軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

181 スタン7 覚醒レビジョン

「ハハハハ。素晴らしい。まさに勇者!絶望の中に現れたのは10年に一人の大魔導師と、美しき白銀の女神ッ。目覚めよ、サウザンドモニター!」

レビジョンが狂ったように両手を広げて唱えたのは進化した命題魔法。

ブァン!

街中のあらゆる所がランダムで光りだした。

黒い雨の中、数多の発光するモニターに変わった窓や壁の全てに、雨に濡れないぽやっとした少年と縫いぐるみを抱いた白銀の少女の動画が映る。

「にゃ?おにーさんと奥さまがいっぱい。ニトラもいる!?」

「ハハハハ、これが私だけの命題魔法っ!」

ニトラが痛みを忘れてキョロキョロするほどに異様な光景だった。

「えっと、それで貴方は?」

命題魔法でこんな状況を作り出した男は、慌てて両手をバンザイ。

「エクス大魔導師、わ。私は味方です。クリーン。この顔を覚えておられませんか?ほらっ。以前一度だけ会ったレビジョンです」

「なんでここへ?」

「ホワイト王国のシロン様へ映像配信をしております。そして、それは勇者をここに呼ぶためでもあります」

エクスの顔が厳しくなる。

「呼ぶため?」

「えっと、それはその。つまり」

ルカが耳打ち。

「あのね、エクス。勇者協会は利権を大きくするためには何でもやるの。たぶん街の住人が半分くらい死んで見せ場を作るまでは来ないわ」

「そっか。もう待てない。フールは僕が話をつけるよ」

「エクス·····」

レビジョンが割り込む。

「エクス大魔導師! 貴方は魔王フールを倒せますか?」

「分かりません」

エクスは汚れた二軍うさぎを拾う。

「そうでしたね。フールは強い」

「いえ、弱いです。ウォーター」

ジャバジャバと汚れを洗い流すと、喜ぶうさぎ。

「え?」

「いや、喧嘩は強いのかもしれません。ただ、人としては死んでしまったのかも」

「彼は魔王ですよ!?」

「レビジョンさん。僕も貴方もフールも同じ魔導師です。行き着く先は魔王かもしれません」

ざあざあと降る雨が不安を煽り、ルカの爪がエクスに食い込む。

「相棒、おめえさんは人間だぜ!」

「ありがとう」

「でも、あいつ、つよい」

「大丈夫だよニトラ。僕には必殺技があるから。えっと魔王フールはどこに?」

なぜか食い気味にレビジョンが答えた。

「子爵家です!!」

「あ、ありがとうございます」

ちょっと気まずい。

「あいつはやり過ぎた。退場願おうか」

「おうよ!」

気まずい沈黙の中、一行は子爵家へ。

当然のように着いてくるレビジョンのせいで、ルカが喋れないからだ。

でも、王家の命令で動いてるし、自分勝手な理由で着いてこないでとは言いづらい。

そんな沈黙に負けたのは、レビジョン。

「エクス大魔導師! 貴方の本当の命題は、 現実幻覚(リアルドリーム) とか 事実書換(マイワールド) とか噂されていますが?」

「僕の命題は延長です」

手の内を明かすよう求めた失言に、顔が青褪める。

「そ、そうでした」

「本当に延長で、僕は初級魔法しか使えません」

再び訪れた沈黙に、レビジョンは頭を捻る。

初級魔法で魔王を倒す?

無理だろう。

もしや、必殺技は窒息だろうか?駄目だ。喉に指で穴を開け気道を確保するだろうし。

「人がいっぱい」

「なんでえ?いってえどうなってやがんだ」

考え事をしていたら、子爵家の門の前に到着したレビジョンは焦る。

なぜか魔物の痕跡や血の跡が残る扉を森林警備隊が守っていた。

予想とは違ったため、レビジョンが駆け寄ると、2人の隊員はびっくり。

「うわっ!?謎の鏡に俺たちが映ったぞ」

「なっなんだ?」

「失礼。驚かせました。これは私の視界が映る命題魔法です。害は無いので御安心を」

この街の視聴率を独占しているレビジョンは満更でも無さそうだ。

「す、凄い。貴方は?」

「私は魔導師レビジョン。と、それよりも魔王を見ませんでしたか?」

門番の2人は顔を見合わせて、言いづらそうに答えた。

「この奥に居られる」

「え!?なぜあなた方は戦わないんですか?」

苦虫を噛み潰したような顔した。

「イゼル隊長が魔王ゼノ様と取引をした。従えば誰も殺さないと」

「魔王と共存!?」

「遺憾だが魔王がイゼルとの契約を守る限り、我々はこれを支持することにした」

「それなら、仕方ありませんね」

納得したかけたレビジョンに対して、少し遅れてやってきたエクスはじっと裏切りの森林警備隊員の顔を見る。

それでいいのか?とじっと見る。

「ううっ少年。仕方ないだろ。魔王には誰も勝てないんだ。大人になれ」

それは正しいのかもしれない。

大人になるという事は自分を殺すことなのかもしれない。

でも、

正しさなんて糞だ。

「通してください」

ざわり。

「駄目だ!我々は死者を出さない。これは少年のためでもあるんだ!」

詭弁だ。

その言葉は自己保身の詭弁。

今なら分かる。

僕のため?

は?

「もう一度言います。ここを通してください」

正しさと保身を天秤に掛けて、森林警備隊は魂を売った。

汚職にまみれた安い魂を。

「ここは通さん。魔王に契約を守らせるため、我々が先に破るわけには行かないからな」