軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第388話 復活のグレルバレルカ

―――月の館・ベルの私室

セラとベルが和解し、生還者のおじさんが逮捕されて3日が経った。ん、少し語弊があるって? 実際義父さんの傀儡状態で魔王城の牢に入っているのだから、別にそんな事はないと思うんだけどな。まあ、些細な違いである。

この3日間でグレルバレルカは大きく動き出した。これまでは王であるグスタフと国の核たる幹部達の不在が祟り、グレルバレルカ帝国は縮小の一途を辿っていた。だがエストリアの蘇生術によって彼らは復活を果たし、再びこの国に忠誠を誓ったのだ。国の民らはまだ戻る様子は見られないが、息を吹き返すのも時間の問題だろう。

まず、怪しげな関西弁を操る悪魔四天王の1人、リオンに速攻で倒されたラインハルトが行動に移った。大蛇のような容姿をした彼は隣国であるドクトリア王国の先代国王であり、現国王のガリアとも面識がある。面識があるどころか、魔王軍だった頃の元上司だからな。というか、死別した筈の相手が突然現れれば当然こうなる。

「爺、先代のラインハルト様が目の前にいるように見えるのだが。いかんな、働き過ぎたか」

「ふふ、ガリア様。どうやらこのじいや、お迎えの時が来たようです。志半ばで倒れる事を、どうかお許しください……」

「死人ちゃうわ!」

そんな感じで説明するのに結構な時間を要したらしいが、今では協力体制を築けるまでに至っている。将来的にはグレルバレルカに吸収されるとか言っていたな。そんな簡単に進めてしまっていいのかと俺は疑問なんだけど、セラやベルは普通に受け入れてしまっていた。悪魔的にはこれが普通なのか?

一方で義父さんも大忙しだ。 奈落の地(アビスランド) 全土に散ってしまった魔王時代の仲間達に知らせを出し、城や街々の改修を進めるなどすべき事柄が大量にあるらしい。いくらベルが外敵から護っていたとしても、流石に整備までは何年もされていなかったからな。人手も限られているし、そりゃ忙しい筈だ。義父さん自身は国の為に汗を流す父の姿を愛娘に見せれて幸せそうだが…… ま、ドクトリア王国から応援が来れば多少なりは解決されるだろう。こんな時に建築や諸々に特化したダハクがいないのが悔やまれる。

「そういやセバスデルは? あれでもお前の専属執事だろ?」

「セバスは積もり積もった罪を償う為に謹慎中よ。山みたいな事務仕事に追われながら魔王城の独房にいるんじゃない? ま、あれで優秀だから直ぐに片付けてくれるでしょ」

「うんうん、適材適所とはこの事ね!」

「セラ姉様、それは違――― いえ、合ってるのか」

俺とセラはというと、月の館にて静養中のベルのお見舞いに来ていた。不完全だった魔王化とはいえ、やはりその負荷は相当のものだったらしく、未だ完全回復とまではなっていない。しかしながら以前のような尖った雰囲気はなく、自然に会話できるまで仲は良くなったと思う。あと、度重なる義父さんのお願いに諦めたのか、人前でもパパ呼びで通すようになった。真っ赤になる恥ずかしさを乗り越え、今は悟りの境地だ。

「それで、いつまでグレルバレルカに留まる気? 完治したのなら生還者の件もあるし、早く出発しなさいよ。もう私は大丈夫だから」

うーむ、本当に丸くなったのな。

「そう急かすなって。ドクトリアからの支援が来るまでは俺達も手伝う予定だからさ」

「私もまだまだベルを甘やかし足りないしね~」

そう話しながら豊満な胸にベルの顔を招き入れるセラ。なぜかベルは嬉しいような、悲しいような複雑な表情をしている。やはり疲れがまだあるのか。エフィルが考え抜いた食事の効果は確かに出ている筈なんだけどな……

