軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

76 敗走のゾンビーズ4

穴熊戦法を取るエクスに、次の刺客が差向けられた。それは、とても縁の強い人物。

思い出して欲しい。エクスを馬鹿にして、そのエクスから最も恩恵を受けていた男達は誰かという事を。

答えは、ゾンビーズだ。

つまりエクスの恩恵を失ったゾンビーズのバッツとエルフマンは酒場で腐っていた。

「あぁっ!苛つくぜ。一回しくじったくらいで離れやがって!薄情者ばかりだとは思わないか?エルフマン」

「そうですよ、バッツ。受付嬢も相手をしてくれないんです」

「あー、逃げるときに香水瓶を割ってしまったからか」

「来月プレゼントすると言ったのに、これだから年増は駄目なんだ。ブツブツ・・」

この落ち目の男達のマイナスオーラに、引き寄せられたのはイゼル。

「どうした?元気が無いな」

「これはこれは、森林警備隊のイゼルさんじゃないっすか!どうしたんすか?」

「勇者イゼルがなんで我らに」

イゼルはニヤリと笑った。

「失敗は誰にでもある。重要なのは儂の依頼を失敗しない事だ」

「もしかして、俺らに仕事を」

「感謝しよう」

バッツとエルフマンの顔が明るくなる。

「やる気はあるようだな。儂の下にエクスを連れてこい。出来るか?」

イゼルからの予想外の依頼に、バッツは、ツキが戻ってきたとはしゃぐ。

「ぎゃっはは。あの欠陥魔法使いですか!楽勝っすよ。アイツには貸しがあるから、俺らの言う事なら何でも聞くっしょ」

「しかり、しかり。初級バフをかけさせてやったのは我らの恩情よ」

イゼルは、耄碌しているのかこの信用ならない2人をころっと信用してしまった。エクス鬼ごっこにゾンビーズが緊急参戦!

「ふん。頼もしいではないか」

「イゼルさん。任せてくださいっすよ。すぐに驚かしてみせますから」

「弱者去るべし」

この数時間後、本当に驚く事になろうとは。まさかのイゼルも予想しえなかった。

2人は、そのまま意気揚々とエクスの宿屋に向かった。興奮した2人に、出てきたライ姉が嫌な顔で対応する。

「ああ?てめぇは誰だ。エクスは何処にいんだよ?」

「メイドちゃん、可愛い」

「私はメイドです。御主人様なら3日後に帰ってきます」

バッツは苛つく。

俺らは何故かツイてないのに。欠陥野郎は良い思いしやがって!メイドを雇う金があるだと。どんな汚い事をしやがった?

「ちっ、御主人様だと?エクスのくせに」

「あんな欠陥魔法使いから私が少女を助けてあげないと。君は騙されてるんだ」

敬愛するエクス王子様を悪く言われてライ姉は怒りをぶつける。

「いいえ!御主人様は凄いんですっ!!!エクス王子様は、貴方達なんかより、ずっとずっと凄いんです」

満足そうにライ姉は鼻を鳴らした。

とぷとぷと火に油を注ぐスタイル。

誤算だったのは、彼らに良識なんて無いという事だ。野良犬以下の人間も世の中には存在するとは人生経験の少ない少女は知らなかった。

嫉妬にメラメラと燃えたゴミ野郎の、爆ぜた火の粉が少女へと飛んだ。

バッツの顔が歪み、恐ろしい裏の顔を覗かせる。

「ああ?苛つくガキだな。そうだ!こいつを拐っちまおう。大人を怒らしたらどうなるか後悔させてやる」

「そんなっ。メイドちゃんを殺すのは反対です」

「え・・・」

きな臭い会話になってライ姉の顔が青ざめる。ニトラが遊びに出てる時に限って。

「殺人鬼のドワーフ野郎はもういないから、安心しろよ。お嬢ちゃん俺らを怒らしちまったなあ。殺しはしないが後でたっぷり反省させてやる」

「や、やめてください」

バッツに押さえられて恐怖に染まるライ姉に、エルフマンが手を伸ばす。

「そういう事なら喜んで。ドレインタッチ!」

「嫌ぁぁーー」

触られたライ姉の体からしおしおと元気が抜けていくと、エルフマンは涎を垂らして恍惚な表情になった。

「んほほほ!これが少女の活力。メイドちゃん。後で私がしっかり教育してあげるからね」

「・・・離してっ」

掠れた声のライ姉は何も出来ないまま絶望した顔で、バッツに担がれてしまう。

(助けて、ニトラ。・・・エクス王子様)

助けを求めて細い手を伸ばすが何も掴めない。

「行くぞ、エルフマン」

「んほほほ。バッツ、教育は私がしますからね」

そんなライ姉を悪漢から救ったのは。

「げっ、領軍!?」

「なんでこんな所に」

「ゾンビーズのバッツ並びにエルフマンだな。婦女暴行、未成年略取、誘拐の現行犯で捕縛する!」

隣り部屋でエクスの帰りを、24時間ずっと交代で壁に耳を当てて待っていた領軍だった。

「こ、これは何かの勘違いっすよ。この子が部屋で倒れてたから病院に運ぼうかと思っただけっす。な?エルフマン」

「そ、そうだ。勿体無いが、そうだ」

「黙れ。全て隣りで聞いていたんだ。神妙に縛につけっ」

なおも見苦しく反論する2人。

「そんなっ。聞き間違いすっよ。何もしてねーし」

「そうだ。証拠はあるのか?」

領軍の中一人が、そんなゾンビーズに指を付きつけて引導を渡した。彼は、あまりコミュニケーションが上手くいかない男だった。

だが、人は変われる。

そうだ。

言ってやれと周りの同僚も頷く。

「見苦しいな。証拠だと。いいか!よく聞けっ。我々は、この少女のおしっこの音まで聞き逃さないのだ」

周りの同僚の顔が引きつった。

「は???お前っお前って奴は」

「どうですか?言ってやりましたよっ副隊長!」

その様子を見せられたバッツがドン引きして、エルフマンが羨ましそうに歯ぎしりした。副隊長はキリキリと痛む胃を押さえる。

「うぐんんん」

「副隊長?」

副隊長にフレンドリーファイヤー。

だが、それよりもダメージを受けた者がいる。

ライ姉だ。

バッツに担がれたまま、ビクンと反応するが力が吸われていて動けないようだ。

ライ姉は嘆く。

(助けて、ニトラ。・・・御主人様)