軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第286話 帰って来た学園生活

学園都市ルミエスト、そこは世界各地から集った優秀な若人達が勉学に励む、世界最高峰の教育機関である。今日も今日とて若人達は切磋琢磨し、己が描いた未来へと向かって成長していく。ただ、この日の学園はいつもよりも少し騒がしいようで。

「おっと、どうやらお姫様のご帰還のようだね。このシャルル・バッカニアが君のハートをお出迎えして―――」

「―――リーちゃんお久ぁ! ずっと会えてなかったから、私の心がリーちゃんを欲すし! チルする? チルしよ!」

「ぐぺあッ!?」

お家の都合で学園を離れていたリオンが帰還すると、友人生徒達がこぞってお出迎えをしてくれた。特に親友の雷竜王もといラミなどは、シャルルを押しのけ、吹き飛ばしてまでリオンに抱きついている。

「そんなに長くは空けてないよ、雷ちゃん? 確かにポツポツ外出はしてたけど、単位を落とす心配もないし」

「私にとっては長かったの! ほっぺすりすりさせて、すりすり!」

「ら、雷ちゃん、すりすりの勢いが凄いよ~!」

ラミとリオンの頬がすりすりされる度、バリバリと鮮やかな電気が生成。二人以外が触れると大変に危険な代物であるが、見た目としては大変に綺麗であった。

「御覧になって。ダイヤモンド世代を代表されるお二方が、遊び戯れていらっしゃいますわ」

「まあ、何と尊い光景なのでしょうか。私、胸の中に熱いものが込み上げてきますの」

そんなバリピカな二人を遠目に見て、何やら頬を染める女生徒の姿が多数ある。

「え、ええっと、何だか視線を一杯感じるような……? それに、ダイヤモンド世代って?」

「ああ、この前S級冒険者との対抗戦があったでしょ? アレを見た連中が空前絶後の天才達が集う世代だ、とか何とか言って、そんな名前で呼びだしたのよ。で、うちの生徒もそれに感化されて、事あるごとにそう呼ぶようになっちゃったの。全く、いい迷惑よね」

そう説明しながらも、ベルは満更でもない様子である。案外、こういったところもセラと似ているのかもしれない。

「ぐ、ぐふっ…… ハァ、ハァ、よし、回復してきた……! た、対抗戦は保護者だけでなく、国の上層部やらも見ているからね。団体として負けてしまったとはいえ、その差は僅差も僅差だったんだ。つまりはS級冒険者にも引けを取らない、最強の世代として認知されたって訳さ! 皆と同じく世代を代表する立場として、僕もなかなか鼻が高いよ、フフッ!」

「誰が何を代表してるって?」

「べ、ベルちゃん、抑えて抑えて。復活したてのシャル君に止めを刺そうとしないで」

「リオンさん、ここは心を鬼にして、ベルさんに一任しましょう。時には友人を信じる事も必要です」

「あら、ドロシーったらなかなか良い事を言うじゃない。私、今の貴女となら仲良くなれそうだわ」

「奇遇ですね、私もそう思っていたところです」

「いやいや、それ僕が酷い事になっちゃうからね!? と言うかドロシー君、君ってそんなキャラじゃなかったよね? 僕を庇ってくれる側の可憐なフラワーだったよね? イメチェン後も僕の心はキュンキュン来るけれども、たまには前の儚さを見せてくれたって良いんだぜ、プリンセス?」

「ベルさん、私も一緒に止めを刺しますね。何かイラっときたので」

「奇遇ね、丁度私もそう思っていたところなの」

「二人とも、ストップストップ! 目の色が冗談でなくなってるから!」

リオン、緑魔法と時魔法をぶっ放そうとしている二人を、何とか止める事に成功。こうしてシャルルの命は辛うじて繋がれるのであった。

「まあ、リオンさんがそこまで言うのなら」

「そうね、私も少し 大人気(おとなげ) なかったかも」

「ふ、二人が分かってくれて、僕嬉しいよ……」

「ふむ? よく分からないけど、リオン君はお疲れのようだね? 長旅の直後なんだ、それもまた旅の醍醐味ってやつだけど、無理は禁物だよ。ああ、そうだ。何ならこの後、僕の部屋で休んでくれても―――」

