軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第152話 システム17

「完全なる神化? 私達神柱を最後の一体だけにして、強化の最大化を謀るという事ですか? つまり、他の神柱は抹殺すると?」

ルキルの言葉を耳にして、最初に問い質したのはドロシーであった。彼女の目には明確な敵意が宿っており、言葉の色からも刺々しさが感じられる。一歩でも近づいたら、そのまま攻撃を仕掛けて来そうな危うさまであった。

「誰もそんな事は言っていませんよ。神人ドロシアラ、貴女、天使の話は最後まで聞くものです」

「………」

「待って待って、シーちゃん。無言のまま魔力を練ったら駄目だよ!」

「リオンさん、どうかそこを退いてください。照準がずれてしまいます」

人の話を聞かないお前が言うなというツッコミどころを飛ばして、ドロシーは早々に攻撃態勢に入っていた。即座にリオンが間に入ったから良かったものの、この二人だけであったら、戦闘開始は免れなかった事が容易に想像できてしまう。

(ルキルの喧嘩腰は予想の範疇だが、ドロシーも 神柱(なかま) の事になると、ここまで周りが見えなくなるのか。取り扱い要注意っつうか、ったく、本当に危なっかしいな)

と、一番の戦闘狂がひっそりと自虐ギャグをしたところで、話の本筋は漸く戻る。

「確認しますが、残存する神柱の数が減る毎に、残された神柱の強さが強化される事は、流石にご存知ですよね?」

「……ああ、色々あって今残っている神柱は、そこにいるドロシーを含めて四柱だけ、単体での強さはS級冒険者に迫るくらいになってる。直に体験した俺が言うんだから、まあ間違いないよ」

最初に戦ったパーズの神柱、神狼ガロンゾルブと戦ったのは、S級昇格式が始まろうとしていた頃だった。ケルヴィン自身は実際に戦ってはいないが、セラやリオンをはじめとした仲間達がパーティで挑み、何とか勝利できる程度の強さだったと、そう配下ネットワークには記憶されている。当時の仲間達のレベルは100前後、となれば神狼ガロンゾルブは、それよりも幾らか上のレベルであった筈だ。

「ドロシー、今のお前のレベル、どれくらいだ?」

「はい? 何でケルヴィンに教えなければならないのですか?」

「シーちゃん、どのくらいだっけ?」

「レベル166よ、リオンさん」

「………」

ケルヴィンの時とは違い、リオンに対しては素直に答えるドロシー。扱いの差が凄まじい。

「ま、まあ確定の話ではないけど、神柱が一つ倒される度に、10レベルほど強くなっている印象かな。で、それがどうしたんだ? 仮に最後の一柱になったとしたら、レベル200そこそこの強さになるって話か? 確かにそれは十権能にも通じる強さかもしれないが、正直それくらいなら突出した強さとは―――」

「―――違います。そもそも、神柱が倒される事で他が強化されるのは、緊急時に行われる 代替(だいたい) の手段でしかないのです」

「……? どういう事だ?」

「他に神柱の正当な強化手段があった、という事です。それが神柱の統合――― 要は合体のようなものですよ」

「「が、合体!? 超合金的な!?」」

その言葉にロマンを感じたのか、ケルヴィンとリオンは揃って目を輝かせていた。二人の頭の中では、部位パーツに変形した神柱達が組み合わさり、巨大なロボを形成しているのかもしれない。

「一体何を想像しているのです? ……その様子だと、やはり知らなかったようですね。まあ無理もありません。これは天使の中でも限られた者、長達や私のような上級天使にしか、エレアリス様は知らせませんでしたから。恐らく 現代(そこ) のデラミスの巫女や、メルフィーナ様もご存知ないのでは?」

「なっ! メルは兎も角として、コレットも知らない事なのか!?」

テンションが高まったせいなのか、発言に遠慮が一切ないケルヴィン。ある意味で二人を信頼しているというべきか、理解した上での扱いの差が凄まじいというべきか。

「……確かに、そのような現象は初耳です。ですが、本当にそのような方法があったとすれば……」

「ええ、この上なく危険ですよ。神柱の死亡による強化が加算だとすれば、合体による強化は乗算。それこそ、S級冒険者どころか転生神にも迫る強さに至るでしょう。言うなればこの方法は、地上に束縛状態にない神を降臨させるようなもの。だからこそ、おいそれと地上の者達に教えられる代物ではなく、エレアリス様はその知識を広めるのを、真に信頼の置ける一部の者にのみ留めたのです」

