軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第241話 統合

風神脚(ソニックアクセラレート) による速力上昇は、剣による攻撃速度の上昇にも繋がっている。エルドがこちらに振り返る僅かな間に、俺が放った斬撃は二桁の大台に届きそうになっていた。

斬撃の一度目、『 不壊(ふえ) 』が機能し、奴を斬るには至らなかった。ガキィンという金属音を奏でるだけで、見た目上の変化はなし。以降の斬撃も四度目までは、同じような結果に終わる。しかし五度目以降、奴の権能に変化が起こった。

「ぐっ……!?」

クライヴ君の刃がエルドに触れた瞬間、それまで金属音のみを鳴らしていた斬撃が、奴の肉体を切り裂いたのだ。六度目、七度目の攻撃も成功し、それまで無傷を誇っていたエルドに対し、連続してダメージが通る。どうやら俺の狙い通り、エルドはクライヴ君によって呪われてしまい、『不壊』が機能しなくなったようだ。

呪いは様々なバッドステータスを引き起こす、厄介極まりない存在だ。クライヴ君の場合は柄を握っている限り大丈夫なように調整しているが、世に出回っている他の呪物はそうもいかないだろう。それこそ呪いの武器を使用するのであれば、何かひと工夫必要になってくるだろう。ビクトールと戦った時、『保管』内から直接それらを射出する事で、呪われるのを防いでいたクロトみたいな感じでさ。ああ、そう言えばあの時も、この方法でビクトールの魔法を剥したんだっけな。まさかクライヴ君を使って、あの時の再現をする事になるとは…… 感慨深い、とまではいかないが、世の中分からないものである。

「ハハハッ、次々行くぞ!」

俺はそのまま攻撃を止めず、スピード重視で剣を振るい続ける。クライヴ君の呪いは刃に触れただけでも乗り移るが、対象を斬った時の効果はその比でなくなる。つまるところ、斬れば斬るほどに膨大な数の呪いが重ね掛けされ、斬られれば斬られるほどにエルドの状況は悪くなっていくのだ。

今までエルドがダメージを負う場面がなかったってのもあるが、まだ奴が回復魔法、或いは『自然治癒』の類を使うところは見ていない。さあ、どうするよ? 速さは圧倒的に俺に分があるぞ? 解呪や回復はしないのか? 早く手を打たないと呪いは積み重なるばかり、更には『致死』持ちの変態が、お前を抹殺しようと背後から迫っているぞ? なあ、どうするんだ? お前が導いた解決策を、早く俺に見せつけてくれよ?

「……次は私の番か」

「何が――― っと!?」

エルドを切り裂いていたクライヴ君の刃が、その途中で止められる。さっきまでサックリ斬れていたが、急に妙なパワーが働いた感触だ。引き抜こうにもビクともしない。『不壊』によるものではないようだが…… そうこうしている間にも、エルドは拳を固め、何やら格闘戦を仕掛けてくる様子だ。

「フゥッ―――」

「――― 多重衝撃(ハイパーインパクト) !」

奴の拳が俺の頬に触れる寸前のところで、クライヴ君の刃を通して、奴の内部から衝撃の嵐を爆発させる。そうする事で強制的にバランスを崩させ、向かって来た拳を躱し、クライヴ君を引っこ抜く。ああ、なるほどな。お前が刃を止めた力の正体は、純粋な筋力によるものか。パワー勝負じゃ勝ち目がなさそうだから、魔法の力で抉じ開けさせてもらった訳だが…… 使い手がオリジナルの奴だったら、今のはかなり危なかったかもな。

この戦闘中、『統合』の権能が発揮させる条件について色々と考察していたが、漸くその正体が明らかになってきた。奴が今まで使ってみせた権能は『鍛錬』と『不壊』、そしてたった今使用した『 魁偉(かいい) 』である。まあ、恐らくは『融合』の権能も 今(・) 備わったんだろう。ダハク達からの念話にとれば、今さっきハオとハザマを倒したって言うからな。要はお仲間の十権能が倒されると、その権能がエルドの下にやって来る仕組みなんだろう。他の十権能がやられたとしても、そういった意味ではこいつのメリットになり得る訳だ。

