軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第565話 報告会

―――ケルヴィン邸・リビングルーム

「皆、集まったか?」

「全員集合済みだよ、ケルにい!」

数日後、デラミスより帰還した俺達は屋敷にいた。リビングには各国より舞い戻った仲間達も集っている。え、暫くは集まれないという話は何だったのか、だって? いやまあ、あれは早くクロメルの存在を認めさせたかった口実というか、リオや舞桜を弔ってやりたい気持ちは本当だったし、転移門があるから移動する分には一瞬――― 兎も角、集ったのである。

「それではこれから、報告会を始めたいと思う。まずはデラミスを担当していた俺とメルから」

この会はクロメルの存在を認めるか否か、各国各組織の主達と秘密裏に交渉を行った成果を報告するものだ。俺とメルの成果は数日前の通りである。

「神皇国デラミスはナンバー2であるコレット・デラミリウスをはじめとし、枢機卿のサイ・ディル、デラミス公認勇者の4名、更にはセルジュ・フロアを篭絡する事ができました。唯一教皇のフィリップ・デラミリウスだけは慎重な姿勢を保っていましたが、外堀は完璧に埋めましたので、彼が首を縦に振るのも時間の問題でしょう」

「特にコレットの気合いの入れようは凄かったぞ。デラミスに関しては、まず安心してくれていい」

「皆様、ご安心くださいませ! このコレット、命に替えてでもやり遂げる所存です!」

「……王よ、コレットが隣にいるようじゃが、ワシの気のせいじゃろうか?」

気のせいではない。単にデラミスを飛び出して、この報告会に参加するほど士気が高いだけなのだ。これが終わったら、転移門で直ぐに帰って行くらしい。

「では、次は水国トラージ担当のワシが。トラージ王との謁見を賜ったんじゃが、拍子抜けするほど簡単に承諾してくれたわい。事情を話して同行してくれた、シルヴィアとエマの存在が大きかったんじゃろうなぁ。あちらさん、終始ご機嫌な様子じゃった。あ、これお土産ね」

「まあ、立派なお野菜ですね! 本日のお夕食に使わせて頂きましょう」

メルの事を意識してくれたのか、ツバキ様はジェラールに山盛りの野菜を渡していた。エフィルを筆頭にメイド達が頑張って運び出している。そういえば、シルヴィア達が暫くはトラージの世話になるって話をしていたっけ。そりゃ人材マニアのツバキ様なら機嫌も良くなるよな。俺達が今まで積み重ねてきたやり取りも活きているんだろうが、何よりもタイミングが良かったみたいだ。協力してくれたシルヴィアとエマに、後でちゃんとお礼をしなければ。

「ふう、運搬完了です」

「お疲れ様、エフィルねえ。このまま僕らの報告をしちゃおっか?」

「承知致しました。リオン様と私は獣国ガウン及びエルフの里担当です。結論から申しますと、獣王様とネルラス長老はクロメル様を認めてくださいました」

「最初こそ獣王様は反対だったんだけど、エフィルねえの話を聞いて応援に来てくれたネルラス長老、それにサバトさんやゴマちゃん、他の王子様達も一緒に説得してくれたんだ。キルトさんなんて殆ど面識がない筈なのに、サバトさん達と同じくらい熱心に支持してくれてさ」

「最後には父を恐れず、そこまで言えるようになったか。と、感銘を受けられていたようでした」

「へえ、あのレオンハルトが」

俺や義父さんと真逆の教育方針をいく、レオンハルトの心中を察する事は難しい。無理矢理に推測する事しかできないけど、サバト達の行動に何か心打たれるものがあったんだろうな。まあ、あの獣王の事だから、その何かを狙って認めるのを渋っていた、なんて可能性も無きにしも非ずなんだが。

あと、これまで行動を共にする機会の多かったサバトらはもちろんの事、我が心の盟友キルトにも深く感謝をしたい。最愛の妹ゴマに良いところを見せたいとか、リオンの可愛さに恐ろしき父に反抗するほど心燃え上がるものを感じたとか、こちらは色々と推測できる。なぜか容易にできる。だがそれら要因を差し置いても、キルトの心意気は素晴らしいものだ。今度是非とも、アズグラッドと共に酒を酌み交わしたい。