「は~、壮大な話だね~。情報通のアンジェさんも初耳だよ。でもさでもさ、それってメルさんが知っていても、全然おかしくないんじゃない? ケルヴィン君はああ言っていたけど、メルさんだって次期転生神に選ばれるくらいに凄い天使だったんでしょ?」

「おお、そう言えば確かに」

アンジェの指摘を受け、ケルヴィンが若干正気に戻る。

「そこの猫耳、天使時代のメルフィーナ様を褒めるとは、なかなか見る目がありますね。確かにメルフィーナ様も上級天使でしたので、エレアリス様から神託を受ける機会はありました。……ですが、神託は 白翼の地(イスラヘブン) の叡智の間でしか受ける事ができません。あの頃のメルフィーナ様は退屈を嫌って 白翼の地(イスラヘブン) を飛び出していましたので、そもそも神託を受けていないのです」

「ああ、それは、うん……」

前世の前世で、当時のメルフィーナと旅をしていた事を思い出すケルヴィン。どうやらその神託が下ったのは、そのタイミングであったらしい。

「知らぬ存ぜぬの話はもう結構です。そもそも、我々の合体とはどういったものなのですか? まさか、本当に神柱同士が合体する訳ではないでしょう?」

「はい? いえ、本当にしますよ、合体?」

「……えっ?」

ルキルのまさかの返答に、言葉を失ってしまうドロシー。なぜか顔が真っ赤である。何を想像しているのかは全くの不明であるが、上から下まで真っ赤である。

「一体何を想像しているのです? 安心してください。恐らく、ドロシアラが思い描いているようなものではありませんよ。おませさんですね」

「わ、私はおませじゃありません!」

「はいはい、落ち着きなさいよ。自分で『王の命』でも使ったら?」

「落ち着いています!」

と、一通りドロシーで楽しんだ後、ルキルは神柱の合体について話し始めた。

「―――システム17- 神威(しんい) 、合体とはつまり魂の融合です。勇者が死亡し、他に世界の脅威を排する手立てがなくなった際に、この世界の理は自動的に起動する事になっていました。まあ神柱にバグが生じ、エレアリス様が神の座から降りた際に、この理も表向きは消滅した事になっているんですけどね」

「表向きはって言うと、実際はそうじゃなかったんだね?」

「ええ、いつの世も抜け道は存在するものですからね。エレアリス様の退位は唐突で、転生神の引継ぎも半端な状態で行われていたが為に、このシステムは限定的にその機能を残していたのですよ。オートが無理ならマニュアル、自動的に起動しないのであれば、手動で起動させてしまえば良いのです」

「手動って…… ええと、具体的にはどうするんだ?」

「暴走起動状態にある神柱を生かしたまま一ヵ所に集め、メインとなる素体を中心に設置するんですよ。オートモードであれば世界の理が勝手に神柱を集めてくれるのですが、その機能は失われていますからね。拘束して強制的に集めるしかありません。ただこの手動方法であれば、別に世界の危機でなくても起動できるので、その点は便利ですね」

「想像以上に脳筋な方法だし、危機管理もクソもないな、世界の理……」

呆れ返るケルヴィンであるが、一方ではこれも 黒女神(クロメル) がわざと残した対 戦闘狂(ケルヴィン) 用のお楽しみ機能なのではないか? と、そんな事も想像してしまう。ケルヴィンが思うに、正直、あり得ない話ではなかった。

「あとは資格を持つ天使がコードを入力すれば、システムの準備は完了…… 力だけでなく能力まで引き継がれ、晴れて完全なる神化が成される訳です」

「え、何だって!?」

耳にしたその朗報が信じられず、突発的に難聴を患うケルヴィン。反射的に勢いよく聞き返してしまう。力だけでなく能力も、それはケルヴィンにとって大変魅力的な売り文句であったのだ。