軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第134話 忘れ物の回収

堕天使の移動手段であるらしい巨大杭を見送った俺は、その直後にメルとの合流を果たす。

「あなた様、わざとルキルを見逃しましたね? わざとですよね、絶対そうですよね?」

「ご、ごめんなさい……」

とまあ、当然のお叱りを受けてしまう訳だが、こればかりは仕方がない。空中でのアクロバティック土下座を決め、何とか許してもらった。その後にリドワンを配下に迎えた事を伝えると、更に難解な表情を向けられてしまう。いや、こっちは朗報だろうと。喜ぶところだろうと。

「主が器用な土下座をしてる。非常にレアな光景」

「浮気でもしたのでしょうか? これはメイド長にもお伝えしなくては」

「こらこら!」

ちょっとしたボケを拾ったところで気を取り直し、バトルの流れ弾処理に徹してもらっていたムド達とも合流。レイガンド首都の障壁は殆ど無傷のまま健在だし、取り敢えず防衛は成功したと言って良いだろう。ルキルこそは取り逃し――― いえ、はい、俺が見逃してしまった訳ですが、十権能の一人と契約もできた事ですし、ここは健闘を称え合っても良い場面じゃないですかね? あ、駄目? ええ、すみません。メルさん、そろそろ機嫌を直して頂きたいんですが…… うん、俺のポケットマネーでレイガンドの名物、好きなだけ食って良いから。

「さあ、レイガンド王に報告致しましょう! さっさと報告して諸々を済ませましょう!」

「本当にお前さぁ」

ともあれ、こうして現金なメルはすっかり機嫌を直してくれたのであった。

「あっ、そう言えば……」

「ん? どうした?」

「ルキルを追うのに夢中で、パウルを氷漬けのまま放置していたんでした。うっかりさんです、てへぺろっ」

「「「………」」」

クロメルの真似をしても、駄目なものは駄目。俺はそうツッコミを入れられる男である。かくして、うっかりなメルさんは俺のポケットマネーによる名物食べ放題権を剥奪されるのであった。

「うっかり、そう、本当にうっかりなんです! 急いで救助して来ますから! ついでに道すがら発見したレイガンドの王子も、しっかりと回収して来ますからッ!」

いつにも増して必死なメルは、それから複雑な経路を辿って氷漬けのパウルを発見&救出、察知スキルは持っていない筈なのに、どうやったのか雪山で遭難(?)していたレイガンドの第一王子とその護衛達を見つけ出してくれた。マジでスピード解決である。そのやる気、是非とも平時にも出して頂きたい。

「ぜぇ、ぜぇ……! 天使、必死になれば案外できるものですね……!」

「いや、本当によくあんな迷路みたいな道を踏破できたな、お前…… 王子達も速攻で発見したし……」

両手を地につけながら、肩で息をするメル。そんなメルの後ろには、状況をいまいち理解していないのか、ポカンとした様子のパウル達がつっ立っていた。うん、まあ意味が分からないよな。この状況は。メルは説明できるような状態にないし、パウル達には俺から状況の説明をしておく。

とまあ、汚名を返上する為に頑張ったメルは、無事に食べ放題権を再ゲットするのであった。欲望は人を、いや、この場合は天使か。天使を強くする。

「漸く状況を理解できたぜ、マスター・ケルヴィン。しっかし、あの堕天使を追い返して、その仲間を倒しちまうなんてな。流石はマスター達っつうか、強さが異次元だぜ。けど、俺の能力も役に立っただろ?」

「ん? パウルの能力? 何の話だ?」

「あれ、マスターには言ってなかったっけ? 俺の固有スキル『位置特定』を使って、メルの姐さんがエドガー達を捜し出したんだよ」

話を聞くに、いつの間にやらパウルは固有スキルを会得していたらしい。この『位置特定』はパウルに触れた事のある対象が、今現在どこにいるのかを正確に把握する事ができるんだそうだ。所謂人物を対象とした探索系の特化型スキルである。地図があれば、対象が今現在どこにいるのかを指し示す事も可能であるらしい。

