軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

140 フール討伐隊1

「マーラ、ペンダントを貸して」

「良いけど?」

胸元から取り出したペンダントに魔法を。

「ファイヤーエンチャント001」

「ありがとう!優しいなエクスは。んんんんん!」

気合いを入れてコタツから離脱したマーラは、嬉しそうに暖かいペンダントを谷間に仕舞った。

「どういたしまして」

「エクス、魔王フールは私が倒してくる。だから、ゆっくり恩賞を決めておいてくれ」

「ありがとう。頑張って」

手をふりふりしてマーラを送り出したら、ルカがもたれかかってきた。

「眠いの?ルカ」

「ううん。エクスは恩賞に何を貰うの?」

「相棒、S級になっちまえよ」

ううーん。

「困ったな。欲しい物が無い」

「貴方って人は」

「さすがは相棒だぜ」

えっと、それより何か言いたい事があったような。

まっ良いか。

はぁ~こたつ温かい!

子爵家。

援軍到着にどんちゃん騒ぎする街とは対照的に、緊張した面持ちで2階の貴賓室には重要人物が集まっていた。

援軍と関係者達で魔王フール討伐作戦会議が開かれようとしている。

集められたメンバーを紹介しよう。

領主 子爵ラードリッヒ

補佐 執事イエスマン

援軍隊長 連撃のマーラ (寄り道中)

援軍副長 眼鏡のブライン

森林警備隊 勇者イゼル

領軍 脳筋リョグ

ギルド ギルマス代理の受付嬢

魔術師の庵 魔法使い賢老ダルフ

しかしながら最高戦力と噂のマーラはまだ来ないため、子爵様は痺れを切らした。

「イエスマン!マーラはいったい何時になったら来る?ごほっごほっ」

「それが、その·····」

困る執事に、助け舟ならぬ火をつけたのは援軍副長のブライン。

「隊長のマーラはただの戦力ですから会議を始めませんか?彼女はこの街にいる大魔導師エクスに会いに行くと言ってました」

「え、エクスだと!?ゲホッゴホッ」

「子爵様っ!興奮されてはお身体に障ります」

ギョロリと子爵の目が狂気に染まる。

「そうだ!いい事を思いついたぞ!イエスマン。エクスが来たら炎と風を合わせた温かい棒を200個作らせるのだ。ゲホッゴホッ。これで姫様の」

「分かりました。そのように。ですから寝室へ。ほら早く子爵様をお連れしろ」

メイドに肩をかかえられて子爵様はここで退場し、一人事情を知らないブラインは怪訝な顔になる。

「執事さん。エクスさんはいったい?」

「機密情報によりお答えしかねます」

ブラインは周りを見るが、関係者は皆一様に気まずそうに目を逸らす。

「もしかして、かなり気難しいお方ですか?」

全然違うよ!

違うけども身内の恥を晒すため説明出来ないというのが総意であり、ブラインの疑問を無視してイエスマンが咳払いして、対策会議を始めた。

「ごほん。それではフール討伐作戦を始めましょう。共通認識を図るために、まずは魔王フールについて、賢老ダルフから説明を」

口火を切るのは魔術師の庵から来た老人。

「検索のクークル導師から預かった結果を伝えよう。魔王フールの命題は勇者。犠牲は愚者」

「愚者とは?」

「知能を虚ろに奪われたのだろう。勇気とは無謀である。殺人を犯した魔導師はいずれ魔王となり幸せな者を傷つけたい衝動に襲われるのが歴史である」

「迷惑な。では能力の詳細は?」

「万能にして蛮行。肉体も魔法も恐ろしく強い。弱点は罠に掛けやすいが果たして効くのかどうか」

執事はもっとも気になっている質問をぶつける。

「スタンピードまでの猶予は?」

「それは分からん」

が、返ってきたのは意外な答え。

「検索の魔導師でもですか?」

「あれは未来を読む命題では無いからな。魔王はランダムで眷属を呼び続け、臨界値を超えるとスタンピードが起きる仕組みになっておる」

「では今日のように処理し続ければ」

「悪くは無いが、たとえばドラゴンを引けばそれだけでスタンピードは起こる」

ガチャのようなものか。

「分かりました。他の方、何か質問は?」

「ない、続けてくれ」

聞きたいことはあっても老人が答えられる事は無さそうだとブラインは判断。

「次に街の現状報告を。冒険者ギルド」

「はい!現在フォレストエンドはフールの侵攻を受けており、迷い木に全体を囲まれて完全封鎖されています。また冒険者は疲弊しており残存戦力は壊滅的です」

ブラインが手を挙げた。

「今朝の爆撃音は聞かれましたか?安心してください。我々、援軍の力によりじきに正門を通れるようになるでしょう」

安堵の空気が流れた。

「領内の報告を、リョグ」

「あー、オールクリア。1割ほど逃亡したが統制は取れている。援軍が来なけりゃヤバかったかもな。俺を含めて20人なら決死隊に出せるから援軍の下で使ってくれ」

少し厳しい顔でイゼルへと視線は向くが、

「森林警備隊」

「フールは魔王であるから、日常業務の範囲を超えている。援軍に感謝を。辛うじて新型結界の再起動に成功し、24時間体制で森側からの侵攻に耐えているため、討伐作戦には後方支援とさせて頂きたい」

イゼルはぬけぬけと答える。

「以上が街の現状です。次は援軍の勢力について教えてください」

「戦力はS級の連撃のマーラを筆頭に神剣のソルド、毒使いシュガー。他に、A級5名」

「足りるのか?」

ぬけぬけと問うたのはイゼル。

「マーラの戦力が突出していますが、正直厳しいかもしれません」

「ふむ」

イエスマンが続ける。

「援軍の宿は手配済みです。何か、他にこちらに御要望はありますか?」

「そうですね。現地人を採用したいと思っていますので報酬の支払いをお願い出来ますか?」

「出来ませんっ。ギルドの冒険者は疲弊しています」

思わず悲痛な声を上げたのは受付嬢だが、ブライアン意に返さない。

「ご安心を。もっとアングラな力を使います。逃がし屋の噂を知っていますか?」

「逃がし屋?」

リョグが顔を歪めた。

領民の逃亡を幇助した商売敵であり、噂が本当ならリョグと相性の悪い迷い木を出し抜いた凄腕だからである。

「紹介しましょう。入ってきてください」

注目の集まる中、入ってきたのは2人の女を連れた非常に目つきの悪い男。

!?

それを睨んだのはイゼル。

イエスマンも度肝を抜かれた。

やってきたのは、ウラカル!

「くくく、この街のピンチに手を貸したくてな」

借りちゃダメな奴だ。

だけどまぁそんな余裕はない訳で。

「貴方が逃がし屋だと?」

「くくく。その通り。力を見せてやれレン!」

「はいっボス。不滅の炎です」

美人の方の女?がフライパンを出すと燃え続ける炎が乗っていた。

燃料も無いのに燃え続ける理不尽な炎の明かりがゆらゆらと揺れて、不気味に強そう。

はて?どこかで見ましたね?と首を傾げたイエスマンに、「あ、あああれは、台所です!」とメイドがアイコンタクトを送ったが、失敗しウラカルの餌に食いつく。

「それが秘密ですか?怪しげなものを。要求は?」

「今後はスラムの治安維持に力を貸したい」

要は定期的に金を出せ、そして裏社会のトップとして正式に認めろという2つの要求。

「分かりました。そのくらいなら良いでしょう」

イエスマンは了承し、これでフール討伐作戦のメンバーが揃った。