作品タイトル不明
151 出陣1
日が昇り決戦の時が訪れる。
エクスは危機感も無くぽやっとしているが、街は魔王フールによるスタンピードの危機に脅かされており、フォレストエンドの希望はマーラへ託された。
領軍の用意した魔石に釣られて子爵家へ集まった冒険者たちは、期待と不安を胸に抱きながら、 主役(マーラ) の登場をそわそわしながら待っているようだ。
「いよいよだな」
「あぁ、これで俺たちも英雄だな」
マーラの理不尽な魔法で焼け野原となった魔の森が、彼らを増長させているようで、彼らの目は領軍が用意した魔石へ。
「なぁ、報酬は何に使う?」
「俺は魔剣イグニシオンを手に入れる」
驚きの顔で仲間を見る。
「は?」
「昨日、質屋の親父と話はつけてきた」
出し抜かれたらしい。
「なら頑張らないとな。ところで大魔導師エクスを見たか?」
「さっき聞いたら不参加だそうだ。分け前をごっそり取っていかれないか不安だ」
依頼者の領軍の若手隊員が軽口を叩く二人を咎めた。
「おいっ! そこの流れの冒険者、今のは聞き捨てならないな」
「いや、悪い。領軍さん。ちょっとした冗談だ」
心証を悪くしてはたまらないと慌てて取り繕うが、
「エクス大魔導師は、無力な少年だ。戦闘には参加出来ない」
「「は?」」
意外な一言に二人は目を丸くする。
「少年は完全な支援職だ。そもそも対価を要求されていない器の大きな人だ」
「そうだったのか、そりゃ悪かった」
軽率な発言を撤回すると、領軍は満足そうに頷いた。
話をそれとなく聞いていた援軍の1人が疑問を持ったのか口を挟む。
「領軍さんは随分と肩を持つな?」
「ああ、実は俺は誤解からエクス大魔導師の首を絞めた事があって、土下座しようとしたら、頭と床の間にアイスボールを放って彼はこう言ったんだ。『頭は冷えましたか?謝らなくていいです。何も無かった』と」
肩を竦めた。
「それはクールだな」
「だろ?」
ちょっといい話にほっこりしていると、歓声が上がった。
「「マーラ様!」」
遅れて主役がやってきた。
魔の森を焼き尽くした長身で燃えるような赤髪の女。
その隣で、包帯姿の松葉杖をついたリョグが吠える。
「待たせたなお前ら、金が欲しいか?」
この男、フールに一人特攻して早々に戦線離脱するようなアホだが、ざわつく全員を一言で黙らせた。
「俺の代わりに活躍しろ、今日の活躍に応じて山分けだ」
「「おおーーっ」」
どうやら大量の魔石を全部配っちゃうらしい。
マジかよと会場が湧いた。
何も考えていない発言だが士気はMAXに。
「さぁ、勝利の女神よ。締めの一言を」
「私とエクスが最強であると歴史に刻んでやる。魔王フールを倒すぞ!」
「「おおおおお!!」」
よく分からない宣誓だが良いらしい。
壇上から降り、ひょいっと馬に跨り出陣!
「行くぞ、クレイジーホース」
運動神経の悪い魔導師に乗馬は難しいのだが、超初級バフがそれを可能にさせていた。