軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第60話 犬を拾う戦闘狂

リオン達がルミエストへ入学してから数日が経過した。向こうで元気でやっているか、環境の変化に戸惑っていないか、年頃の友人達と上手く付き合っているか、近付く男子生徒共にしっかりと止めを刺しているだろうかと、俺の悩みは日々尽きない。そんな悩みを振り払うように、俺はスズ達に武術や魔法の専門指導を行い、以前シンジールらと出会ったS級ダンジョン『死神の食卓』にて実戦経験を積ませる事に没頭している。が、心の中のもやっとした感情はどうにも消え去らず、今に至っている。

クッ、目の前のあいつらは順調に美味しく育っているってのに、心の底からは楽しめていない俺がいる! 妹ロスに娘ロス、ここに極まる! と、そんな困窮していた俺のところに、とある念話が飛んで来たんだ。それは正に、今俺が最も求めている者達の声だった。そう、リオンとクロメルからである! なるほど、考える事は妹娘達も同じだったのか!

『―――っていう事があってさ、神柱の中身がなくなっていたんだ。でもベルちゃんや生徒会長さんが手を回してくれて、学園側が秘密裏に協力してくれるって! 孤児院出身のグラハム君も、シスター・エレンにそれとなく調査をお願いされていたみたいで、神柱について色々と教えてくれたんだ』

『待ち合わせが夜遅くの時間だったので、その時に私は寝てしまっていました。不覚、です……』

『あはは。それを予想して、ベルちゃんはクロメルには声を掛けていなかったみたい。何だかんだ言って、気を回してくれたんだね』

『そ、そんなに子供ではないので、次は頑張って起きてますから! 絶対次は私も参加します!』

『その意気その意気。って、ケルにい? ちゃんと聞いてる?』

『あ、ああ……』

何と言う事だ。寂しいとかそういう理由で連絡を寄こした訳ではなく、単に俺の要望にあった神柱についての報告だったようだ。でも、二人の声を聞けたから俺は満足です!

と、そんな義父さんムーブもここまで。神柱の中身がない、またその原因を作った奴がいるってのも、リオン達の学園生活に関わる重要な出来事だ。何かしらの対策は必須で、ベルが率先して動いてくれたのは流石といえる。

『神柱を確認してから何日か経ったみたいだけど、それから変わった事はなかったのか?』

『うーん、僕視点では特になかったかな? 学校の講義は予定通り開かれているし、同級生や先輩達もいつも通り、不審者っぽい人も見当たらない。クロメルはどう?』

『私も同じ感想です。中身がなくなってもモニュメントとしての神柱は存在していますし、騒ぎが起こるような事もないですね。ベルさんも空になった神柱以外からは、学園内に似たような気配はないと断言されていまして、その……』

『今のところ具体的に打つ手はなし、か。となると、もう学園の外に出たと考えるべきなんだろうが…… あ、そうだ。ルミエストの神柱って、中身はどんな奴なんだ? ほら、他の神柱はモチーフになる何かがあっただろ? 狼とかドラゴンとか。そのなくなった中身がどんな外見なのかが分かれば、俺達がやる学園外での調査が捗るんだが。トラージから推薦を受けたグラハム君だっけ? そいつは前々神エレアリス、シスター・エレンから指示を受けているんだから、それくらい教えられているんだろ?』

『『ええっと、それがー……』』

揃って口ごもる二人。何だどうした?

『神柱を作ったエレンさんも、ルミエストの神柱が作動した時の姿がどんなものなのか、把握されていないようなんです、パパ』

『えっ、そうなのか?』

『うん、実はそうみたい。これはグラハム君から聞いた話なんだけど、世界各地に作られた神柱って、最初は種みたいにその場所に植えられていたんだって。それから長い年月をかけて成長させて、その土地に適した形態に中身を進化させていったみたい』

