軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第135話 おかわり自由無制限希望

頑張ったメルの要望に応えるべく、俺達はその足でレイガンドの首都を訪れる事に。首都の上空ではっちゃけたバトルをしてしまったのもあって、厳戒態勢の中でどう穏便に入ったものかと少し悩みもしたが、その辺は現第一王子のエドガーと旧第一王子のパウルが、上手い事調整してくれた。というか、ルミエストの対抗戦からレイガンド王が既に帰還していたらしく、とんとん拍子で王との謁見に臨む事となった。うーん、スピーディーな展開だ。まあ不必要な面倒事が起こらないのは、大変に喜ばしい。なんと言っても、この後に俺のポケットマネーが破滅する未来は既に確定しているからな。ハッハッハッハ、ハァ……

「ルミエスト以来ですね、レイガンド王。急な謁見に応じて頂き、ありがとうございます」

レイガンド城の謁見の間にて、仲間達と共に床に片膝をついて頭を下げる。もちろん挨拶をしている相手は、王座に就くレイガンド王である。

「うむ、まずは頭を上げるが良い。ケルヴィン殿、我が息子のエドガーを見つけ出してくれた事に、そしてこのレイガンドを堕天使の魔の手から救ってくれた事に、感謝を申し上げる」

上空でのドンパチだけでなく、リドワンと戦う俺の姿も既に確認済みであったようだ。話が早くて助かる。スピーディー&スピーディー。

「しかし、パウルまで一緒なのは本当に謎であるがな。馬鹿むす、ゴホン! そこの馬鹿っぽい冒険者よ、王の前で何をつっ立っておる? S級冒険者のケルヴィン殿でさえ、こうして礼儀を尽くしてくれているのだぞ?」

「ふん、嫌だね。冒険者ってのは自由なもんなんだ。俺は礼儀が必要な相手にしか、頭を下げる気はねぇんだよ。特に馬鹿おや、ゲホン! アンタみたいな頑固な王には、死んでも頭を下げたくないね!」

「ふん、頑固なのは貴様であろう! 冒険者と言えども、最低限の礼儀は弁えるものだ。まったく、貴様はどこまでも愚かだな! その愚かさが直らんのだから、万年A級冒険者止まりなのだ! S級になると息巻いて国を飛び出したのは、一体どこの誰であったかな!? やはり、未だに見た目通りの実力なのかなぁ!?」

「はいぃぃぃ!? 何で俺がA級冒険者だってご存知なのかなぁぁぁ!? 愚か愚か言っておいて、実は俺に興味津々なのかなぁぁぁ!? ストーカーかなぁぁぁ!? マスター・ケルヴィンは懐が深いから、そんなアンタにも頭を下げるけどよぉ、他のS級冒険者は絶ッッッ対に頭を下げないぜ! ストーカーなアンタには、絶対になッ!」

「はいぃぃぃ!? 何を言うかッ! 少なくともゴルディアーナ殿やブルジョワーナ殿であれば、余に対して礼儀を尽くしてくれるわッ! つうか貴様、懐だが何だか知らなんだが、そういう立派なS級冒険者になるのが目標なんだろうがボケッ! 今から器の小さな言動ばかり取りおって! やっぱ馬鹿じゃないか、この馬鹿冒険者!」

「ああぁん!?」

「おおぉん!?」

「「はあぁぁぁぁ!?」」

「「「「………」」」」

俺達は今、一体何を見せられているんだろうか? 唐突に繰り広げられる親子間の口喧嘩、最初こそ威厳ある様子で話していたレイガンド王の口調は崩れ、敵対するパウルも猛烈な勢いでヒートアップし続けている。が、肝心の口論内容は実にお粗末なもので、第三者でしかない俺達にはマジでどうでも良い話ばかりだ。この二人、単に不器用なだけなのでは……?

「バーカバーカ!」

「ボーケボーケ!」

うん、最早内容すらなくなっている。これ、誰か止めないと終わらなくない? レイガンド王の右サイドにいる大臣っぽい人、左サイドの騎士団長っぽい人、早く仕事をしてくれ。おい、何で明後日の方向に顔を逸らしているんだ? お願いだから仕事して……!

