作品タイトル不明
118 新しい朝3
ルカを見ると無意味な動作を止めてふふっと優雅に微笑んだ。すっかり調子が戻ったのか急かしてくる。
「で、誰かさんはたくさん買ってきたけど、どれにするの?1番に選ばせてあげる。早く選びなさいよぅ」
「先に選んでくれていいよ」
「だめ」
その割には僕が何を選ぶか真剣に見てくる。
ルカのために買って来たんだから本当に食べたいのを選んで欲しいんだけどな。
個数はバラバラで、1個しかないメニューも多い。
「相棒、男は度胸だぜ」
まったく他人事のくま吉はお気楽だな。
それならルカが選ばないのにしようか、ニトラ用に1個だけ買ったてらてらと輝く大きな肉にロックオンして取ろうとするとルカの表情が翳った。
んんん!
急旋回を決めてターゲットを変更。
隣りに2個並んだ薄い生地に色々挟んだ料理にタッチダウン。
「これにするよ」
「そうなんだ」
ふぅーっ。ルカがにこにこしながら同じ料理に綺麗な手を伸ばしていくのを眺めて安堵してると、反対側から細い手が現れて激突した。
「ひゃう」
「ご、ごめんなさい、奥さまがどうぞ」
接触事故を起こしたライ姉が気まずそうに目を見合わせる。
うっ、そういう事なら3つあるのにすれば良かったな。ルカは貴族の娘なのか毒見が必要だったのかも。
どうするかルカを見ていると首を振り、ライ姉が困惑する。
「だめ」
「申し訳ありません」
ルカが悪戯成功みたいな顔で笑う。
「半分にしましょう」
「奥さまっ。大好き!」
嬉しそうにルカに抱きつくライ姉を見てふふっと和む。
手の中にある不思議料理はずしりと重く1つは多いかも。
「そうだ! 次は3人で分ける?」
あれ?どや顔だったルカがわなわなと震えた。
「はやく言いなさいよ!」
無茶苦茶すぎる。
ドン引きしてると、くま吉がぽんぽんと叩いて追撃してきた。
「相棒、反省は次に活かせばいいんだぜ」
「さすがね!クレイジーベア」
まぁルカがご機嫌ならそれでいいけど。
少しもやっとしながら、口に入れるとスパイシーな香りが食欲をそそりガツンとして美味しい。
しゃきしゃきの野菜の食感が楽しく粒粒のお肉が嬉しくて、あっという間に一品目を完食。
「ん? ありがとう」
うさぎちゃんから差し出された紅茶を飲んで口の中をリフレッシュしてると、ルカが食べ終わったようだ。
「次はルカが選んで」
「うん」
きょろきょろと楽しそう。
「これにする」
輝くような笑顔でルカが選んだ二品目は、1個だけ買ったフルーツサンドイッチ。
なんで?1個。そういえばそれだけやたらと高かったような気がする。さすがルカ。
うさぎちゃんがカットすると、白いふわふわした雪のようなムースに赤と緑の果物の断面がより鮮やかになって誘惑してくる。
最初に手に取った。
「ルカ、毒見は任せてね」
あれ?なぜか残念な目で見られたんだが。
「はぁーこれだから」
「相棒はもうちょっと女心を学ぶんだぜ」
「奥さまファイトです」
さっきの事もあって、ちょっと不機嫌になりながら一口サンドをぱくつく。
んあああああ!幸せ。
粗暴な甘さに、やや酸味のある果実がジューシーに踊る。
それは華やかで複雑な甘み。
これは全てが許せる、そんな味。
争いなんてくだらない。
溶けるように消えた余韻を楽しむ。
呆れた顔のルカがフルーツサンドの欠片を無造作に掴むのを見て、先駆者として笑わずにはいられない。
甘いね!
君は素朴な見た目に油断した。
ぷるぷるした口に消えると、ほらね!氷のような表情がふわっと和らいだ。
ふふっ、これが甘味の力。
この店はキープ。
「貴方、これ凄い!」
「流石だな、相棒」
最後にライ姉がおそるおそる続くと、目がくわっと開き全身で喜びが溢れ出た。
「ご主人様、感動しました」
ふふふ。これは隠れた名店を発掘してしまったのかもしれない。