「ハァ、もういいわよ。それで、生還者からは何か有益な情報は聞き出せたの?」

「いーえ、それが全然。あいつが言っていた通り、ベルが話してくれた以外の目ぼしいものはなかったわ」

「それでも使徒達の本拠地が分かったのは大収穫だったけどな」

「でもでも、私やアンジェがその気になれば前情報なしで発見できるんじゃないかしら? いえ、きっとできるわ!」

「セラ姉様。それ、大砂漠の中から埋められた一枚の金貨を探すようなものよ?」

「……できなくもない?」

「時間が掛かるから止めとけな」

諭しはしたものの、冷静に考えてみればセラとアンジェならやりかねない。場合によっては探る以前にセラが豪運を発揮して、砂漠に足を踏み出した第1歩目で見つけてしまう可能性も――― 今となってはベルが教えてくれた事だし、無駄な憶測か。

「 奈落の地(アビスランド) の中心地、そこには無限毒砂みたいに禁断の地とされる大空洞があるわ。悪魔から『邪神の心臓』と呼ばれる奈落の不可侵領域、最果ての場所――― 神話とされるほど遥か昔、神々と邪神が争いの後に邪神が封印されたとされる曰く付きよ。代行者はそこに目を付け、巫女の秘術を使って聖域を作った。覚えてる?」

「そこが使徒の根城、だったな」

「そう。代行者の力のせいで大空洞に入るだけじゃ聖域への入り口は見つからないし、禁断の地だけあって馬鹿みたいに変な魔力が溢れてて、長居すると体に毒よ。しかも大空洞自体が天然の迷宮になってるから、予めそこにあると知ってなきゃ発見するのは困難を極めるでしょうね」

「でも、私とアンジェなら―――」

「セラ、分かったから張り合うな。ベルはお前の身を案じているんだ」

「え! そうだったの!? ベルー!」

「ふぐっ……」

再びセラがベルを抱き締める。ベル、そんな目で俺を見詰めなくっていいさ。何、礼はいらない。今はただ、セラの胸の中で安堵するといい。

―――コンコン。

そんな姉妹が触れ合いの中、部屋の扉からノックをする音が。

「失礼します…… おや? セラ様、やはりここでしたか」

「ビクトールじゃない。どうしたの?」

開いた扉から現れたのはビクトールだった。今日も装甲の黒光りが目立つ。

「それがですね、グスタフ様が宴をすると急に言い出してしまいまして。何でも、『理由はいらない、兎も角セラ様ベル様を祝う会』を開くと……」

いや、そこは理由作れよ。

「あら、懐かしいわね。子供の頃は週3、4回はお祝いしてもらっていたものね」

「……セラ姉様も? 月の館でもそのくらいやってたわよ?」

「ベルも? 奇遇ね、流石姉妹!」

いや、待てよ。太陽の館と月の館の両方で週にその頻度って、ほぼ毎日やってる計算じゃないか。義父さん、どんだけ毎日娘を祝ってんだよ。

「ま、まあそういう事になりまして、私とエフィルさんで宴の料理を拵えているところです。時間になりましたら迎えをよこしますので、まず一報にと参った次第」

「ビクトール、苦労してるんだな…… よし、俺も何か手伝おうか?」

「クフフ、それでは飾りつけ用の『理由はいらない、兎も角セラ様ベル様を祝う会』と書いた横断幕をベガルゼルドと共に作って頂けますか?」

「それも毎回作ってんのな。了解した。それじゃ2人とも、また後でな」

「うん。ちゃんと戦いたい衝動を我慢するのよ、ケルヴィン」

「俺だってそこまで見境なくねぇよ……」

胸の内のまだバトってないリストに、ベガルゼルドとラインハルトの名を刻んでいるだけだ。

「ねえ、セラ姉様。セバスとビクトール、交換しない?」

「やだ」

「ッチ」

おいおい、笑顔で拒否されたからって舌打ちはいけません。だがな、安心しろ。戦力的には2人とも五分五分だぞ? え、違う?