軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第43話 実力調査

候補者達の紹介が全員分終わったところで、俺達は例のエレベーターを使って、ギルド本部の地下へとやって来ていた。シン総長の話を聞くに、ここには高位の冒険者用に備え付けた模擬戦場があるらしい。言ってしまば、俺の屋敷にある地下鍛錬場のような場所だ。シン総長の戦闘力を基準に設計しているだけあって、それなりに暴れたとしても大丈夫なくらいに頑丈な作りとなっている。そしてそして、この場所もエレベーター同様、シン総長がこっそりと作った場所なんだそうで。この総長、勝手に本部を魔改造し過ぎである。

「で、何で俺らはこんなところに連れて来られたんだ?」

「パウル君、良い質問だ。流石は有望株だな」

「パ、パウル君……!?」

今この模擬戦場にいるのは俺にリオン(+影の中のアレックス)と総長、そして対抗戦候補者の四名だけだ。広大な空間がガラリとしていて、一層広く感じられる。つか、マジで広いなここ。こっそり作ったって規模じゃない。

「ルミエストとの対抗戦に出られるレベルになるまで、これから君らを俺が鍛えていく手筈になっている。その事は聞いてるよな?」

「まあ、大雑把にはな。けどよ、その内容に対しては半信半疑に思ってる。ルミエストとの対抗戦ってのは、毎年やってるアレの事だろ? いつもなら俺らが出るまでもなく、お行儀の良い中堅の奴らが担当していたんだ。それが何で急に俺らにお鉢が回って来て、その上鍛えなきゃならねぇんだよ?」

「そうだそうだぁ! 冒険者にもなっていない、世間知らずの青坊主共が相手なんだろ!? 今のままでも、というよりも! この面子が集まった時点で過剰な戦力だろ! 俺にパウル、それにシンジールで確定三勝! そこのスズという娘が話通りの強さなら、確定四勝だぁ!」

「あー、マジで大雑把にしか説明されてないのな、お前ら……」

俺が疑いの視線を送ると、シン総長は自信満々に頷き始めた。ああ、はい。詳しくはこの場で証明しろって事ですか。

「ケルヴィンさんの指導を受けられるのなら、私は特にその辺は気にしないけれどね。S級に至るほどの実力を得る為なら、今回の件はまたとない件だとは思わないかい?」

「ま、まあ、それはそうだけどよ……」

「わ、私はケルヴィン様にご指導ご鞭撻頂けるのであれば、何でも、何でもする所存です! 少しでもケルヴィン様の強さに近づきたいので……!」

説明をせずとも、シンジールとスズは最初から乗り気のようだ。パウル君もこの間の一件が効いているのか、あと一歩で了承しそうである。で、残るは―――

「待て待て待てぇい! 俺はまだ納得しておらんぞ! 鼻に付く貴族共とはいえ、相手は一般生徒だ! 俺は弱いもの虐めをするつもりはなぁい! そもそもだ、俺はそこのケルヴィンとやらの実力も訝しんでいる!」

―――オッドラッドか。彼の主張は尤もなものだ。だからこそ、疑問に思っている今年のルミエストのやばさ、不審に思っている俺の実力を実感してもらう必要がある。具体的には指導役の俺、そして生徒役のリオンと腕試しをすれば良いのだ。そう、これは所謂味見、じゃなかった。正当な説得なのである!

「まあ、そうなるわな。じゃ、その両方の疑問不審を解決していこう。オッドラッド、今から俺とこのリオンと―――」

「―――ま、待ってください!」

唐突に声を発し、ピンと真っ直ぐな挙手をしたのはスズだった。何だ何だ、もしやスズもバトりたいのか? 仕方ないなぁ、本当に仕方のない奴らだ。フフフッ。

「どうした、スズ?」

「え、えと、実力が分からないという点では、私もその中に入ると思うんです。オッドラッドさんの先ほどのお話でも、私の力が噂通りならという事でしたし……」

「んんっ、俺かぁ!? ああ、そういえばそう言ったな! それがどうした!?」

「それなら今から、私とオッドラッドさんで腕試しをしませんか? 丁度ここは戦えそうな場所ですし、まだ実力をお見せしていない私とオッドラッドさんの戦いを、ケルヴィン様に知って頂けます。そしてもし私が勝った場合は、どうかケルヴィン様を認めては頂けないでしょうか? 私程度、ケルヴィン様の足元にも及ばないのは明白ですので」

