軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

147 セーラは開発したい1

エクスは湧き上がるココロエネルギーを持て余していた。

「ううう、なんか無性に延長したい」

そう、なんかムラムラする。

室内には、新鮮な風が吹き、暖かい床に明るい光、掃除精霊に、温水も冷水も冷たいジュースも飲み放題。

「ライ姉?何か手伝おうか?」

「だ旦那さまっ、もう何も思いつきません」

うん。

きょろきょろ辺りを見渡すものの広い屋敷は既に快適すぎて特にする事が何も見当たらない。

ソファーにベッドも動くんだよ。

無駄に。

ニトラだけがしっぽをゆらゆら揺らしながら手をぐいぐい引っ張ってくる。

「お兄さん、次はここ!」

「分かった。これで最後だよニトラ」

「ありがとう」

ニトラにだけ少し厳しいのは、どんどん変な要望に応えていると裏口付近がトラップハウス化してきたから。訓練所でも作りたいのかも。

移動する床が凄い速度で動き出したので、立入禁止の紙をぺたっと貼っておく。

「そうだ! セーラさんなら」

コンコンと扉をノックしたけど反応なしっと。

ま、入るんですけどね。

「セーラさーん」

「どうした?少年?」

声をかけると振り向いたセーラさんの机の上には、銀色の機械が鎮座していた。

「暇だったので、それは?」

「自動車の動力になるスターリングエンジンの試作機ファイスだ」

機械には回転しそうな円盤が付いている。

「出来そうですか?」

「実は、ほぼ出来ている。機械の下に炎を、上に氷をセットし、回転を加えると」

カタカタカタと音を立てて上下に動く2本の棒に連動して、円盤の回転が加速しだした。

「凄いっ!」

「そうだ。傑作が完成した」

その顔には、疲労と達成感が浮かぶ。

「おめでとうございます。でも無理をしては駄目ですよ」

「ははは、すまない。しかし、転生者の本には、燃える水や、燃える空気や、相思相愛の石など幻想素材ばかりで実現不可能な物ばかりだったが、ようやくこの世界にも、人為的な回転体を生み出す事に成功したんだ」

回転体?

「え?」

「どうした?何でも聞いてくれ。ほら」

なんか聞いたら怒られそうなのに、聞かないと許してくれなさそう。

「あのー、それってゴーレムでも出来るような」

「ハハハ。お姉さんも少しは魔法を勉強している。ゴーレムに命令出来るのは中級からだろ?」

確かにそうですが。

「知力+1のバフをかけると」

「ハハハ、理論上出来なくもないが、それって、たったの10分。じゅ·····」

うっ。

「ゴーレム インテリジェンス1(知力+1) 回転しろ」

ブイ〜ん。

セーラさんの肩がわなわな震えて、試作機ファイスを掴むと地面へと叩きつけた。

「こんなモン、ゴミだ!!うあああ」

「セーラさん待ってください」

半泣きのセーラさんを追うと、やけ気味に馬車を指さしてきた。

「馬車の車軸を真ん中で切って、抜けないよう加工した後は、全部の車輪にさっきの魔法を掛ければ、それだけで自動車は完成するもん」

「え?でもハンドルは?」

実は気になって、転生者の遺した本をルカに借りたので、概略は知っている。たしかハンドルでタイヤの向きを変える必要があったような。

「左右で回転数や回転方向を変えれば曲がる」

「そうなんですか!さすがセーラさん」

キラキラした目で見たけど、セーラさんはなぜか浮かない顔のまま。

目が死んでる。

「ふふ、私の研究なんて。エクスの前では無価値だ」

「そんな事、ありません!自動車は作れませんでしたし、それに例えばロボットなんて夢のまた夢ですし」

変な目で見てきた。

「エクスなら出来るぞ」

「え?あはは。ゴーレムは流石に上級が無いと無理です。さすがに過大評価ですよ」

セーラさんのメガネが輝いた。

「デカい人形を作って関節部分にさっきの魔法を掛ければいい」

「あれ?なんだか出来そうな気がしてきました」

「私たちは、どうやら少し話し合う必要がありそうだな」

「そうですね」

最強タッグ結成!!

まずはその一歩、自動車作りから始めよう。

「まずは、車軸を切ってくれ」

「出来ません。全部燃やすことなら出来るですが、なにかいいアイデアは?」

初級魔法は万能では無い。

「それなら、チェーンソーを作ればいい」

「お願いしますッ」

自信満々だったセーラさんが首を捻る。

「あっ、無理だ。ドワーフでも作れないかも。どちらかと言うと細工師の仕事でコスパが悪すぎる。どうなってるんだ?転生者の世界って」

「残念です」

しゅんとしたら、セーラさんはなぜかニヤリと笑って、ポケットからワイヤーを取りだした。

女性のポケットからワイヤーとか、色々と残念すぎる。

「そんな顔をしなくてもいい。知らないだろうけど初級でも風魔法は割と凶悪なんだ。証明するから使ってくれないか」

「良いですけど?ウインドボール」

素早く投げたりは出来ないけどリクエストに応えて回転するだけの無害な風の球を創り出す。

ひょいっとセーラさんが、風球の中にワイヤーを投げ入れた。

ビュイイイイイイ

「気をつけろ!それに触ったら指が飛ぶぞ」

「ひいっ」

高速で回るワイヤーが、チクチクの羽音みたいな甲高い音を立てる。

なんて物を作らせるんだ。

しかも、すでに自分だけ避難したらしく遠くから声が聞こえる。コンビは解消かも。

「さぁ、それで切ってくれ」

「・・・分かりました」

危険になったワイヤーが高速で踊る風球を、軸の方へとゆっくり動かすとベチベチと回転するワイヤーが軸をゆっくり削っていく。

前輪と後輪の2箇所を切断して、不要になった危険物を空中へ投棄すると、興奮したセーラさんの声。

「いいぞ。さぁ仕上げを頼む。もう馬なんて要らない」

「分かりました。ゴーレム インテリジェンス1!前進、右回転、止まれ」

無人の馬車がキビキビと動いて、僕達は笑顔になる。

「「出来た!」」

ハイタッチすると、近くに寄ってきた馬が不貞寝したけど、文句は案内人にどうぞ。

さぁ、ルカを世界初ドライブに誘いに行こう!