軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

154 連撃のマーラ VS 魔王フール3

そこからは、一方的だった。

重力という見えない何かが、魔王へのダメージを減らし、魔王からのダメージを増やす。

有効打の与えられない雑魚どもが右往左往する中。

「ぐっっっ」

マーラは移動する二方向からくる魔弾に防戦一方で削られていき、フールがトドメの大技を放つ。

「赤髪の女よ、 永遠(とわ) に眠れ! 氷棺桶(アイスコフィン) 」

氷柱に生きたまま氷漬けにされ、ジ・エンド。

あっという間の出来事だった。

「嘘だろ·····マーラ様が負けた」

「あわわわわわ」

「ヒィイイ」

空から魔王は、虫けらを見るかのように何も出来ない者達を睥睨する。

ドタドタと走る音が聞こえた。

筋骨隆々な老人の背中が見える!

イゼルだ。

背中が見えるという事は、素晴らしい状況判断でいち早く逃走したという事。

「ふん。つまらん」

この行動により、人類側の敗北が決した。

フールの命題は飛行では無いため、何れ地に堕ちるのだが····。

白旗をあげればそこで終わり。

「あわあわわ」

続く者もいるし、恐怖のあまり意味不明な行動を取る者も。

青白い恐怖の感情が立ち昇りフールへ流れ込む。

「おいちぃぃぃぃぃ。はぁはぁ最高だよ」

ゼノだけが涎を垂らして悶絶する。

這うように逃げ出す者。

腰が立たなくなってその場でがくがくと震えるだけの者。

パタパタと羽音が神経を刺激する。

逃げ遅れた者達に、ゼノは意外な言葉を囁いた。

「うぷぷ、君たちも早く巣に戻りなよ」

「·····見逃してくれるんですか?」

もしかして、人情があるのか?アリエスちゃんは、そんな淡い期待を抱くが、

「もちろん! 人間を一気に殺しちゃったら勿体ないからね。今度の街はじわじわ少しずつ殺すの!その方がお互いに長く楽しめるでしょ! 僕ちん頭いいー」

悪魔は笑う。

絶望という濃い感情が流れ出し、悪魔は美味しそうにぱくぱく。

もちろんこの感情は、人間にとって良くないモノであり宿主のフールは、

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」

苦しそうに耽美な顔を歪めた。

誰かが言った。

「まだ師匠がいる!」

「そうだ!エクス!大魔導師エクス様に頼るしかない」

「あぁ、早くこの事を伝えなければ」

これは逃げているのでは無いと。

「あああ、走れっ走れっ」

一斉に柵の中を目指して、何度も転けながら逃げ惑う人間を黒い羽の悪魔は満足そうに見つめる。

「あはっ力が漲るね、フール」

「うるさいぞ、ゼノ」

黒黒とした感情がフールの精神を蝕む。

傷付けたい。何もかも。なぜ俺から逃げる?俺を笑ってるのか?

なぜエクスはここにいないっ!

俺だと力不足だと嘲笑っているのか!!

「逃がしちゃ駄目だよ」

「分かっている。プラントプリズン」

被害妄想をエネルギーに変えて、みちみちと漏れ出た黒い魔法の茨は再び街をぐるりと囲んだ。

虐めを行う者の心は病んでいる。

「うぷぷ、人間牧場の完成だ~!」

はしゃぐゼノ。

フォレストエンドは反撃の芽を摘まれた。

「早く入れ!門の中は安全だ」

緊迫した空気、マラソンのゴールのように街の門を目指して走る走る。

鉄のような味の唾を飲み込み、門に飛び込む。

「うああ、怖かったあ!」

「逃げ延びたな!」

門の中は、安堵と喜びの空気が流れる。

何故かは分からないが魔王はスタンピードを起こさないと街には入れない。

これがこの世界のルールだから。

「これで最後か?」

「まだアリエスさんが」

魔法使いは虚弱であり加えて魔力切れだから、足元は覚束無い。

「儂が行こう」

「イゼル隊長!?」

全員が信じられない目で見る中。なんと、死地へ舞い戻りアリエスを担いで引き返してきた。

有能なイゼルは、フールが大掛かりな魔法を使いだし行動不能になったとみるや、点数を稼ぎにいった。

だが勇気ある行動に見えた。

「イゼルさん、助かりました」

「いや、当然の事よ。マーラの事は残念だった。これは我々森林警備隊の落ち度。必ず巻き返すから、今日は安心して、ゆっくり休みなさい」

思わぬ急展開に、ざわりと風向きが変わった。

やはり、イゼルは街の救世主?

実績もあるし。

「ありがとうございます!」

ぺこりとアリエスちゃんがお礼。

疑念と期待の目を向ける冒険者と、隊長の言っている意味が分からず心配そうな顔をする隊員たち。

新たな局面を迎える。