軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第45話 原石磨き

来たる対抗戦に向けて、候補者達の楽しい楽しいトレーニングが開始される。

「ゴルディアの神髄を会得したいの? フフン、仕方ないわね。ゴルディアーナの親友であるこの私が、直に教えてあげるわ!」

自信満々鼻高々にそう告げるセラ。まずはオッドラッドであるが、基礎能力は俺が鍛え上げるとして、その他に彼にはゴルディアを基礎から応用、果ては奥義までをも 特別教官(セラ) に叩き込んでもらう事にした。目指す理想像はゴルディアーナとブルジョワ―ナ――― なのだが、あの風変わりな気質まで取り込まないよう、細心の注意を払うつもりだ。まあ、そんな事を心配する必要は皆無だとは思うが。 ……大丈夫、だよね? 漢であっても、 漢女(おとめ) になったりはしないよね?

「おう、よろしく頼むぜ! ……とは言ってみたけどよ、そんな気軽く教えちまっても良いのかよ!? 免許皆伝とはいえ、流派の奥義なんだろ!? 俺ぁ憧れてるっつっても、部外者には違いねぇんだぜ!?」

「別に大丈夫でしょ。丁寧に教えたら絶対に会得できるってものじゃないし。むしろこれでゴルディアをマスターしたら、ゴルディアーナなら喜ぶと思うわよ? 親友として、そこは保証してあげる!」

「なるほどなぁ! なら安心だぜ! 早速頼むわぁ!」

「やる気があって良いわね。じゃ、まず基本となる赤のオーラからなんだけど、こうお腹にぐおーんって力を入れて、でも全身はふわーんって感じになるの」

「すまーん! もう一度頼ーむ!」

「だから、ぐおーんふわーんよ!」

「すまーん! 分からぁーん!」

おっと、早速問題発生か。天才肌で感覚型なセラは、人にものを教えるのが信じられないほどに下手だ。長い間一緒にいる俺でさえ、漸く言っている意味が分かりかけている程度だからな。しかしだ、この問題が発生するのは予想済み、というか予想していなきゃおかしいってもんだろう。当然、対策も立てている。

「セラお姉ちゃんの説明を翻訳するね。ゴルディアは気を体中に巡らせて、身体能力を向上させる事ができるの。セラお姉ちゃんはお腹からスタートさせて、それを体中に巡らせていくイメージみたい。で、肝心の気をどうやって発生させるかなんだけど―――」

本日は解説者のシュトラさんに来て頂いているので、セラの難解で独創的な説明も分かりやすく翻訳できるのだ。

「お、おお……!? お、おい、ケルヴィン!? 言ってる事は凄くそれっぽいんだが、この小娘の言っている事は本当に合ってるのか!?」

ただ、オッドラッドとしては半信半疑であるらしい。まあ、いくら俺の紹介とはいえ、今日会ったばかりの小さな少女に言われても、正直判断に困るよな。

「安心しろって。シュトラは言葉の意図を探る達人なんだ。ぶっちゃけ、俺が翻訳するより正確だと思うぞ」

「マジか!?」

「そう、安心して私に従ってね。私が貴方を立派に導いてあげるから」

「ちょっと、教えてるのは私なんだけど!?」

シュトラもやる気のようだし、オッドラッドは大丈夫そうかな。じゃ、次。

シンジールは現在リオンと模擬戦中だ。リオンがルミエストの次期生徒であり、対抗戦の最有力候補である事は既に皆に伝えている。そして実際問題どの程度強いのかを体験してもらう為、一度全員と模擬戦を組もうとしたのだが…… 一組目のシンジールがここで躓く。異性には攻撃できないなどと抜かし始めたのだ。

「レ、レディ・リオンを攻撃する事なんて、私にはできない……!」

「フッ!」

「げうっ!」

相手が何と言おうとも、対人戦におけるリオンは加減はするが容赦がない。今もシンジールの腹部に膝蹴りを食らわせ、彼を地面にのたうち回らせている。

「シンジール、対抗戦の相手が女生徒だったらどうするんだ? ただでさえ出場枠の五枠中、三枠はリオンを含めて女生徒が出て来る可能性が高いんだぞ?」

「し、しかしッ……!」

「シンちゃん、その態度は相手にとっても失礼だよ? シンちゃんは区別しているつもりかもだけど、相手にとっては侮辱以外の何物でもないもん。無抵抗の相手をいたぶらせて、シンちゃんは楽しいの?」