「シュトラと竜ズのトライセン組はどうだった?」

「言わずもがな、だったよ。えへん!」

「アズグラッドの野郎が全幅の信頼を寄せるシュトラがそう言えば、まあそれで良いんじゃねぇの? って感じの返答しか帰ってこねぇッスよ」

「おでら、出番なかった……」

「私は最初からない事を確信していた。とても楽な仕事」

「あ、でもでも、アズグラッドお兄様からケルヴィンお兄ちゃんに、後でトライセンに来るようにって伝言があったよ? 個人的にお話がしたいみたい」

「アズグラッドが?」

ほう、それはあれか? 早速同志キルトも連れて行くべき案件か? アズグラッドめ、空気を読めているじゃないか。

「じゃ、次は私ね! グレルバレルカ帝国は―――」

「―――二つ返事でオッケーだったんだろ?」

「ええっ!? な、何で分かったのよ、ケルヴィン!? もしてかして、新たに予知能力でも習得したの!?」

「どっちかと言えば、それはセラ寄りの力だろ」

俺の言葉に酷く驚いている様子のセラであるが、ここに関しては予想もクソもない。ベルを同行させるまでもなく、セラの言いなりになってしまう義父さんの姿が目に浮かぶのだ。そう、今の俺のように。

「む~、アッと驚かせたかったのにぃ~」

「セラさんは凄いですよ。私、パパとママと同じくらい尊敬しています」

「あら、なかなか見所のある発言ね! ケルヴィンにメル、クロメルったら将来大物になりそうよ!」

クロメルに慰められたセラはすっかりと機嫌を直し、縁起の良い予言をしてくれた。うん、そういう発言はドンドン言ってくれ。頼もしいセラの口から言われると、大抵の事は実現されそうだもの。

「それと、私も父上から伝言を預かってるのよ」

「今度は義父さんからか?」

「その孫の顔を見たくもあるけど、一番見たいのは直系の血族だって」

「が、頑張ります……」

義父さん、とんでもない爆弾発言を……! 一瞬、和やかなこの空間がピリッとした!

「最後の報告はアンジェお姉さんからっ! 遠い遠い西大陸の冒険者ギルド本部にまで行って来たんだけど、流石のアンジェさんもお疲れです」

「いやはや、本当にお疲れ様だよ。確かギルドの本部って、西大陸の最西端なんだろ?」

「そうそう。でも安心して、遠くまで行った甲斐はあったからさ」

ビシリと親指を立てるアンジェ。そんな事をしなくても、アンジェの笑顔を見れば交渉が首尾よくまとまったんだと分かるってもんだ。

「いやー、ギルドの総長と面会する事はできたんだけどね、結論から言うと――― 駄目でした。てへっ」

「その笑顔と仕草で駄目だったの!?」

「ケルヴィン君、ナイスツッコミ! でも、お姉さんの話は最後まで聞いてほしいかな。総長はこう言ったんだ。ギルドの長として、クロメルちゃんが黒幕だったクロメルと同一である事は看過できない。本来であれば、悪しき可能性として潰さなければならない案件だ。けれど、だからと言ってデラミスやギルド公認のS級冒険者と敵対したい訳でもない。人の上に立つ者は、世の中の道理や流れを見抜くものだ。それが先覚者の務めなのさ。よって私はこの話を聞いてないし、知る機会もなかった! 『死神』ケルヴィンと『微笑』のメルに子供ができた? わお、めでたいじゃない。お祝い金は出さないけど、心からお祝い申し上げるね! へー、クロメルって名前にしたんだ。敵と同じ名前をつけるなんて、なかなかパンクじゃないの! ……ってさ」

「な、なるほどな。声真似までしてくれて、ありがとう」

アンジェの見事な演技に少し呆けてしまったが、詰まるところ遠回しに認めてくれるって事か。まあ、見て見ぬフリとも呼べるけど。ギルド総長、会った事はないけど良い意味でも悪い意味でも大人である。

「って事でだ、クロメルの事を知っているであろうところから、口約束ではあるが大よその承認を得る事ができた。ややこしい外交とかは、これからもシュトラやコレットに頼る事になると思うが……」

「お任せください。私とシュトラちゃんは無敵ですから。ねー!」

「ねー!」

ああ、たぶん真っ当な交渉事で勝てる奴はいないだろうなぁ。よし、何はともあれ―――

「―――クロメル、これからもよろしくな!」

「はい、パパ!」

皆が皆、諸手を挙げてクロメルを祝福した。