「―――シャル君、お願いだから自分のピンチに気付いて!?」

その後もリオンは怒れる悪魔と神を必死に宥め、抑制する事に何とか、本当に何とか成功するのであった。シャルルが壁に埋まってしまってはいるが、死んではいないので成功は成功なのである。

「ごめんシャル君、僕にできるのはここまでだよ……」

「うわー、えぐいわうけるー」

「自業自得よね」

「その通りですね」

ベルとドロシーはすっかり意気投合していた。

「そうそう、戻って来たと言えば、エドガー殿とそのご友人達も少し前に学園に戻って来たでござるな。対抗戦の時より姿を見ていなかったので、拙者心配していたで 候(そうろう) 」

「って、グっち!? 居たん!?」

「いやはや、実は居たでごわすよ。小心者故、話すタイミングを見計らっておったのじゃ。影が薄くてお恥ずかしい限り」

「影が薄いどころか、個性の塊だと思うのだけれど?」

「そ、そうでござるか? 照れ申す」

そう言ってグラハムは恥ずかしそうに七三分けを綺麗に整え、眼鏡をかけ直すのであった。

「拙者の事はさて置き、エドガー殿は戻ってからというもの、何やら表情が柔らかくなったご様子。何があったのかは知らぬが、恐らくはめでたい事があったのじゃろう。うむ、これはめでたい」

「ほーん? まっ、とりま皆無事でハッピーって事っしょ? うん、私もハッピーって次の授業テストじゃん!? うげぇ、うつぅ、えぐぅ……」

「落ち込んでるところ悪いけど、貴女試験だろうと毎回名前書いて寝るから、全然問題ないでしょ?」

「いやいや、問題大有りだよ。雷ちゃん、そろそろ真面目にやらないと単位落とすよ? せめて空欄は全部埋めよ?」

「リーちゃん、それは無理な話ってもんよ。私、やばいくらいAYモードだし」

「最初から言い訳するのは駄目だってば。ほら、今から少しでも勉強しよう!」

「お、鬼だ……! 鬼がおる……!」

世界最強種、竜族の頂点の一角が、リオンに強制連行されて行ってしまった。

「リオンさんはどこまでもお人好しですね。将来、悪い人に騙される事にならないか、少し心配です」

「そんな無謀な奴が仮に居たとしても、あの子の体質上、近寄られた瞬間に悪人から善人に変化するわよ」

「ああ、『絶対浄化』の…… それもそうですね。ところで、今日はクロメルさんの姿が見えませんが、どうしたのです?」

「我がセルバ寮の学友達と街に出ているでござる。聞いた話によれば、本日はクロメル殿の着せ替えデー、なのだとか」

「それ、おもちゃにされてません?」

「愛されているのでござるよ」

「マスコット的な意味でね」

街の洋服店であれやこれやと着せ替えられるクロメルの姿。そんな光景が容易に思い浮かぶ一同なのであった。

「お友達との関係が良好なのは良いけれど、そんな調子で今年卒業できるのかしらね、クロメルは。私とリオンは今年の首席卒業を目指してるから、来年は居ないって事を理解しているのかしら?」

「飛び級、というやつでござるか? なかなか気の早い話でごわすな」

「能力に見合った現実的な話をしているだけよ。そう言うグラハムだって、それだけの能力と頭はあるでしょ?」

「拙者が? ガッハッハ、そんな事はないでおじゃるよ~。拙者はじっくり三年かけて、自らを高めていくでござる」

クイクイっと眼鏡を上下させるグラハム。

「そ。まっ、私はリオンの結婚式に間に合えば何でも良いわ」

「む? ベル殿、今何と?」

「あら、言ってなかったかしら? あの子、半年後に結婚するのよ。だから飛び級で卒業する必要があるのよね」

「「「「「………」」」」」

ベルがそう言った次の瞬間、周囲の空気が凍り付いた。そう、ドロシーが時魔法を使った時の如く、シンと静まり返ったのだ。しかし、それはほんの束の間の出来事。嵐の前の静けさでしかなかったそれは、容易に崩壊するのが定めだ。

「ほう、それは慶事じゃ」

「「「「「キャ、キャーーー!」」」」」

「………(バキバキ)」

「う、嘘だぁーーー!?」

周囲から他生徒達の黄色い声が上がり、ドロシーが持っていたコップを握り潰し、壁に嵌っているシャルルから絶望の叫びが轟くのであった。