『へ~。だからガウンは獣っぽくて、まだ実際に目にしてはいないけど、トラージは鯨って訳か』

『です~』

『それでね、ルミエスト以外の土地にある神柱は、これまでに最低でも一度は神柱としての力を作動させて、中身の亜神が戦った事があるみたいなんだけど……』

『けど?』

『唯一ルミエストの神柱だけは、創造後にその力を行使させた事がないそうなんです。なのでかつての神様だったエレンさんも、ルミエストの神柱が現在どんな姿に進化したのか、さっぱりさんのようでして…… 恐らく、ママも同じ見解だと思います』

『あー、なるほどな』

エレアリス時代のシスター・エレンが神柱を設置したは良いが、ルミエスト周辺では魔王騒ぎが今まで起きた事がなかったのか。だからこそ平和な大地として各国が重要視して、上流階級が集う学園都市が生まれたのかもしれないが……

『メル、今の情報で何か指摘するような点はあるか?』

『もぎゅもぎゅもぎゅもぎゅ!』

……なるほど、大方その通りってか。どうやら、グラハム君とやらの情報に間違いはないようだ。

『あ、あの、今しがた大きな咀嚼音がしたような?』

『ああ、今こっちはちょうど昼食をとってるところなんだ。メルの奴、口一杯に飯を詰め込んでいてさ。それで念話にまで咀嚼音がだだ漏れになったみたいだ。仕方がないから、俺がその咀嚼音から通訳した』

『ケルにい、遂にそんな技能まで身につけてしまったんだね……』

『す、凄い技能です……!』

しっかし、調査をするにしても全くのノーヒントは辛い。六体倒して相当強くなっていると思うし、手っ取り早くルミエスト周辺で強いモンスターを探した方が早いか? スズ達を連れて野外訓練がてら西大陸を巡っていけば、調査とデスマーチで一石二鳥な感じに――― よし、是非ともそうしよう。

『オーケー、現状は理解した。ルミエスト学外の調査は任せてくれ。元使徒のギルド総長や顔見知り連中にも、それとなく注意喚起しておくよ』

『ありがとう、ケルにい!』

『流石パパです。頼りになるです』

『何、当然の事をするまでさ。ところで二人とも、学園生活はどんな感じ―――』

『―――あっ、そろそろ次の講義が始まっちゃう! それじゃケルにい、また連絡するね! ばいば~い!』

『パパ、私も失礼しますね。ママに食事はよく噛んで飲み込むようにと、そうお伝えください。では』

本題に入ろうとしたところ、タイミング悪く念話が切れてしまった。クッ、神柱もそうだけど、学園生活も気になっていたのに……!

「マスター・ケルヴィン、凄い勢いで表情が変わって最終的には気落ちしているようだけど、大丈夫かい?」

「へえ、マスター・ケルヴィンもんな顔をするんだな」

「ううーむ! 珍しいものを見せてもらったぁ!」

「マスター・ケルヴィン、体調が思わしくないのですか!? お、お医者様をお呼びするべきでしょうか、マスター!?」

……ちなみに、ここは現在の活動拠点である金雀の宿、その大広間だ。スズ達をぶっ倒れるまで動かした後、十分な栄養を与える為にここの美味い飯を食わせているところなんだが、なぜなのか全員からマスター呼びをされるようになってしまった。恐らく、いや、絶対にこうなった原因はスズだろう。ぶっちゃけ止めてほしいんだが、もう手遅れ感があるんだよなぁ。

「ケルヴィン君ケルヴィン君」

「ん? どうした、アンジェ?」

料理を口に詰め込みまくるメルの隣より、アンジェがひょいっと顔を出す。

「パブ三大冒険者の各リーダーだけじゃなくてさ、そのパーティの人達もここにいる気がするんだけど…… 私の目の錯覚かな? 予定よりも滅茶苦茶大所帯になってない?」

「「「「「ガヤガヤ」」」」」

「い、いや、どうせ育てるなら、そのパーティごと鍛え上げる方がやっぱりバランス良いかなと思って……」

「ジー」

「ちゃ、ちゃんと世話して強くするから!」

「ハァ、捨て犬を拾ってくるノリで何増やしてるのさ~……」

パウルズパーティ総勢六名、オッドラッズパーティ総勢二名、シンジーズパーティ総勢二名、新たに参入。