軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

96 無邪気な虚ろ1

エクスに見送られて、小さな音を立てながら静かに揺れる馬車の室内でルーラは思い出し笑いをした。

「うふふ。その願い、叶えてさしあげますわ。それにしても、大魔導師さまが契約した悪魔の願いが『イエー』って」

「ええ、爺やもこの年で驚きました。世間では邪悪と言われている虚ろにも色々あるようですな」

ルーラの眼が光る。

「ふっふふー。ねぇ爺や」

「嫌ですぞ」

でも姫様はお許しにならない。

綺麗な手を突き出してこられた。

爺やは求められた事に応えようと覚悟を決める。

「「イエー♪」」

ハイタッチして、恥ずかしさのあまり顔から火が出る爺やと、ころころ笑う姫様。

王家で変なブームが来ない事を祈る爺やであった。

馬車を見送ったエクスは、ライ姉に切り出す。

「そうだ!本物のメイドにならない?」

「良いんですか?」

僕は居場所をあげることにした。

普通に保護しても良いけど、役に立ってる実感が欲しいだろう。仕事内容は家事手伝いで。

「お給金(お小遣い)は幾ら欲しい?」

こてんと首を捻った。

うんうん考えてたライ姉は指を折り数え始める。

「給金は良いとして、家の事を任せて頂けるなら食費や消耗品費や夜会費や服飾費や雑費も頂けると」

うっ。

ちょっと面倒くさい話になってきたかも。

・・・真面目すぎる。

投げたい。

そうだ!投げてしまえば。

「全部任せよう」

「き、き、金貨です。あわわ」

家に使う予定だった金貨5枚を全部渡すと、ライ姉ががくがく震えだした。

スラム民にとっては伝説級の硬貨だろう。しかも、それが5枚。

分かるよ。僕だって、この前。金貨掴みゲームではぶるぶる震えたから。

もしかしたら、あの時は好きなだけ掴めよという趣旨だったのかも。

恐怖にぶるぶると首を振った。

つまり。大金だから、何年か保つと思う。

お金は無くなってから考えよう。

さて、家の中へと探検に出かけた虚ろとニトラを追いかけようか。

台所が騒がしい。

「すごい」

はしゃぐニトラの声が聞こえる。

部屋に入りニトラを探すと、僕の虚ろに、エアすりすりしていた。

「すごいよー」

「えへへへ」

照れる虚ろに疑問を感じ、台所を見ると妙な違和感を感じる。じっと見ていたら、まるで間違い探しのようにその原因が1つずつ浮かび上がってきた。

「あれ?僕の水瓶がある」

「御主人様、竈の中に不滅のファイヤーボールも」

足元に、家妖精が歩いてきた。

どうやら、勝手に使ったらしい。

僕だけの魔法を。

僕の虚ろは欲しがり屋さんだ。

だから、僕たちに気付くと、期待の表情を見せて、てちてちと歩いてきた。

きっと、おかわりを求めてる。

良いじゃないか、応えてあげよう。腹いっぱい食べるがいい。

「凄いな、ありがとう」

虚ろが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。

「御主人様の虚ろはとってもいい子です」

「えへへへ」

ライ姉にエア撫で撫でされて、照れる虚ろを見てほっこり。

「えへへへへへ」

褒めすぎたのが悪かったのか虚ろが悪い顔をした。なんだ、こいつ?

「とりあえず、引っ越ししよう」

「「おー」」

僕たちの荷物を定宿から引き払わなきゃ。

「お前は、中に入って、街中で出てきちゃ駄目だよ」

悪い顔をしてる虚ろに告げると、え?って顔で見てきたけど、迫害されるかもだから駄目です。

しゅんとした顔で体に入ってきた。

また遊んであげるから。

まぁそんなわけで荷物を運んで。

街に出て、とりあえず3人分の布団を買って帰ると夜だった。お姉さんぶりたいライ姉が、得意げに金貨を支払い購入したんだっけ。

「「ただいまー」」

マイホーム最高。

「にゃー」

布団も到着!運んだのはニトラ。

小さいくせに、僕より力があってびっくりする。

獣人は凄いや。

「ニトラありがとう」

「いいよ」

クールに決めてきたけど尻尾がぶんぶん揺れてるのは見逃さない。

皆、お買い物で疲れて眠そうだ。

僕も正直眠い。

虚ろがひょこっと体から出てきたけど、また明日。

「ふぁぁ。おやすみ」

「おやすみなさい、御主人様」

「おやすみー」

新しい家で、星空の光を浴びながら眠りにつく。

削りたての木の匂いが心地良い。

ちょっと格好つけて言ってみたけど、外の光が入るのはカーテンを買い忘れてしまったからだ。

だって、ついて無いと思わないよね?

開放的な夜。

「とりあえず、カーテンは明日だ」