「まっ、座標を設定できるストックは三人分までしかないんだけどな!」

「その貴重なストックの一つを、兄ちゃんは分かれる直前、僕に使ってくれていたんだ。そちらの天使の女性が僕達を一瞬で捜し出してくれたのには、そういった仕掛けがあったんだよ」

「へえ、そうだったのか。道理でメルが一瞬で発見できた訳だ――― って、ええと、貴方が捜索願いの出ていたレイガンドの王子、ですよね? 捜索の為に聞いていた特徴と、大分話が違うような……?」

改めてレイガンドの第一王子、エドガー・ラウザーを確認する。温和そうな雰囲気に、柔らかな物腰、言葉遣い――― 随分と、いや、真逆と言って良いほどに特徴が逆転してしまっている。王子と知らずに会ったとしたら、全く気付けないであろうレベルだ。

「ハハッ、こっちが本当のエドガーなんだよ、マスター。学園での姿は、エドガーが王子として演技していたもんだ。まあ、マスター達の前でその姿を晒すとは、俺も思っていなかったけどよ」

「僕達の命の恩人を相手に、演技でしている失礼な態度を取る訳にはいかないでしょ? それにケルヴィンさんは、兄ちゃんが日頃からお世話になっている方なんだよね? それなら、本当の自分を出しても大丈夫かなって。改めまして、助けて頂きありがとうございます、ケルヴィンさん。この御恩は一生忘れません」

「あ、ええと、俺達も当然の事をしたまでで…… うーん、何だか調子が狂っちゃうな」

エドガー王子と握手を交わす。予想した展開とちょっと違ったが、まあこちらの方が都合は良い。これがエドガー王子の本性なら、学園に戻ってから新たな面倒事を起こす事もなさそうだ。特にリオン周りとか、クロメル周りの面倒事をな。流石に一国の王子様を潰すのは、色々と問題が――― あ、もうトライセンの馬鹿王子で経験済みか。何はともあれ、平和が一番である!

「その様子だと、父や学園から伝えられた人柄と、今の僕は大分違って見えるようですね」

「ええ、まあ。特にご学友、ベルの言っていた人柄とは、大分どころではないレベルでかけ離れていますね」

「へえ、ベルさんが? ちなみに彼女、何て言っていたんです?」

「ベルが言うには、ええと…… エドガーは恥を知らないナンパゴミクソ虫野郎で、色んな女生徒に唾をつけようとする不潔かつ不道徳な馬鹿なんだとか。一般学生に毛の生えた程度の実力しかない癖に、何をもって自信満々に生きているのかが理解不能、フラれた回数なら歴代一位を余裕で狙える逆逸材、常に悪目立ちをしているから直ぐに見つかるんじゃない? ぶっちゃけ、シャルルと同レベルに不快って、そんな風に言っていたかな。ああ、あとは―――」

「がふっ……」

「―――ストップ! 申し訳ないのですが、その辺で勘弁してください! それ以上はエドガー様の身が持ちません! あと、あまりに不敬ですので!」

「精神攻撃でエドガー様が血を吐いてるッス。器用ッス。ぷふふッス」

「ペロナ、笑ってる場合じゃないから! 早く回復して差し上げてッ!」

「シャ、シャルル君と同レベル、同レベル……」

「エドガー様、お気を確かに! レベル的にはエドガー様の方が数段上です! 確実に上です!」

「一番傷付くところがそこなんスね、エドガー様」

気が付くと、王子が血を吐きながらぶっ倒れていた。何だろう、この三人からは芸人の魂的な何かを感じてしまう。

「へへっ、エドガーも随分と明るくなったもんだぜ。兄として感慨深いっつか、何つうか」

「パウル、それはツッコミ待ちか? お前もなのか?」

「へ? 何がだよ、マスター?」

「あなた様~、そんな事よりも、早くレイガンドの首都に入りましょうよ~。名物名産看板メニュ~」