアが残っていてくれれば良かったのだが、非戦闘員の3人だけになると非常事態に対処できない。

「……アタシ、残ろうか?」

クレアが困った顔で呟いた。クレアが残るなら、リーズも留守番になるぞ。リーズは行きたがっているので、できれば連れていきたい。

「いや……そうだな……気は進まないが、ボナンザさんを頼ろう」

ボナンザさんは国の意向にも教会の意向にも流されることはない。自分の良識のみで行動する人だ。訳を話せば協力してくれるだろう。

「ボナンザさんを巻き込んでもいいのですか?」

「たぶん大丈夫だろ。元々教会の敵みたいだし」

俺が教会に行った時、思いっきり不法侵入していた。たぶん俺とは関係無い所で敵対している。いまさら俺が巻き込んでも、大したことは無いだろう。

この日の打ち合わせはこれで終わり。あとは当たり障りのない雑談をして過ごす。

朝になり、軽く食事を済ませたら行動を開始する。

まず向かう先はボナンザさんの店だ。もし不在だった場合、諦めてクレアとリーズを護衛にする。

ボナンザさんの店は、王都西地区と南地区の境あたりにある。まだ行ったことがなく、直接の転移ができないので、南地区と西地区を繋ぐ大通りに転移して少し歩く。

この周辺は飲み屋街だ。早朝だけあって誰も居ない。どこの店も開いていない。

まずは飲み屋の方を見つけた。飲み屋が早朝から開いているわけがないので、こっちは素通りする。少し離れた場所に奴隷商を見つけ、中に入った。

奴隷商と聞いて牢獄のような場所をイメージしていたのだが、その中は普通の宿みたいだ。俺たちが普段使っている宿に近い。奥には食堂らしき場所があり、首輪を付けた商品らしき女性が、優雅に朝食を口に運んでいる姿が見られる。

足を踏み入れると、パリッとした燕尾服を纏ったイケメンが近付いてきた。

「いらっしゃいませ。初めてのお客様ですね。本日の御用は何でしょうか」

イケメンは、高級ホテルのドアマンのように上品な仕草で出迎えた。イメージと違いすぎて困る。

「ボナンザさんの個人的な友人だ。突然で悪いんだが、ボナンザさんは居るか?」

「申し訳ございません。女将はまだ出勤しておりません。お約束ですか?」

「約束はしていない。急用だったんでな。もし呼べるなら呼んでもらいたい。俺の名前はコーだ。コーが来たと言えば分かるはずだ」

「承知いたしました。確認して参りますので、少々お待ちください」

イケメンが近くに居たもう1人のイケメンに声を掛けると、そのイケメンが早足で店の奥に消えていった。俺たちに声を掛けてきたイケメンは、俺たちのすぐ横で無言で立っている。客を放置しないスタイルか。ますます高級ホテルみたいだ。

ここの従業員は妙にイケメンが多い。中性的な顔立ちで、女性受けが良さそうだ。ボナンザさんの趣味なのかな。だとすれば、申し訳ないけど宿屋の店主は太刀打ちできないな。あの人はブサイクじゃないけど、ゴツいんだ。

しばらく無言で待っていると、店の奥からネグリジェ姿のボナンザさんがのっしのっしと歩いてきた。寝起きなのか、少し険しい顔をしている。

「おはよう、ボナンザさん。起こして悪かったな」

「ほんっとにそうよ。来るなら夕方にしてちょうだい。こんな早い時間に何の用?」

ボナンザさんは表情を崩し、冗談っぽく言った。

「悪いんだけど、ちょっと頼みたいことがあってさ」

「あら、珍しいわね。こっちで話をしましょうか」

ボナンザさんが手を挙げて合図をすると、イケメンたちが去っていった。ボナンザさんの先導で、ひときわ豪華な扉の部屋に入る。

ここは応接室のようで、豪華なソファとテーブルが置かれている。アーヴィンの実家の応接室よりも豪華だな。

ボナンザさんは、スッケスケのネグリジェを着たままドカッとソファに腰を下ろした。勢いで下着が見える。目のやり場に困るぞ……。視線を逸らそうにも、胸元もスッケスケだ。これは誰も得しない服だな……。

目線に気を付けながら話を始めた。ボナンザさんには全てを話す必要がないので、軽く事情を話す。

使徒召喚が人道に外れた術であるということと、教会を止めなければならないということ。これだけだ。ざっくりとした説明だったが、ボナンザさんはすんなりと納得してくれた。

「……相変わらず面白いことになっているわね。いいわ。預かってあげる」

ここに預ける期間は、使徒召喚を止めるまでの間。早ければ1日、遅くとも2日だ。

「悪いな。できるだけ早く済ませるよ」

「いくらでもいいわよ。そのかわり、あたしも行くから」

「は? どこへ?」

「教会よぉ。楽しそうじゃない。最近、本当に鬱陶しいのよ、教会が。潰すつもりなら喜んで手伝うわよ」

ボナンザさんはウキウキと楽しそうにしている。まるで遠足の前日みたいだ。

ボナンザさんまで付いてくるのか……。護衛を任せたかったんだよなあ。王都の中なら魔物に襲われる心配は無いのだが、教会や兵士に狙われる心配はある。できれば残ってもらいたい。

「いや、この3人はちょっと心配なんだよ。悪いけど、護衛できないならこの話は無しだ」

「護衛なら問題無いわよ。ここのコたちは全員戦えるから。それでも心配なら、助っ人も呼んでおくわ」

ここの従業員たちは、ボナンザさんが鍛えているらしい。そういえば、以前俺と戦った女の子3人組も、結構戦える様子だったな。グラッド隊の下っ端くらいの腕前だ。審問官くらいなら余裕で蹴散らせるだろう。

たぶん“助っ人”は宿屋の店主だ。申し訳ないけど頑張ってもらおう。

「それならいいよ。助かる。礼は金貨100枚でいいか?」

マジックバッグから金貨を取り出しながら言う。キッチリと金で解決するつもりだ。

「……何言ってるのよ。要らないわ。そんな物は懐に仕舞っておきなさい」

それは困る。正直、この人からは借りを作りたくない。タダより怖い物は無いんだ。

「本当に受け取ってくれ。頼む。俺の気が休まらない」

「そう……? それなら貰っておくけど……」

ボナンザさんは怪訝な表情を浮かべながら金貨を受け取った。

どうにか借りを作らずに済んだな。良かった。

「さっそく行動を開始したい。着替えてくれ」

無駄にセクシーなネグリジェを着たボナンザさんを見ながら言った。

「うん? あ……そういえばこんな格好だったわね。失礼っ。着替えてくるから待ってて」

ボナンザさんは俺たちを応接室に残し、颯爽と歩いて出ていった。俺たちが帰った後に二度寝するつもりだったのかな。

ボナンザを待つ間、マジックバッグの中で転写機がけたたましく震えた。王からの呼び出しだ。鬱陶しいな。調査員を解任された時、叩き返しておけば良かったなあ。

「あの……。見なくてもいいのですか?」

「ん? ああ。俺にはもう関係ないからな。うるさいなら壊そうか?」

「あ、いえ……大丈夫です。そのままにしておきましょう」

どうせ転写機を返せとか、そんな用事だろう。確認する必要は無い。突然鳴り出すとうるさいので、布で包んでマジックバッグに戻した。

ボナンザさんの着替えが終わり、部屋に戻ってきた。アーヴィンと使徒2人をここに残して出発しよう。