っと、そろそろ 風神脚(ソニックアクセラレート) の効果が切れる頃合いだ。『魔力超過』込みは効果がでかいが、やはり時間は極端に短い。

「何とも歪な権能だ、なぁっ!」

「ぐうっ……!」

「ケルヴィム!」

新たに魔法を付与し直すまでの間、ケルヴィムと連携するのが最善だろう。蹴りを放ち、エルドをケルヴィムの方へと吹き飛ばす。うん、これもまた立派な連携。如何に『魁偉』が使えるようになったとしても、『不壊』が働かない状態にある今、エルドの絶対的な防御力は崩れ去ったとも同然。となれば、ケルヴィムの『致死』も効く筈だ。

「ああ! 俺の手で殺してやるぞ、エルドォォォ!」

「……ぬうんッ!」

エルドの背から奴の筋肉が盛り上がり、エネルギー体の白き翼に纏わりついていく。それはいつか、転生神となったゴルディアーナが見せてくれた――― 筋肉の翼だった。エルドはその翼を昆虫の羽の如く超高速で羽ばたかせ、ケルヴィムの方へ向かっていた軌道を力づくで修正。天の都サンゼルスの上空を飛び回り、俺達との距離を取り始める。

「おいおい、そんなのもアリなのかッ!」

「ケルヴィン、喜んでいる場合か! そしてエルド、貴様、この期に及んで逃げるつもりか!?」

「向かう先に『致死』が待っていたら、誰だってその場を離れるものだろう? しかし、やってくれたものだ。複数の権能を駆使しても、ここまで一方的とはな。つくづく自分の弱さが嫌になる」

そう言いながらも自らの筋肉を操り、肉体改造に励むエルド。精々が中肉中背であった筈の奴の肉体が、見る見るうちにゴルディアーナ味を増していく。但し顔は据え置きなので、少しアンバランスか? しかし、その筋肉のお陰なのか、空中での移動スピードは確実に今の方が速い。

「不幸中の幸いと言うべきか、こちらの力は呪いの中でも働いてくれるようだ」

「そいつは良かったな。で、ハザマも倒されてしまった訳だが、『融合』の方は使わなくても良いのか?」

「何、ハザマが? ……なるほど、そういう事か」

流石と言うべきか、今の言葉でケルヴィムも察してくれたようだ。

「意地の悪い質問をしてくれるものだ。その調子だと、もう知っているのだろう? 『融合』は強力だが、前準備のない状態では無力に等しい。今私がこの権能を所持したところで、何の意味も成さないと」

「へえ、意外と素直に答えてくれるものなんだな?」

「君は私の権能について、色々と勘付いている様子だ。ならば、今更隠したところで意味はあるまい。今更権能の条件を知られたところで、これ以上戦況が動く事もないだろうしな。まあ贅沢を言えば、グロリアの『 間隙(かんげき) 』、或いはイザベルの『境界』があれば、私としては扱いやすかったのだが……」

ああ、それらの権能は使えないだろう。グロリアは北大陸で拘束中、イザベルとかいう権能三傑も、セラとジェラールが引き分けに持ち込んだと、そう報告を受けている。そしてもう一人の権能三傑であるレムは、現在セルジュが愛でているとか何とか、よく分からない感じになっていたっけ? まあ、あそこにはメルとシュトラが居るんだ。変な事にはならないだろう。 ……多分。

「ここ以外の戦場は、もう殆ど決着がついたみたいだな。ああ、いや、厳密にはまだ一人お仲間が居るんだったか?」

「パトリックの事かな? まだ同志が残っている事自体は喜ばしいが、生憎と彼の権能は私に使いこなせるような代物では――― ぐうっ……!?」

小粋な雑談の途中だが、生憎と今は空中戦の最中でもある。俺は伸縮させたクライヴ君の刃を鞭にようにしならせ、『隠蔽』を適用させた上で、死角よりエルドの筋肉翼をカット。更にはケルヴィムもこれに呼応し、密かに一本だけ伸縮させていた骨の翼で、エルドの心臓部を背後から貫くに至った。