「えっ」

突然の申し出に、俺の並列思考が思わず止まってしまう。

「……ほう、言うじゃねぇか! ちっこい 形(なり) して、良い度胸をしている! 良いぜ、気に入ったぁ! もしお前が勝ったら、お前とケルヴィンの力を心の底から認めてやる!」

「あ、ありがとうございます。約束してくださいね?」

「ったりめぇだぁ! この筋肉に誓って、漢に二言はねぇ! だがよ、このお嬢ちゃんを倒したら、次はケルヴィン、お前の番だ! 足を洗って覚悟しておくんだなぁ!」

「オッドラッド君、それを言うなら首を洗ってだよ」

「そうだったかぁ! 実に惜しいぃ!」

「ま、総長の私としてはそれで文句はないかな。とはいえ、彼らの指導役はケルヴィン君だ。決定権は君にあるけど、どうする?」

「ケルヴィン様、私、頑張りますっ! どうか、どうかっ!」

「い、良いんじゃないッスかねぇ。俺もそう提案しようと思っていたんです、はい……」

周りの空気とスズの純粋な気持ちに押され、今更俺が戦いたいとは言えなくなってしまった。言えなくなってしまった……!

「ケルにい、ガンバだよ!」

「ウン、オ兄チャン頑張ル。ああ、頑張るぞ……!」

献身的なリオンの応援のお蔭で、何とか立て直しが完了。オーケーオーケー、俺は最終的に一番美味しく実ったところを頂ければ、何も問題ないのです。だから今は、ただただ我慢……!

それから俺は模擬戦の簡単なルールを説明して、スズとオッドラッドを開始線に立たせた。欠損程度であれば俺が回復させられるとはいえ、昇格式のような殺し合いルールは万が一って事がある。ここは我が家の模擬戦ルールに則り、殺傷能力のない得物を使い、先に相手を戦闘不能にした方の勝ちとする事に。もちろん、それ以外の場合で俺やシン総長が危ないと判断した場合、各自の判断で止めに入る仕様だ。

「二人とも、武器は何を使うんだ?」

「武器なんて女々しいもんは使わねぇ! 漢らしく、この肉体一本で勝負だぁ!」

「私も徒手空拳で大丈夫です。これが一番身軽なので」

「そ、そうか……」

俺は分身体クロトの中から頭まで取り出していた非殺傷武器を、静かに元の場所へと戻すのであった。

「審判役は説明した通り、俺とシン総長が担当する。攻撃の余波とかは気にしないでくれ。こっちで勝手に避けるから」

「ケルにい、僕は邪魔にならないように、あっちの席の方に行ってるね」

「じゃ、君達も向こうの観戦席に移動しようか。さ、パウル君、シンジール君、駆け足駆け足だ!」

「うおっ!? せ、背中を小突くんじゃねぇ! 走る、走るっての!」

「レディに急かされるのも、別に私は嫌いじゃないんだけどね。でも、ここは素直に走らせてもらうとするよ。レディ・スズ、あまり無茶はしないように。オッドラッドは見ての通り、あまり器用な奴じゃないからね」

「おう、シンジールの癖に良い事を言うじゃねぇか! 俺は手加減が下手だからなぁ! 無理だと思ったら、意地を張らずにギブアップする事だぁ! その代わり、俺も無理だと思ったら素直にギブアップしてやる! じゃねぇとフェアじゃないからなぁ! 譲り合いの精神だぁ!」

「お気遣い、ありがとうございます。私もケルヴィン様の前で無様な戦いをしないよう、全力を尽くしたいと思います!」

という訳で、模擬戦の準備はこれで完了。双方、やる気も十分だ。正直なところ、スズが勝ちそうかなと大分思ってしまっているが、これは良い試合が期待できそうか? よし、見に徹するからには、お前らの実力を目に焼き付けてやろうじゃないか。

「試合――― 始めっ!」