「そういう問題ではっ……!」

「ううん、今の僕にとってはそういう問題。そんな事じゃいざとなった時、大切な人も護れないよ?」

「―――っ!」

と、このように本当に容赦がない。シンジールの男としてのプライド、倫理観等々を揺さぶり、闘争心を呼び起こしている。リオンは入学までの少しの間しかいないけど、この調子なら短期間でシンジールの弱点を克服させてくれるだろう。ほい、次。

「初めまして、クロメルです。パパがいつもお世話なってます」

ペコリと礼儀正しく挨拶するクロメル。信じられないほどに可愛い。対してパウル君は不服そうだ。

「……おい、ケルヴィン。これは何の冗談だ? 俺の相手、オッドラッドの野郎に付いてる子供や、シンジールと戦ってる子供より小さいじゃねぇか。しかもパパって」

「俺の愛娘だ。妹より小さいのは当たり前だろ。だがそれでも、お前よりかは強い。パウル君には色々なタイプの格上と戦ってもらおうと思ってさ。この経験を通して、自分の目指す姿を見定めてもらいたい」

「言いたい事は分かるけどよ、いくら何でもこんなちんちくりんと模擬戦をやれだなんて、俺を舐めてんのか? どっからどう見ても、育ちの良いただのガキだ」

「なるほど、尤もな意見だな。けど、そういうところだぞ?」

「あ? 何がだ?」

「S級の敵を相手するには、パウル君の思考は常識に囚われ過ぎてるって事。この戦いはそういう常識を打ち壊す為のものでもあるんだよ。今回は最初だから、パウル君とそう実力の離れていないクロメルを選出したんだ。うちの娘にとっても、ちょうど良い練習相手になるだろうし――― あ、でも娘に怪我をさせたら承知しないから。マジで怒るから、その辺もよろしく」

「もう、パパったら過保護ですよ。そんな事を言ったら、パウルさんが何もできなくなってしまいます!」

「ハハッ、ごめんごめん。パパは心配性でさ~。もしもの事があっても、パパが治してあげるからな~」

「………」

相変わらず煮えきらない様子のパウル君であるが、模擬戦が始まった途端にその表情は一変した。どうやら一瞬でクロメルの実力を理解したらしい。流石は超一流の冒険者ってところだろうか。でも怪我をさせたら、遠慮なく殴らせてもらう。よし、ラスト。

「ケ、ケルヴィン様、他の方々とのお喋りも良いのですが、その…… 私との戦いに集中してくださると、ですね…… も、もっと私を見てほしいです!」

「そんなに見てほしかったら、もう少し俺にやる気を出させてくれ。それとも、もう限界か? 案外底が浅かったな。ちょっとガッカリかも」

「ま、まだまだです! もっと色々できますから! 見ていてください!」

現在候補者中実力ナンバー1としているスズの相手は、俺自身が行っている。まずはスズが会得しているあの不思議な技、その全て把握させてもらう。拳法と忍術の良いとこ取りをしているだけあって、現時点でも完成度は恐ろしく高い。だとしても、先に進む事のできる扉は無数にあるだろう。さあ、俺にもっと見せると良い。フフフフ。さあ鍛えるぞ鍛えるぞ! 原石磨き、ピッカピカ!

「ケルヴィンったら何だか顔がやましいわ! 不潔よ!」

「セラ、周りが勘違いするような台詞を言わないでくれる!?」

「ケ、ケルヴィン様、そんなやましい気持ちで私を見てくださって……! でも私、まだ気持ちの整理が……!」

「違ーう!」

とまあ、こんな感じで各々の弱点を潰し長所を伸ばし、例のS級ダンジョンにスズ達を放り投げてはの日々を送るのであった。そして気が付けば、リオン達のルミエスト入学日が間近となっていた。