『あなた様、空腹で私のお腹が盛大に鳴りそうです。あと、私を呼ぶレイガンドの名産達の声が聞こえるのです。二人を物理的に止めて、さっさと出発しても良いでしょうか?』

『また変な能力に目覚め始めたな、お前…… 物騒な止め方は許可できないっての。これだけ叫び合っていれば腹の音なんて聞こえないし、存分に鳴らしてしまえ。そっちは許可するから』

『あ、あなた様! 私だって乙女なんですよ! ぷんすか!』

普通の乙女は食欲の為に、そんな無理を通さないと思うのだが。

『クッ! 静まれ、私のお腹! エフィル不在のこんな場所で、食欲を解放する訳にはいかないのです! 空腹よ、静、め……! ぐうっ……! もう、駄目そう、です……!』

微妙に中二チックな台詞で空腹を訴えないでほしい。けど、マジでそろそろ限界っぽいか。やっぱり、俺が穏便に止めるしか―――

「―――父上に兄上、久方振りの会話が弾むのも結構だが、そろそろ落ち着いた方が良いのではないか? ケルヴィン殿が驚いているぞ?」

っと、念話をやっている間に、エドガーが二人を止めてくれていた。エドさん、マジでナイス!

「む、確かにそうであるな…… エドガー、止めてくれた事に礼を言う。そしてすまなかったな、ケルヴィン殿。もう知っていると思うが、そこの冒険者は王族の出自なのだ」

「ああ、それについては俺から話してあるよ。てか、俺もついムキになっちまった。マスター、迷惑をかけてすまねぇ」

「謝るならメルに言ってやってくれ。そろそろ空腹で限界そうだからさ」

「ガルルルルゥ!」

「わ、機嫌が悪い時のセラ姐さんみたいになってる…… 主、これはメル姐さん、本当に限界が近い。つまるところ、とっても危険」

ムドがそう警告するほどに、メルの本能(食)が解放される間際のところにまで至っている。このまま爆発したら、堕天使以上に厄介な事になってしまうぞ。具体的には、レイガンドの食糧が尽きる。

「ご主人様、いつの間にか、携帯していた食料が空になっています。恐らく、メル様が道中に……」

「メルさん!?」

「ガ、ガルルルゥ!」

今、微かに声に動揺の色が見えた。こんな状態でも盗み食いをした事に対しての罪悪感は働いているらしい。

「何だ、空腹なのか? ふむ、あれだけ激しい戦いをし、エドガーを捜す為に大陸中を休む事なく駆け回ったとなれば、それも当然か…… 大臣、至急食事の用意をするのだ。レイガンドを救ってくれた英雄をもてなす為に、豪勢にな」

「ハッ、承知致しました」

「えっ、良いんですか、レイガンド王?」

「良いも何も、英雄が腹を空かせているというのに、何もしない王はいまい。このまま長話をするのも何であるし、食卓を囲みながらの方が話もしやすいであろう」

いや、俺が言いたいのは食費的な意味でなんだけど…… でもまあ、ここで断る方が失礼に当たるよな! レイガンド王の言葉に甘えさせてもらおう!

「はい、私は甘味多め、むしろそれだけの方が喜ばしい。デザートだけ運んで来て」

「あの、厨房を見学させて頂きてもよろしいでしょうか? 使用人として、とても興味がありまして。ええ、はい、できれば技を盗みたく……」

「ガルガル、ガルルルゥ!(おかわり自由無制限希望!)」

待て待て、それは甘え過ぎ。

『フッ、私の作戦が上手くいったようですね。これであなた様の懐事情を気にする事なく、思う存分に食を楽しむ事ができるというものです』

『急に冷静になるなよ、お前……』

そして、多分これは作戦でも何でもない。本能に従い空腹に負けて、その上でたまたま上手く事が運んだだけだろう。昔だったらいざ知らず、今のメルはそんな感じなのだ。