軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104 人形使いルカ11

案内人に押し付けられた馬車をどうしようかと考えてると、ルカの興奮した声が聞こえた。

彼女の後ろ姿はとても小さく可憐で、ただでさえ大きな屋敷が城のように錯覚してしまう。

「凄く大っきい!」

「え?」

くるりと振り返ったルカは、妖精のように微笑む。

「やっぱり、貴方は凄い!」

「相棒!痺れるぜぇ」

「うん、ありがとう」

純粋な2人の賞賛が心地よい。

微笑んだルカの長い睫毛から覗くキラキラとした瞳は、僕だけを見つめてる。

家を買って良かったなあ。

これが幸せか。

ブルル。

ひゃうっ。馬の湿った鼻息と、つるつるすべすべな毛並みが少しくすぐったいよ。

構って欲しいと顔を擦り寄せて、二人の仲に割って入ってきた馬を、悪い子めっと撫でてやると大きな瞳は気持ち良さそうに目を細めた。

ふふっ。

「うわき?ねぇ、私だけを見て」

冷たいルカの声が、背筋を撫でてゾクリと縮み上がる!

「え?…何を言って。勘違っ!?」

焦って振り向いたら、声に反してニマニマと笑ってた。お腹を押さえてる。

「ふふっ可愛い」

あーっ!やられた。

流石のルカも馬に嫉妬しないなんて少し考えれば分かるのに引っかってしまい、ちょっと悔しい。

ぐぬぬ。

お姉さんぶったルカが余裕たっぷりに馬を撫でた。細い滑らかな指が毛並みを軽やかに泳ぎ、艶めく唇は声を奏でる。

「ねぇ、この子の名前は何にするの?」

「そうだなぁ…どうしよう。ルカが決めてもいいよ。あっ!」

やっぱり今の無し! なんて言葉は間に合わなくて、返事はすぐに返ってきた。

「クレイジーホースは?」

「あぁっ」

そうだった。ルカは服のセンスは抜群なのに、なぜか名前のセンスだけは絶望的なんだ。

だってさ、服とか鞄の作品名を聞いたらNumber1156とかだよ?でも、それがコレクターにはたまらないらしく、そのせいで変な自信をつけてしまってる。

「主、イカしてるじゃねぇか!」

「どうしたの?エクス。良い名前よね?」

「いや、何でもない」

馬を見るとまるで気にしてないようだったので、お前は今日からクレイジーホースだぞ。僕だけが気にしてるようでなんだかモヤモヤしてしまう。

「よろしく、クレイジーホース」

ブヒヒィン。

馬小屋に連れていくと餌と藁は案内人が置いていったみたいで、初級魔法で設備を整えれば完成。嬉しそうに興奮しだしたので鍵はいらないかな。

「日も暮れちゃったね、そろそろ中に入ろうか」

「ドキドキする」

熱い吐息のルカの期待に応えるように、ガチャリと執事の真似をして優雅に扉を開くと、大理石の磨かれた綺麗なエントランスが広がり、ライ姉がどこかで花を摘んできたのか花の香りがした。

きょろきょろしてるルカが可愛い。

「お邪魔します。……ふわあ、凄い」

興奮して裾を引っ張ってきたけど、これは少し注意しないと。

「それは違うよルカ」

「え?……ごめ、ごめんなさい」

え?どこで間違った?とすごく心配そうな顔で見上げてきた。

そう、君は間違ってる。

「ただいま、でしょ」

「!?」

やられたら、やり返す!

安堵と怒りと幸せが、ごちゃまぜになって混乱したもよう。

終いには、あうあう言いながら、ぺちっとお腹を叩かれた。ぷしゅーっと顔から湯気をあげて僕の逆転勝利は確定。

「可愛いね、ルカは」

「ううっ」

空気を読まないくま吉が、ピンチの主を手助けする。

「なあ相棒!あの手摺りでひと滑りしてきていいか?俺っち我慢できねぇ。なあ!」

「クレイジーベアー、それは後にして」

恥ずかしさをぶつけられたくま吉はわたわたするけど、ルカにぎゅっと抱きしめられた。ちょっと安心を取り戻した顔のルカが可愛い。

「案内するよ」

「うんっ」

「主〜。そんなあ。ひと滑りでいいんでい。な!」

じたばたするくま吉よ。

諦めてくれ。

長い廊下に着くと、地面すれすれをギルマスの自画像がタイミングよく滑ってきたのでひょいと乗る。

すすすー。

「やっぱりこれは便利!ルカも」

「エクスぅー」

「相棒、待ってくれぇー」

ルカ達が乗り遅れて声が離れていく。

まぁ、端まで行ったら戻ってくるのでしばしお待ちを。

端に着いたら困惑した顔のルカの表情がだんだんと近づいてきて面白い。

ニトラにやられたように、手を伸ばしてルカを迎えにいき、引きあげる。

「おいで」

「ひゃう。……あぅ癖になりそう」

ルカが、なぜか小さくしゃがみ込んで、くま吉で顔を隠してしまった。

隠れんぼレベル1だな。

これなら僕の方が上手い!

次の乗り換え地点が近づいてきた。

どうしよう。

わたわたしてると、しゃがんだまま目隠ししたルカが、ぴょんと飛んで乗り換え完了。まじかよ。

すすすーと、乗換地点が離れていく。

「うわわ」

危うくバランスを崩しかけて、声を上げたのはギリギリ乗り換えた僕。

ドキドキするぅ。

ちょっとルカさん、順応早すぎませんか?目隠しなのに。

僕の部屋に到着〜。

「ドキドキしたね」

「うん」